外国人労働者の受入れ拡大を目的とする入管法の改正や働き方改革法の成立を受けた「外国人雇用管理指針」の改正案の概要(外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針の一部を改正する告示(案)【概要】)が、パブリックコメントに付されています。
外国人労働者を使用するにあたって、日本人の労働者と差別してはならない点や、働き方改革法の政省令・指針などで定められた事項を同様に適用する点のほか、雇入れやストレスチェックの説明などの際に母国語や平易な日本語を用いるべき点、在留資格ごとに設けられた要件を遵守する点などが盛り込まれています。
公表された改正の内容は以下の通りです。
事業主が講ずべき措置等として次の事項を規定するほか、所要の改正を行う。
(1) 外国人労働者の雇用管理改善に関する基本的考え方
・外国人が我が国で企業や地域社会の一員として活躍するためには、魅力ある職場環境の整備や適切な支援等が重要となること。
(2) 募集及び採用の適正化
・募集を行う際の労働条件の明示について、書面及び電子メールに加え、本人が希望する場合にはファクシミリ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス等によることも可能であること。
・職業紹介事業者等からあっせんを受ける際は、外国人労働者から違約金、保証金の徴収等を行う者の介在がないようにすること。
・募集に応じた外国人と労働契約を締結しようとする際に労働条件を変更等する場合、適切な方法により明示を行うこと。その際、母国語又は平易な日本語を用いる等、外国人労働者が変更内容等を理解することができる方法により明示するよう努めること。
(3) 適正な労働条件の確保
○労働契約を締結する際の労働条件の明示
・書面に加え、本人が希望する場合にはファクシミリ、電子メール、ソーシャル・ネットワーキング・サービス等によることも可能であること。
○賃金の支払い
・労働者に対し、最低賃金額以上の賃金を支払うことはもとより、基本給、割増賃金等の賃金について、法令で別段の定めがある場合等を除き、全額を支払わなければならないこと。
・食費、居住費等を控除する場合には、不当な額にならないようにすること。
・労働契約に付随して貯蓄の契約をさせること等をしてはならないこと。労働契約に付随することなく、労働者の希望する貯蓄金をその委託を受けて管理する場合には、労使協定の締結及び届出等が必要であることに留意すること。
○労働時間等
・時間外・休日労働の上限規制を遵守すること。
・時間外・休日労働の削減に努めること。
・労働時間の状況を客観的な方法その他の適切な方法により把握すること。
・時季を定めることにより年次有給休暇を与えるとともに、年次有給休暇管理簿を調製すること。
○関係法令等の周知
・就業規則、労使協定等について周知すること。
○寄宿舎
・事業の附属寄宿舎に外国人労働者を寄宿させる際は、労働基準法等に定めるところにより労働者の健康等の保持に必要な措置を講じること。
○雇用形態又は就業形態に関わらない公正な待遇の確保 (※)
・短時間・有期雇用労働者又は派遣労働者である外国人労働者の待遇について、通常の労働者との間で不合理と認められる待遇差を設けてはならないこと。
・職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者又は派遣労働者である外国人労働者の待遇について、差別的取扱いをしてはならないこと。
・上記にかかわらず、派遣労働者である外国人労働者の待遇について労使協定により一定の事項を定めたときは、当該労使協定による待遇を確保すること。
・短時間・有期雇用労働者又は派遣労働者である外国人労働者から求めがあった場合には、待遇の相違の内容や理由等について説明すること。その際、母国語又は平易な日本語を用いる等、外国人労働者が理解できる方法により説明するよう努めること。
(4) 安全衛生の確保
・法定の安全衛生教育を実施するに当たっては、母国語又は平易な日本語を用いる、視聴覚教材を用いる等、当該外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うこと。
・法定のストレスチェックや長時間労働者に対する面接指導を実施すること。その際、母国語又は平易な日本語を用いる等、外国人労働者が理解できる方法により、目的・内容等について説明するよう努めること。
(5) 社会保険及び労働保険の適用
・外国人労働者が離職した際、遅滞なく被保険者証を回収するとともに、国民健康保険及び国民年金の加入手続が必要になる旨を教示するよう努めること。
・健康保険及び厚生年金保険が適用にならない事業所においては、国民健康保険・国民年金への加入手続の説明や窓口の案内・同行等の必要な支援を行うよう努めること。
・労働保険の適用が任意の事業所においては、外国人労働者を含む労働者の希望等に応じ、労働保険の加入の申請を行うこと。
・労災保険給付の請求等について、家族等からの相談についても応じるように努めること。
・一定の要件に該当する場合、障害年金や傷病手当金が支給され得ることについて教示するよう努めること。
・脱退一時金の請求を検討する際、将来的な年金受給の可能性等に留意して検討すべきであることを教示するよう努めること。
(6) 適切な人事管理等
○人事管理・生活支援
・社内規程その他文書の多言語化等、職場における円滑なコミュニケーションの前提となる環境の整備に努めること。
・評価・賃金決定、配置など人事管理に関する運用の公正性の確保等、多様な人材が適切な待遇の下で能力発揮しやすい環境の整備に努めること。
・外国人労働者が地域社会での行事や活動に参加する機会を設けるよう努めること。
・居住地周辺の行政・医療・金融機関等に関する情報提供や同行等、必要な生活支援に努めること。
○苦情・相談体制の整備
・外国人労働者のための苦情・相談体制を整備し、必要に応じて行政機関の相談窓口を教示するよう努めること。
○帰国等の援助
・外国人労働者が病気等やむを得ない理由により帰国費用を支弁できない場合には、費用を負担するよう努めること。
・外国人労働者が一時帰国を希望する場合には、休暇の取得への配慮等必要な援助を行うよう努めること。
○請負を行う事業主に関する事項
・外国人労働者の希望により労働契約の期間をできる限り長期のものにする等、安定的な雇用の確保に努めること。
・注文主である他の事業主の事業所内で就労させる場合、注文主が請負労働者の使用者であると誤解を招くことがないよう、業務の処理の進行管理を行うこと。また、就業事業所内で適切に雇用管理を行うこと。
○共に就労する上で必要な配慮
・外国人労働者を受け入れるに当たっては、日本人労働者と外国人労働者が文化、慣習等の多様性を理解しつつ共に就労できるよう努めること。
(7) 解雇・雇止めの予防等
・労働契約法に定めのある事項に留意し、解雇や雇止めを安易に行わないようにすること。
・妊娠、出産等を理由とした解雇等を行ってはならないこと。
(8) 在留資格に応じた措置
・特定技能の在留資格を有する者について、出入国管理及び難民認定法に規定する雇用契約の基準や履行すべき義務等に留意すること。
・留学生について、在留資格の変更の審査に要する期間を考慮して採用活動を行うよう留意するとともに、インターンシップ等の実施に当たっては、本来の趣旨を損なわないよう留意すること。また、アルバイト等で雇用する場合には、資格外活動許可が必要であることやその活動が制限されていることに留意すること。
・その他在留資格ごとに設けられた要件を遵守すること。
適用は、2019年4月1日としています(上記(3)のうち※の「雇用形態又は就業形態に関わらない公正な待遇の確保について」は2020年4月1日とし、中小事業主については、2021年3月31日までの間、(3)のうち短時間・有期雇用労働者の公正な待遇の確保に係る規定は適用しない)。
外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針の一部を改正する告示(案)【概要】(PDF)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000182281
パブリックコメント:外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針の一部を改正する告示案に対する意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495180321&Mode=0
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