感染症BCP・新型コロナ

どうすれば?コロナ対策と経済の両立

新型コロナウイルス感染者数が全国で過去最多を更新し続ける中、GoToキャンペーンの見直しも検討されてはいますが、北海道への観光客は依然として多く、道民としては不安しかありません。
しかし春からずっと振り回され続けている観光業の不安は一層深刻です。
経済の悪化で失われる命と、コロナで失われる命とが、天秤にかけられている状況に、判断を下せる人などいないでしょう。

リバウンド

人間の我慢というのは案外持続しないものなのですね、春夏は外出や会食を控え引きこもっていた人々も、秋の深まりと共に「人に会いたい欲」が高まり、活動的になりました。

活動そのものにリスクがあるというよりは、アクティブになるに至った意識の変容があり、その意識の変容、すなわち感染リスク不安の低下が、春夏まで万全だった感染防止策を緩めてしまったのではないかと考えます。

では何が不安の低下をもたらしたのでしょうか。

テレビ番組のリモート出演が解除されたことが、要因の一つにはあると思います。
不便ながらもゲストはリモートで出演し、スタジオは最小限の人数で進行するという場面を見ていた頃は、緊張感がありました。
しかし透明パネルを設置しほんの少し距離を取ってはいるけれども、マスクを外して大きな声で多くの出演者が集まって収録している様子を見ているうちに、「あ、これでいいんだ」という感覚が視聴者に芽生えたのかなと思います。

ドラマを見れば、ノーマスクで三密の世界が広がっていて、その世界を「これからもノーマル」と錯覚してしまいます。

言われている通り、GoToキャンペーンの開始も、感染を拡大させたと考えられます。
「StayHome」だったのが、急に「GoTo」と言われたら、競馬のゲートがパンッと開いた競走馬状態になるのも無理はありません。
ゲートの中でウズウズしていたサラブレッドたちが一斉にスタートを切ります。
私たちは解放されたんだ!ウイルスに勝ったんだ!とまでは行かなくても、そう信じたい願望に後押しされ、苦痛だった感染防止行動を止め、抑制されていた反動でコロナ前よりも活動的になった方が、大勢旅に出たのでしょう。

結果、マスクを外す人、人とのおしゃべりを楽しむ人、イベントで大声を出す人、消毒をやめる人、手を洗わなくなる人などが生まれます。
出張で札幌を訪れるビジネスマンの多くは接待を伴う飲食店に行きたがります。
旅行そのものは危険ではなくても、解放感が危険行動を生んでいる可能性は否定できません。

近頃、会食のお誘いは増えていましたし、ちゃんとしていると思っていた人がマスクをせずに話しかけてきたりして、気の緩みを実感するシーンは確かに秋以降増加しました。

感染者と旅行者と対策に飽きた人たちとが入り乱れる混沌とした冬の日本で、感染防止と経済を両立させるには、どうすればよいのでしょうか。

より詳細かつ積極的なリスクコミュニケーションを

まず第一に、正しい情報をより積極的に国民に開示することが必要です。

「旅行自体は危険ではない」とおっしゃるなら、現在判明している感染者の方々は、行動歴にどのような共通の傾向があるのかを、国民は知りたがっています。

感染経路は不明でも、例えば通勤ラッシュの中で感染したと考えられるケースがあるのか、会食や同僚との昼食などの機会が多いのか、あるいはマスクなしで人と接したことがゼロの感染者がいるのか、感染経路がわかっている人の中に、会話の際はマスクを着用していたのに感染した人がいるのか・・・
接触感染が考えられるのはどのくらいで、どのようなケースで、潔癖症の人も感染しているのか・・・
オーストラリアでは、毎年インフルエンザに感染しやすい人がコロナにも感染しているという分析がありましたが、日本はどうなのか・・・

等々、個人情報はいりませんが、感染経路不明者も含めたより詳細な傾向分析を行い、情報を発信してもらえれば、経済を担う方々も舵を切りやすくなりますし、コロナストレスで体調を崩したりリバウンドで感染危険行動を取ったりする人を減らせるはずです。

行政から出される情報が、春夏からさほど変化がなく、「何か月も前から知ってるよ」「ずっとやってるよ」ということばかり。
しかし「市中にウイルスがいる」なんて表現されたら、外の空気も吸えなくなりますし、経済を一切止めなければならなくなります。

「感染対策を講じることができない場合には外出自粛」と言われても、今までもそうして来たつもりなのに感染が増えているのであれば、私たちが考える「場合」と実際に感染が発生している「場合」とに齟齬があるのではないか。
その間にあるエビデンス情報を、発信することが大切と考えます。

特定の産業だけが「経済」ではない

GoToキャンペーンは、主に観光業を守るためのキャンペーンです。
観光業が倒れれば、飲食、交通、広告、印刷、農業、漁業等々あらゆる業種が共倒れになるため、何としても守らなければなりません。

では、観光業を守るために、医療・福祉を潰しても良いのかと言えば、もちろん違います。

現在、この二者択一が起きているのですが、どこか医療が軽視されているような気がするのです。

どちらを取るべきとは言えませんが、少なくとも、医療は絶対に潰してはなりません。
この一年近くの間、北海道の医療従事者は休むまもなく緊張状態を続けています。
必要な医療を受けられない患者さんも大勢います。
医療は命の砦です。
病床数だけでなく、そこに従事する「人」を見て、対策を考えていただきたいと、国や自治体には望みます。

さらに言えば、困っているのは観光業だけではありません。
行政によるサポートのバランスが悪い気がします。
感染拡大により活動を自粛する企業が増えれば、当然どの業種でも売上は減ります。
特定の産業を守ることばかりに固執せず、それこそ「総合的俯瞰的に」見ていただく必要があります。

経済を回すならもう少し緩やかに

医療従事者の負担を考えるなら、患者数の急増は阻止しなければなりません。
患者数の増加を緩やかにするのが、当初の方針だったはずです。
ならば、経済も緩やかに回していかなければうまくいくはずがありません。
まだウイルスが日本に入ってきてから一年も経っていない段階で、旅行、飲食、買い物、イベントへの外出を促すキャンペーンを打ち出すのは時期尚早です。
キャンペーンがなくても出る人は出る、程度の緩やかな解除で抑えておくべきではないでしょうか。
行け行けとムチを入れるのはゴール直前で。日本はまだ一つ目のコーナーも回り切っていないくらいでしょう。

また、感染対策と経済のギアチェンジは、病床が満床になってからではなく、感染者数の増加傾向が見られる時点で行わなければ手遅れです。
もう少し早く決断すべきと考えます。

バランス

このように、外からは勝手なことばかりを言えますが、政治家も飲食店も医療機関の皆様も、皆それぞれにそれぞれの立場で必死に戦っていらっしゃいます。
こちらかあちらかではなく、0か100かでもなく、無数に存在する企業、家庭、人が作り出す円の中で、どうバランスを取っていくかです。
あちらを立てればこちらから文句が出ますし、こちらを立てればあちらから文句が出る、この繰り返しの中で、何とか綱を渡っていくしかないのだと思います。
私たちは私たちにできることを、淡々と、しかし気持ちも手も抜かず、長く永く続けていきましょう。