エイジフリーな職場をつくる

高年齢者雇用安定法が改正され、年金制度も見直され、70歳現役社会が目指されていますが、実のところは、高齢者と若年者はなかなか相容れず、互いに差別・偏見を持ち距離を置いたり攻撃したりしています。

どうすれば、互いのエイジズムを低減し、幸福な職場を築くことができるのでしょうか。

『「幸福な老い」と世代間関係」〜職場と地域におけるエイジズム調査分析(原田謙著 勁草書房)』を出所とし、考察します。

エイジフリーな職場づくり

裁量度のある仕事・役割の付与

高齢就業者は、サポートを「受ける」側ではなく、サポートを「提供する」側であり続けることが、自尊感情の維持・増大につながり、高齢就業者にとっての職場満足度を高め、抑うつ傾向を低減させると考えられます。

企業や組織にとって重要度の高い仕事を、裁量権とともに、一定の距離を保って(干渉せず、信頼して)任せることです。

高齢就業者は、長年の経験により培われた知識や技能を持ち、若年就業者もまた、情報コミュニケーショ技術(ICT)に長けている他、体力面や俊敏性に優れています。
互いの強みを補完し合い、サポートを提供し合う関係性を深めることで、互いに否定的な認知や態度が緩和されると考えられます。

技術継承の役割

高齢就業者が技術継承の役割を果たすことで、高齢就業者にとっての職場満足度が高まり、ひいては若年就業者の生産性を高めることにつながると考えられます。
しかし、高齢者の世代継承性は、若年者からの感謝や尊敬といった肯定的な反応がなければ、継続的に発展しない、とされています。
技能継承を受ける若年就業者には、高齢者へのネガティブな偏見・差別を持たず、感謝し敬う礼儀やコミュニケーションを促進する施策が必要です。

コミュニケーション

ある程度十分な頻度・期間・密度の濃さでコミュニケーションが行われることで、良好な人間関係が構築されます。
研究者によると、良好な人間関係とは、気持ちよく情報を共有でき、心地よい距離感が保てている状態のことで、以下の7点がポイントです。

  1. 情報交換の頻度がちょうど良い
  2. 情報交換がタイムリーに行われている
  3. 正確な情報交換が行われている
  4. 問題解決に向け会話ができる
  5. 目標が共有されている
  6. お互いの役割を把握している
  7. 互いに敬意を払っている

とりわけ若年就業者と高齢就業者との関係性においては、一定の距離感を持った世代間関係の構築が重要です。

  • 【制度】コミュニケーションを促進・正当化する社会的・制度的支持に基づき、
  • 【適度】一定期間に、ちょうど良い頻度で、タイムリーに、正確な情報交換を行うこと
  • 【敬意】できる限り対等な地位で、互いに関心を持ち、役割や個性を把握し、敬意を払うこと
  • 【行動】共有された目標に基づき、問題解決に向けた会話を保ち、協同活動を展開すること

若年就労者への情報発信・教育

高齢就業者との適切なコミュニケーションの機会が少なく、加齢に関する知識が乏しい若年者ほど、高齢就業者に対する差別・偏見が強いとされています。
また、生活や職場に対する不満から、高齢就業者をスケープゴートにする、という影響も考えられます。
ゆえに、若年就労者を対象とした以下の方策が、エイジズムを低減するために有効です。

  • 加齢に関する正しい知識を提供すること
  • 年金・介護保険等老後の生活保障に関する正確な情報提供

知識・情報の付与方法として、研修や資料配布等だけでなく、「高齢就業者の実際の姿を見せる」ことも大切です。
若年就業者が、十分な処遇のもと、裁量権を持ち、高度な役割を果たし、若年者や同僚から敬われ、生き生きと活躍している高齢就業者の姿を間近で見ながら過ごすことが、一番の情報提供になると考えられます。

人は誰もが年をとります。
社会にエイジズムが存在している以上、誰もが差別の対象になり得ます。
若いときに非自覚的に獲得した、加齢に対するネガティブなステレオタイプは、自らが高齢化した際に自己成就してしまい、肯定的なステレオタイプを持つ人は長寿に、否定的なステレオタイプを持つ人は短命であることが予測されています。

若年就労者に、「年をとるのも悪くない」「あんな風に年を重ねたい」と、安心感を与え、むしろ憧れられるようなロールモデルを、社内で作れたら理想的です。

もちろん、ロールモデルも多様であるべきです。
バリバリギラギラ働き続けるモデルに勇気をもらう若年者もいれば、のんびりマイペースに無理なく働く先輩に慰められる若年者もいます。
多様な高齢者が働き続けられる職場環境を整えることは、若者たちに未来への希望を与えるでしょう。