医師の働き方改革に関する検討会 報告書(平成31年3月28日)より、応召義務と医師の働き方について整理します。
医師の働き方改革に関する検討会 報告書(平成31年3月28日)p.4-5
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04273.html
医師の診療業務の特殊性(働き方改革において考慮を要する医療の特性・医師の特殊性)
医師については、応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要であることが従来から指摘されていた。応召義務は実態として職業倫理・規範として機能し、純粋な法的効果以上に医師個人や医療界にとって大きな意味を持ち、医師の過重労働につながってきた側面も指摘されている。
しかし、応召義務については、医師が国に対して負担する公法上の義務であり、医師個人の民刑事法上の責任や医療機関と医師の労働契約等に法的に直接的な影響を及ぼすものではなく、医療機関としては労働基準法等の関係法令を遵守した上で医師等が適切に業務遂行できるよう必要な体制・環境整備を行う必要があり、違法な診療指示等に勤務医が従わなかったとしても、それは労働関係法令上の問題であって応召義務上の問題は生じないと解される。
こうしたことから、応召義務があるからといって、医師は際限のない長時間労働を求められていると解することは正当ではない。
その上で、改めて、医師が行う診療業務を、働き方の観点からみると、以下の4つの特殊性があると考えられる。
- 公共性(国民の生命を守るものであり、国民の求める日常的なアクセス、質(医療安全を含む)、継続性、利便性等を確保する必要があること。このため、職業倫理が強く働くことに加えて、法においても応召義務が設定されていること。
医師の健康確保が本人の利益という観点からだけではなく、医療安全の観点からも求められること。公的医療保険で運営されていること。) - 不確実性(疾病の発生や症状の変化が予見不可能であること。治療の個別性、治療効果の不確実性があること。)
- 高度の専門性(医師の業務は業務独占とされていること。医師の養成には約 10年以上の長期を要し、需給調整に時間がかかること。)
- 技術革新と水準向上(常に新しい診断・治療法の追求と、その活用・普及(均てん化)の両方が必要であること。このために必要となる知識の習得や手技の向上は医師個人の努力に大きく依存していること。)
こうした特性がある中、勤務環境整備が十分進んでおらず、出産・育児期の女性など時間制約のある医師にとっては就業を継続しにくい働き方となっている。
これらを踏まえると、医師に係る時間外労働規制については、以下の点を考慮する必要がある。
- 医師についても、一般則が求めている水準と同様の労働時間を達成することを目指して労働時間の短縮に取り組むこと
- 医療の公共性・不確実性を考慮し、医療現場が萎縮し必要な医療提供体制が確保できなくなることのないような規制とする必要があること。その場合であっても、医療安全の観点からも、医師が健康状態を維持できることは重要であること。
- 具体的な取組として、1日6時間程度の睡眠を確保できるようにすること。継続的に労働時間のモニタリングを行い、一定以上の長時間労働の医師がいる医療機関に対して、重点的な支援を行うこと。
- 医師の知識の習得や技能の向上のための研鑽を図る時間が労働時間に該当する場合があるが、医師の使命感からくる研鑽の意欲を削がず、医療の質の維持・向上を図ることができるようにすることが重要であること。
- 出産・育児期の女性など時間制約のある医師が働きやすい環境を整える必要があること。
医師の働き方改革に関する検討会 報告書(平成31年3月28日)p.52
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