東芝系SEが過労自殺 開発遅れ長時間労働、労災認定(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP3F6VDWP3DULFA03Q.html
東芝デジタルソリューションズ(東芝グループの中核事業会社の一つ。本社は川崎市)に勤務していたシステムエンジニアの男性社員(当時30歳)が2019年11月に自殺したのは長時間の過重労働が原因だったとして、労災が認められた、とのことです。
<事案の概要>
- 入社5年目だった男性社員が2019年11月16日に自殺。
- 2020年12月17日付で労災認定された。
- 男性は東大大学院を修了後、2015年4月に東芝ソリューション(現東芝デジタルソリューションズ)に入社、2019年6月頃から厚生労働省老健局が発注した介護に関するシステムの開発に従事していた。
- 東芝側が遺族側に示した報告書によると、
- システム開発に遅れが生じたため、2019年10月以降に男性社員に作業が集中し、過重な負担がかかっていた。
- 亡くなる直前の1か月間の時間外労働は103時間56分にのぼった。
- 3、4、6か月前の各月でも過労死ラインの80時間を超えていた。
- 遺族側代理人の弁護士は、東芝側が開示した業務上のメールや関係資料を調べた結果、東芝側に労務管理上の問題があっただけでなく、発注元の厚労省との協議の場などで精神的ストレスを受けていたことがうかがえるとして、厚労省からも話を聞く方針としている。
東芝デジタルソリューションズのコメント 当社として、今回の件について極めて重く受け止めており、改めまして故人のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまに対して誠心誠意対応していく所存です。
当社はこれまでご遺族の労災申請にあたって可能な限りご協力をさせていただき、行政官庁(労働基準監督署)の調査にも真摯(しんし)に対応してまいりました。また、ご遺族対応を継続して行っているところであるため、詳細についてはお答えしかねますが、今回の事態を受け、安全健康に関するトップメッセージを繰り返し発信するとともに、働きすぎ防止、職場内でのコミュニケーション活性化などの施策に加え、社員個人のセルフケア向上施策にも取り組んでおり、社員の心身の健康維持増進に一層努めてまいります。
特定の労働者への業務集中
技術や能力に差がある職場や、社内の情報共有及びコミュニケーションが停滞している職場では、しばしば特定の労働者に業務が集中し、優秀な労働者を潰します。
技術や能力の平準化、業務内容や負担などの情報共有、社内コミュニケーション活性化などの取組が不可欠です。
労災認定について
精神障害の労災認定要件
- 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
- 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
- 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
厚生労働省の労災認定基準(心理的負荷による精神障害の認定基準)によると、長時間労働による精神障害の発病については次の3通りの視点から評価が行われます。
1.「特別な出来事」としての「極度の長時間労働」
発病直前の極めて長い労働時間を評価します。
<「強」になる例>
- 発病直前の1か月におおむね160時間以上の時間外労働を行った場合
- 発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
2.「出来事」としての長時間労働
発病前の1か月から3か月間の長時間労働を出来事として評価します。
<「強」になる例>
- 発病直前の2か月間連続して1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
- 発病直前の3か月間連続して1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合
3.他の出来事と関連した長時間労働
出来事が発生した前や後に恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)があった場合、心理的負荷の強度を修正する要素として評価します。
<「強」になる例>
- 転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合
★1か月に80時間以上の時間外労働を行った場合
業務の困難性や長時間労働の継続期間などを総合評価し判断されます。
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システムエンジニアは長時間労働が常態化しています。
長時間労働に、納期を守らなければならないという心理的プレッシャーと、今回の事案では発注元との協議における精神的ストレスなどが出来事として重なり、心理的負荷が強まります。
労働者個々の業務量や内容、労働時間を見える化し適切に管理すると同時に、精神的ストレスや働き方の要望等について相談できる相談窓口体制を整備すること、メンタルヘルス不調が疑われる労働者への休職命令や面接指導など、適切な対応が求められます。
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