自衛隊元隊員の女性、セクハラ被害を告発。自衛隊でハラスメント被害経験100人以上の声集め

勤務していた自衛隊の部隊でセクハラの被害を受けたとする元隊員の女性が、インターネットで呼びかけたところ、100人以上から自衛隊でハラスメントの被害を受けたことがあるという回答が寄せられたとして、8月31日、被害の調査を求めるため自身が集めた約10万人分の署名の署名とともに、防衛省に再発防止などを要望しました。
これを受けて、防衛省は、自衛隊内でのハラスメントの実態を調べるため特別防衛監察を行うことを決めました。

“自衛隊でハラスメント” 100人以上が回答 元隊員 再発防止を
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220831/k10013796841000.html

自衛隊内でのハラスメントの実態調査で異例の特別防衛監察
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220906/k10013805251000.html

NHKニュースから、以下に経緯を整理します。

  • 要望したのは、五ノ井里奈さん(22)。2020年、陸上自衛隊に入隊、福島県内の駐屯地に配属された。
  • そのおよそ半年後から、職場でのセクハラが始まった。
    • 勤務中に上司が体を触ってくる。
    • 2021年8月、宴会で上司から格闘技の技をかけられ倒されたうえ、何度も下半身を押し当てられた。その場ではほかの2人の隊員からも同じことを繰り返された。
    • 他、日常的なセクハラ、複数の悪質なわいせつ被害
  • 五ノ井さんは、自衛隊内の捜査機関の警務隊に被害届を提出。
  • 男性隊員3人が強制わいせつの疑いで書類送検→2022年5月、不起訴→2022年6月、検察審査会に審査申し立て→2022年9月7日付で、検察審査会が「不起訴不当」の判断
  • 2022年6月、五ノ井さんは退職。
  • 2022年7月、五ノ井さんは、インターネットで、自衛隊でハラスメントの被害を受けたことはないかと呼びかけた。現役の隊員を含む146人から回答があった。
  • 2022年8月31日、五ノ井さんは、この146人以上の回答をもって、防衛省に実態把握と再発防止などを要望した。
  • 2022年9月6日、防衛省は、自衛隊内でのハラスメントの実態を調べるため特別防衛監察を行うことを決定した。

インターネットで寄せられた回答の概要

ハラスメントの種類

  • パワハラ 101件
  • セクハラ 87件
  • モラハラ 38件
  • マタハラ 17件

性別

  • 女性 82人
  • 男性 58人
  • 無回答 6人

所属別

陸上自衛隊が最多

被害後の対応

  • 被害について自衛隊内や外部に相談したという人は115人で、このうち
    • 要望を聞いたり解決に向けて相談にのってくれたとする例 29件
    • 相手に事実確認を行ったとする例 20件
    • ハラスメントと認められたとする例 10件
  • 一方で、
    • ハラスメントの有無について判断されなかったとする例 51件
    • ハラスメントと認められなかったする例 31件
    • 相談したことを理由に降格や配置転換など不利益な取り扱いをされたとする例は12件あった

被害の具体例

▽(20代・女性)
「年上の男性隊員が隣の椅子に座ってきて、太ももを触ってきた。更衣室は物置。トイレは男性と共有」

▽(30代・女性)
「宴会の場で先輩から野球拳に参加しろと言われて服を脱がされ、拒否すると平手でほおをたたかれた」

▽(30代・女性)
「上司に妊娠を報告した時、喫煙しながら長時間指導され、『旦那を呼んで土下座して謝れ』と言われた」

▽(40代・女性)
「男性隊員の前でわざと腕立て伏せをさせ、シャツの胸元をはだけさせるようにしむける。女性隊員のレントゲン写真をみんなでまわして眺める」

▽(40代・男性)
「入隊したばかりのときに上司から性器にマジックで顔を書かれて写真を撮られた」

▽(50代・男性)
「上司から無視されたり勤務から外されたり陰口を言われた」

このほかにも、性的な暴行を受けたと訴える人も少なくとも4人いたということです。

特別防衛監察とは

防衛省・自衛隊の幹部が関わる不祥事が起きたときなど、事実の解明に向けて客観的な調査が必要だと防衛大臣が判断した場合に行われるもので、高等検察庁の元検事長がトップを務める防衛監察本部が、防衛省・自衛隊内のすべての組織に対し独立した立場から、調査を行います。
特別防衛監察が行われるのは、5年前の南スーダンPKOの日報問題以来で極めて異例、とのことです。

夢や期待を胸に入隊してくる若者を、しかも女性は一層貴重なのに、上司たちが自らのハラスメントで失うなんて、愚かなことです。
そして、誇り高き自分たちの職務と職場を、自分たちの手で汚しているのです。

自衛隊はハラスメントが多いと元来言われていましたが、「だからしょうがないよね」「これが普通だよね」で済まされてきた、ごまかされてきたところがあります。
そんな普通は異常です。
忖度のない徹底的な調査と、厳正な処分が求められます。

五ノ井さんの訴えや集められた回答からは、性暴力、性犯罪と言える悪質極まりないわいせつ行為の常態化がうかがえます。
ただし、おそらくほとんどの隊員は高潔で、日々の業務に真剣に取り組まれているはずです。
一部の隊員の行為により、日本全国全ての自衛隊員が同一視されてしまうのが、世の常です。
ハラスメントや不祥事は、自分ひとりの問題ではなく、全国の同僚や同業者たちにも迷惑をかけるものと認識し、一人ひとりが組織の一員として自覚ある行動を続けなければなりません。

なお、「セクハラというより性犯罪」とか、「パワハラではなく暴行罪、傷害罪だ」などという声がよく上がりますが、セクハラには犯罪も、犯罪にはセクハラも含まれますし、パワハラには犯罪も含まれ、犯罪にはパワハラも含まれます。
ハラスメントやいじめと犯罪は大きく重なり合っていますので、ハラスメントか犯罪か、ではなく、ハラスメントでもありいじめでもあり犯罪でもある場合があるということです。