部下がAIで作った文書、どう判断する?どこまで許容する?

部下から提出された報告書や企画書を見て、「これは本人が書いた文章ではない」「ほとんどAIが作ったのではないか」と感じる場面が増えています。しかし、AIを使ったこと自体を問題にすると、せっかくの効率化を阻害します。一方、本人が内容を十分理解しないままAI生成物を提出する状態を放置すれば、誤情報、判断力の低下、育成機会の喪失、責任の曖昧化につながります。問うべきは「AIを何%使ったか」ではありません。本人が内容を理解し、検証し、自分の仕事として説明・修正・責任を負えるか。 AI時代には、成果物の作り方ではなく「仕事の主体」を確認するマネジメントが必要です。

「これ、本当に本人が書いたのだろうか」

生成AIが職場に浸透するにつれ、管理職から聞かれるようになった悩みがあります。

「部下から提出された報告書や企画書が、これまでの本人の文章とは明らかに違う。」

妙に整っている。
抽象的だが、もっともらしい。
普段使わない言葉が並んでいる。
質問すると、書かれている内容を本人が十分説明できない。

「AIを使ったのか」と問いただすべきなのか。
しかし、会社としてAI活用を推進しているのであれば、AIを使ったこと自体を問題にするのも矛盾します。
ここに、AI時代の新しい管理職の難しさがあります。

問題は「AIを使ったこと」ではない

WordやExcel、検索エンジンを使って仕事をすることが問題ではないように、生成AIを使ったことだけを理由に成果物を否定する必要はありません。
問題になるのは、仕事の主体までAIに移ってしまっている場合です。

たとえば、

  • AIが生成した内容の正誤を確認していない
  • 引用・数値・法令・事実関係を検証していない
  • なぜこの結論になったのか本人が説明できない
  • 自社や顧客の事情に合わせて修正していない
  • AIが作った選択肢から何を採用したのか説明できない
  • 上司から質問されても「AIではこうなっています」としか答えられない

このようになると、形式上は本人の成果物でも、実質的には本人が仕事をコントロールできていません。

「AI使用率」を調べても、本質はわからない

そこで企業が陥りやすいのが、
「AIを使った文章かどうか判定する」
「何%AIで作成したか申告させる」
という方向です。

しかし、重要なのはAI使用率ではありません。

たとえば、AIが下書きの80%を作ったとしても、本人が事実確認を行い、自社の事情を加え、論理を組み替え、最終的な判断をしているのであれば、AIを高度に活用した仕事とも考えられます。
反対に、AIが作った文章が20%だけでも、その20%に重要な判断や誤情報が含まれ、本人が理解せず採用していれば問題になります。

見るべきなのは、AIの使用量ではなく、人が担った役割です。

管理職が確認したい4つのポイント

成果物そのものだけで判断するのではなく、必要に応じて次の4点を確認します。

① 理解しているか
「この部分はどういう意味?」と聞いたとき、自分の言葉で説明できるか。

② 検証しているか
数値、出典、事実、法令、固有名詞など、重要事項を一次情報等で確認しているか。

③ 判断しているか
AIが提示した内容をそのまま採用したのではなく、「なぜこれを採用したのか」を説明できるか。

④ 責任を持てるか
誤りを指摘されたとき、「AIがそう回答したから」ではなく、自分の成果物として修正・説明できるか。

この4点を満たしているのであれば、AIをかなり利用していても、仕事の主体は人に残っています。

「自分で全部書きなさい」では解決しない

さらに注意したいのが、部下の成長を理由としてAI利用そのものを制限することです。
確かに、若手社員が最初からAIに文章作成や思考整理を任せ続ければ、考える、構成する、試行錯誤するといった経験が不足する可能性があります。
だからといって、すべてを人力に戻すことが最善とも限りません。

必要なのは、仕事によって線を引くことです。

定型的な要約や文章整形はAIに任せる。
一方、新しい企画を考える、顧客の状況を読み取る、複数の利害を調整する、重要な判断をするなど、本人の能力形成に必要な仕事は、人が主体となって考える。

AI利用ルールには、情報管理や禁止事項だけではなく、このような「人に残す仕事」という視点も必要になります。

管理職も「文章を見る」から「思考を確認する」へ

AI以前は、成果物を見ることで、ある程度その人の思考過程まで推測できました。

これからは、それが難しくなります。

文章がきれいだから理解しているとは限らない。
資料が早く完成したから仕事ができるとも限らない。

だからこそ管理職には、成果物だけを見るのではなく、
「なぜこう考えた?」
「一番重要なポイントは?」
「他の選択肢は?」
「どこを自分で確認した?」
「この会社の場合、何を変える必要がある?」
と問い、本人の判断過程を確認するマネジメントが必要になります。

これは部下を疑うためではありません。
AIによって見えにくくなった「人の仕事」を確認するためです。

AIを使わせるか、使わせないか、ではない

AI時代の企業に必要なのは、全面禁止でも全面自由でもありません。
AIに何を任せ、人に何を残すかを設計することです。

そして成果物について、
理解する、
検証する、
判断する、
説明する、
責任を持つ。

ここまでを、人の仕事として残す。

「これはAIが書いたのか」と疑うことに時間を使うより、「あなたはこの仕事について何を考え、何を判断したのか」を確認する。
AIが当たり前になるほど、この問いが人材育成と組織の仕事の質を守ることになります。

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投稿者

株式会社 ケンズプロ
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ケンズプロは、ハラスメント等心理社会的リスクを管理し、健康的な心理社会的職場環境を実現するための組織ガバナンス設計・実装支援ファームです。