AIで効率化した時間をコア業務の品質向上に使えているか。AIを使う時間だけが増えていないか

AIを導入すれば、定型業務が効率化され、人はより創造的で付加価値の高い仕事に時間を使える――多くの企業が期待した未来です。しかし現場では、プロンプトを何度も書き直す、生成結果を読み続ける、微妙な表現を修正する、さらに別のAIに確認するなど、「AIを使う仕事」そのものが増えていることがあります。問題はAIを使っているかではなく、AIによって人の時間の使い方が本当に良くなったかです。AI活用の目的を「作業の代替」で終わらせず、考える、試す、対話する、現場を見るといった人のコア業務へ時間を戻せているか。AI導入後こそ、仕事の再設計が必要です。

AIを導入したのに、なぜ時間がないのか

生成AIによって、さまざまな仕事が速くなりました。

・文章を作る
・メールを書く
・情報を整理する
・アイデアを出す
・資料の構成を考える
・長い文章を要約する
—以前なら30分かかっていた仕事が、数分でできることもあります。

それならば、本来は時間に余裕が生まれるはずです。

ところが実際には、「AIを使うようになってから、むしろAIに向き合っている時間が増えた」ということがあります。

プロンプトを書き、直し、また生成する

たとえば文章を一つ作る場合でも、

  1. まずAIに指示する。
  2. 思ったものと違うので、プロンプトを書き直す。
  3. もう一度生成する。
  4. 表現が気になるので修正させる。
  5. 長すぎるので短くする。
  6. 別案も出させる。
  7. 事実関係を確認する。
  8. 最後に自分で文章を整える。

気がつけば、「最初から自分で書いた方が早かったのではないか」ということさえあります。

もちろん、AIとの試行錯誤そのものに意味がある仕事もあります。
問題なのは、こうした状態があらゆる仕事で常態化することです。

AIは「仕事を減らす道具」だったはず

企業がAIに期待したのは、単にAIをたくさん使うことではなかったはずです。

定型的な作業を減らす、
情報収集を速くする、
単純な文章作成を任せる。
そして、そこで生まれた時間を、
・考える
・試行錯誤する
・顧客と話す
・現場を見る
・部下と対話する
・新しいものをつくる

—こうした、人が担うべき仕事へ振り向ける。

本来、ここまで実現して初めてAIによる生産性向上といえます。

「AIを使った」が成果になっていないか

AI導入期には、
「どれくらいAIを使っているか」
「どの部署が活用しているか」
「どんなツールを使っているか」
に目が向きがちです。

しかし、AI利用率が高いことと、生産性が高いことは同じではありません。
むしろ注意したいのは、AIを使うこと自体が仕事になってしまうことです。

・AI勉強会に参加する
・新しいツールを試す
・プロンプトを研究する
・生成結果を比較する
・AI関連の情報を追い続ける
—それぞれには意味があります。

ただし、それによって本業で考える時間、顧客と接する時間、現場を見る時間が減っているのであれば、目的と手段が逆転しています。

アプローチ

アプローチ① 「AI利用時間」ではなく「削減できた総工数」を見る

まず、AI活用の評価軸を変えます。
「AIを使っているか」ではなく、AIを使う前と比べて、その仕事全体にかかる時間は減ったか。を見る。

重要なのは、生成時間だけを測らないことです。
例)

従来:

自分で作成 60分

AI導入後:

プロンプト作成 10分
生成 2分
再生成 10分
確認 15分
修正 20分
—合計57分です。

「AIなら2分で作れる」と評価すれば大幅な効率化ですが、実際に人が拘束された時間を見ると、ほとんど変わりません。
前工程から後工程まで含めた総工数で評価する必要があります。

アプローチ② AIを使わない方が速い仕事を見極める

すべての仕事にAIを使う必要はありません。
5分で書けるメールを、AIへの指示と修正に10分かけて作る、
自分が十分理解しているテーマについて、AIに相談し続けて結論を出すのに余計な時間を使う—
—こうした使い方まで「AI活用」として奨励すると、かえって生産性を落とします。

業務を、

  • AIに任せた方がよい仕事
  • AIと人が協働するとよい仕事
  • 人が直接行った方がよい仕事

に分ける。
AIを使わない判断も、AIリテラシーの一つです。

アプローチ③ 「完成度」を上げすぎない

生成AIは、何度でも修正できます。

そのため、
「もう少し良くできる」
「別案も見てみよう」
「もっと適切な表現があるかもしれない」
という終わりのない改善に入りやすくなります。

しかし、社内メールと取締役会資料では、求められる完成度が違います。
すべての仕事をAIで90点、95点へ引き上げる必要はありません。
その仕事に必要な品質水準を決め、そこで止める。
AI時代には、「もっと作れる能力」だけでなく、どこで終えるかを判断する能力も重要になります。

アプローチ④ AIで浮いた時間の「行き先」を決める

AIによって30分短縮できた。
では、その30分を何に使ったのか。

次のAI作業を増やしただけなら、組織として得られるものは限定的です。

たとえば、
・顧客との対話を増やす
・現場へ行く
・部下との1on1に使う
・企画を考える
・専門知識を深める
・試作品をつくる
・業務そのものを改善する
など、人にしかできない仕事へ時間を再配分する。
—ここまでを、AI導入の設計に含めます。

「何をAIに任せるか」と同時に、「AIによって生まれた時間を何に戻すのか」を決めることが重要です。

アプローチ⑤ AI導入前より「コア業務」が増えたか確認する

AI活用の成果を確認するために、非常にシンプルな問いがあります。

「AI導入前より、本業に時間を使えるようになったか」

営業なら、顧客と向き合う時間。
管理職なら、部下との対話や重要な判断をする時間。
専門職なら、専門的な検討や高度な判断をする時間。
企画職なら、考え、試し、構想する時間。
経営者なら、会社の将来を考える時間。

これらが増えていないのであれば、一度AI活用のあり方を見直す必要があります。

「AIを使わない時間」を取り戻す

AIは非常に便利です。

わからないことがあれば聞ける。
考えがまとまらなければ整理してくれる。
文章が書けなければ作ってくれる。

だからこそ、気をつけなければならないことがあります。

自分で考える前にAIを開くことが、習慣になっていないか。

考えがまとまらない時間。
試して失敗する時間。
資料を眺めながら悩む時間。
人と話しながら考えを変える時間。

一見すると非効率ですが、このような時間から生まれるものもあります。
AIで削減すべき「無駄」と、人間の仕事に必要な「余白」を同じものとして扱わないことが重要です。

AI活用の目的は、AIを使うことではない

企業が見るべきなのは、
AI利用率でも、
プロンプト数でも、
生成した文章量でもありません。

AIによって、人の仕事がどう変わったか。

定型業務が減ったのか。
意思決定が速くなったのか。
顧客と向き合う時間が増えたのか。
管理職が部下と話せるようになったのか。
考え、試行錯誤する余白が生まれたのか。
本業の品質は上がったのか。

AIによって生まれた時間を、またAIで埋め尽くさない。
AIで効率化した先に、人が何をするのかまで設計する。
そこまで考えて初めて、AIは単なる新しい業務ではなく、組織の生産性を高める道具になります。

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投稿者

株式会社 ケンズプロ
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ケンズプロは、ハラスメント等心理社会的リスクを管理し、健康的な心理社会的職場環境を実現するための組織ガバナンス設計・実装支援ファームです。