バーンアウトは、個人のストレス耐性の問題ではなく、組織が管理すべき「心理社会的リスク」の代表例です。業務負荷の偏り、役割の曖昧さ、成果偏重の評価、キャリアの不透明さなどが重なることで、優秀な管理職や中堅社員ほど燃え尽きやすくなります。必要なのは相談窓口やメンタルヘルス支援だけではありません。心理社会的リスクを組織全体で評価し、役割設計・業務設計・評価制度・情報共有などの組織ガバナンスを再設計することが、持続可能な人的資本経営につながります。
「優秀な管理職ほど燃え尽きてしまう。」
近年、このような現象を耳にする機会が増えています。
従来、バーンアウトは「本人が頑張りすぎた」「ストレス耐性が低かった」といった個人の問題として語られてきました。
しかし、その見方だけでは本質的な解決には至りません。
近年の研究やISO 45003などの国際基準が示しているのは、バーンアウトは組織が管理すべき「心理社会的リスク(Psychosocial Risk)」の代表例であるという考え方です。
企業が取り組むべきなのは、メンタルヘルス支援だけではなく、バーンアウトを生み出す構造そのものを見直すことです。
バーンアウトは「結果」であって「原因」ではない
バーンアウトは突然起こるものではありません。
その背景には、
- 業務負荷の偏り
- 役割や責任の曖昧さ
- 成果偏重の評価制度
- 裁量や回復機会の不足
- 将来のキャリアが描けない不安
- 周囲からの支援不足
といった、組織の中に存在する心理社会的リスクが積み重なっています。
つまり、バーンアウトは心理社会的リスクが顕在化した「事象シグナル」なのです。
問題は社員ではなく、社員を取り巻く組織環境にあります。
なぜ40代でバーンアウトが増えるのか
近年の調査では、バーンアウトが最も深刻なのは若手ではなく、40代前後の中堅・管理職層であることが指摘されています。
この世代には、
- 管理職としての責任
- 部下育成
- 専門性の維持
- 家庭責任
- キャリア後半への不安
が同時に集中します。
一方で、「考える時間」が最も不足している世代でもあります。
これは本人の能力や意欲ではなく、仕事の設計そのものが生み出しているリスクです。
メンタルヘルス対策だけでは再発する理由
もちろん、
- ストレスチェック
- 相談窓口
- 産業医面談
- EAP
は重要です。
しかし、それらは多くの場合、発生した問題への対応です。
一方で心理社会的リスクマネジメントは、問題が発生する構造を改善することを目的としています。
例えば、「管理職が疲弊している」という事象があった場合、本当に見るべきなのは、
- なぜ役割が集中しているのか
- なぜ業務量が偏るのか
- なぜ情報共有が機能していないのか
- なぜ評価制度が長時間労働を誘発するのか
といった組織構造です。
バーンアウトは組織ガバナンスの課題である
当社では、バーンアウトを心理社会的リスクの一つとして捉えています。
そして、その背景には次のような組織ガバナンス上の課題が潜んでいると考えます。
| バーンアウトにつながる心理社会的リスク | 見直すべき組織ガバナンス |
|---|---|
| 業務負荷の集中 | 役割設計・業務設計 |
| 責任の曖昧さ | 意思決定・権限設計 |
| 成果偏重 | 評価制度 |
| 将来が見えない | 人材育成・キャリア設計 |
| 孤立・相談不足 | 情報共有 |
| 同じ問題の繰り返し | 是正学習・監督保証 |
バーンアウト対策とは、組織ガバナンスを再設計することです。
心理社会的リスクを「見える化」する
バーンアウトは、ある日突然発生するわけではありません。
その前には、
- 長時間労働
- 管理職の疲弊
- 離職率の上昇
- ハラスメントの増加
- 組織内コミュニケーションの停滞
- エンゲージメントの低下
といった複数のシグナルが現れます。
これらを個別に対応するのではなく、「心理社会的リスクが高まっている」という組織全体の警告として捉えることが重要です。
おわりに
バーンアウトは、本人の気力やストレス耐性だけでは説明できません。
長寿化した職業人生に対して、組織の制度やマネジメントが追いついていないことによって生じる、心理社会的リスクの表れです。
企業には、「どうすれば燃え尽きた社員を支援できるか」だけではなく、「燃え尽きを生み出さない組織をどう設計するか」という視点が求められています。
メンタルヘルス対策から一歩進み、心理社会的リスクを起点に組織ガバナンスを見直すことが、これからの人的資本経営における重要なテーマとなるでしょう。
投稿者
- ケンズプロは、ハラスメント等心理社会的リスクを管理し、健康的な心理社会的職場環境を実現するための組織ガバナンス設計・実装支援ファームです。
