採用しても定着しない建設業が見落としがちな構造問題―若手離職の本当の原因は「管理職の疲弊」にある

建設業界では、人材確保が経営上の最重要課題の一つとなっています。
求人広告の改善、採用サイトの刷新、SNS発信の強化など、多くの企業が採用活動に力を入れています。
しかし、それにもかかわらず、「採用してもすぐ辞めてしまう」という悩みは後を絶ちません。
若手離職が続くと、企業は「最近の若者は我慢しない」「建設業への理解が足りない」と考えがちです。
しかし、本当にそうでしょうか。
実は若手離職の背景には、多くの場合、本人の問題ではなく組織の構造問題が存在しています。

若手離職は突然起きない

退職届が提出された時点で問題が発生したわけではありません。
その前には必ず兆候があります。

例えば、

  • 質問しなくなる
  • 会話が減る
  • 提案しなくなる
  • 残業が増える
  • ミスが増える

こうした変化は、本人のやる気の問題ではなく、職場との接続が弱くなっているサインです。

そしてその背景には、さらに別の問題が存在します。

若手離職の背後にある構造

建設業でよく見られるのが、次のような連鎖です。

若手離職

管理職負荷

指導不足

定着率低下

この順番で問題が発生しているケースは少なくありません。

管理職は悪くない

若手が辞めると、「上司の指導が悪かった」という話になりがちです。
しかし現実には、多くの現場監督や管理職は十分に努力しています。

問題は能力ではなく負荷です。

現在の建設業の管理職は、

  • 安全管理
  • 品質管理
  • 工程管理
  • 原価管理
  • 発注者対応
  • 協力会社調整
  • 書類作成

を同時に抱えています。

さらに若手育成も期待されています。

その結果、「教えたくても教える時間がない」状態に陥ります。

指導不足は若手に伝わる

管理職に悪気はありません。

しかし若手から見ると、

  • 放置されている
  • 相談しづらい
  • 期待されていない

ように感じることがあります。

建設業の若手が求めているのは、過度な優しさではありません。

自分が成長できる実感です。
質問できる。
相談できる。
失敗から学べる。
その環境がなければ、他業界へ流出してしまいます。

採用活動だけでは解決しない

多くの企業は、応募者を増やすことに注力します。
もちろん重要です。
しかし、10人採用して5人辞める組織と、5人採用して4人残る組織では、後者の方が強い企業です。
定着率の改善は採用力の改善でもあります。

打開策① 管理職の仕事を減らす

若手育成を進めるためには、まず管理職に余白をつくる必要があります。

例えば、

  • 権限委譲の整理
  • 業務の標準化
  • 情報共有ルールの整備

などです。

管理職が育成に時間を使える状態をつくることが出発点になります。

打開策② 若手育成を仕組みにする

育成を個人任せにしてはいけません。

  • 入社後3か月
  • 6か月
  • 1年

などの節目ごとに、

  • 面談
  • フォロー
  • 成長確認

を行う仕組みを整備することが重要です。

打開策③ 管理職を育成する

現場監督は自然に育つものではありません。
技術力とマネジメント力は別の能力です。

これからの建設業では、

  • 指導力
  • 対話力
  • 調整力
  • 判断力

を備えた管理職育成が不可欠になります。

若手離職は「採用」の問題ではなく「組織」の問題

若手離職が続く企業では、離職者本人に原因を求めることが少なくありません。

しかし実際には、

  • 管理職が疲弊している
  • 指導する余裕がない
  • 情報共有が不足している

という組織側の構造問題が隠れていることがあります。

若手離職は、組織の健康状態を示す重要なシグナルです。
だからこそ必要なのは、退職者を責めることでも、採用広告を増やすことでもありません。
管理職が育成に向き合える環境を整え、人が育ち、定着し、活躍できる組織構造をつくることです。
その取り組みこそが、建設業の持続的な成長につながるのです。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ケンズプロは、ハラスメント等心理社会的リスクを管理し、健康的な心理社会的職場環境を実現するための組織ガバナンス設計・実装支援ファームです。