重要管理のポイント(食品の調理方法にあわせて行うべき事項)
食品を10〜60度の温度帯(危険温度帯)に置いたままにすると、食品に付いた細菌が急増してしまいます。
危険温度帯に置いておく時間を短時間にすることで、有害なレベルまで増殖するのを防ぐことができますので、素早く冷却するなどの対応が大切です。
そこで、調理中の危険温度帯に着目してチェック方法を定めます。
- 調理中の加熱、冷却、保存などの温度帯に着目して、メニューを次の3つのグループに分類しましょう。
- 分類したら、それぞれのチェック方法を決めましょう。
第1グループ:非加熱のもの(冷蔵品を冷たいまま提供)
加熱しない料理では、加熱による有害微生物の殺菌ができません。
そのため、有害な微生物に汚染されていない食材を使用するか、付着した有害な微生物が増殖しないように冷蔵庫(10度以下の低温)で保管しましょう。
野菜や果物など加熱せずに供する食品は、適切に洗浄、殺菌しましょう(殺菌済みのものを除く)。
食品例
刺身、冷奴、サラダ、サラダ、付け合わせのクレソン、パセリ、海苔、薬味のネギ 等
作業工程
工程ごとのリスクを洗い出し、対応計画を立てましょう。
- 原材料
- 納品作業
- 保管
- 仕込み作業
- 調理作業
- 盛り付け作業
- 提供
チェック方法(例)
- 冷蔵庫より取り出したらすぐに提供する
- 冷蔵庫の温度を確認する
- サラダは、野菜を十分に洗浄し、盛り付けて提供する
- サラダをすぐに提供しない場合は冷蔵庫で保管しておき、盛り付ける直前に冷蔵庫から出して盛り付けて提供 等
第2グループ:加熱するもの(冷蔵品を加熱し、熱いまま提供)、(加熱した後、高温保管を含む)
食品の中心部が十分に加熱されたときの火の強さや時間、見た目(形状・色)、中心部の色などを確認しておき、日々の調理の中では、有害な微生物が殺菌できる温度まで十分に加熱できているかどうかの確認を見た目などによって行いましょう。
新しいメニューを追加した場合にも同様の確認を行いましょう。
その都度の記録は必要ありませんが、1日の最後に結果を記録し、また、問題があった場合にはその内容を記録用紙(日誌)に書き留めておきましょう。
鶏肉などの食肉は有害な微生物に汚染されている可能性があるので、十分な加熱を行うようにしましょう(鶏レバーやささみなどの刺身、鶏肉のタタキなどの半生または加熱不足の鶏肉料理によるカンピロバクター食中毒が多発しています)。
また、加熱調理後、盛り付け時など手指や調理器具(皿なども含む)を介して食品を汚染させないように注意しましょう。
メニュー例
ステーキ、焼き魚、焼き鳥、ハンバーグ、てんぷら、唐揚げ、ライス 等
作業工程
工程ごとのリスクを洗い出し、対応計画を立てましょう。
- 原材料
- 納品作業
- 保管
- 仕込み作業
- 調理作業
- 温蔵保管
- 盛り付け作業
- 提供
チェック方法(例)
- 火の強さや時間
- 見た目
- 肉汁の色
- 焼き上がりの触感(弾力)
- 中心温度 等
そのため、中心部まで火を通すことが重要とされています。

出典:厚生労働省リーフレット「お肉の食中毒を避けるにはどうしたらよいの?」
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000340579.pdf
温度計は重要な計測機器です。
必要に応じて、以下の手順を参考に精度の確認(校正)を行いましょう。
- 砕いた氷を用意します。氷水に温度計のセンサーを入れ、静置(約1分)後に表示温度が0℃になることを確認します。
- 次に電気ケトルに水を入れ、沸騰させます。沸騰したら注ぎ口に温度計のセンサーを刺し、沸騰蒸気の温度を測定します。静置(約1分)後に表示温度が 100℃になることを確認します。
(注意)
- やかんは直火の輻射熱の影響を受けるので電気ケトルを使いましょう。
- 施設の海抜高度や気圧によっては、100℃(沸点)にならないことがあります。
生肉や内臓に付着している可能性のある病原菌は、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌、サルモネラ属菌など、多くの食中毒の原因菌があります。
また、これらの菌の一部は少量の菌量で発症するとされており、発症すると症状が重篤となり、死者が出る場合もあります。
もともと食品に付着している可能性のある有害な微生物は、十分加熱して、死滅させましょう。
第3グループ:加熱後冷却し再加熱するもの、または、加熱後冷却するもの
冷却する場合には、危険温度帯(10~60℃)に長く留まらないようにするため、すみやかに冷却する必要があります。
そのためには、小さな容器に食品を小分けしたり、食品の入った鍋のあら熱をとり、ふたをして鍋ごと冷蔵するなどして、冷却ムラを防ぐことが重要です。
メニュー例
カレー、スープ、ソース、たれ、ポテトサラダ 等
作業工程
工程ごとのリスクを洗い出し、対応計画を立てましょう。
- 調理作業
- 放冷冷却作業
- 再加熱作業
- 盛り付け作業
- 提供
チェック方法(例)
- 加熱後速やかに冷却
- 再加熱時の気泡
- 見た目
- 温度 等
(参考)米国FDAでは2時間以内に21度以下に、さらに4時間以内に5度以下に冷却することとされています。
また、国内の給食施設を対象とした「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、より厳しく30分以内に20度以下に、1時間以内に10℃以下に冷却するよう工夫することとされています。
出典:FDA(米国食品医薬品局) Food Code 2017
第3グループの食材がすみやかに冷却された後に混ぜるようにしましょう。
【第3グループと第3グループを混ぜて保管するとき】
最初の加熱が終わってからすみやかに冷却し、混ぜた後でもすみやかに冷却しましょう。
ウェルシュ菌は、広く自然界に分布し、熱に強い芽胞を形成し、通常の加熱調理では死滅しません。
その後の冷却が緩慢になると急速に増殖します。
このため加熱後に保管する際には、直ちに小分けし、短時間で急速冷却する必要があります。
また、再加熱する際は、提供直前によくかき混ぜながら十分な加熱を行いましょう。
その他
- 食品を解凍する場合は、冷蔵庫等で適正に温度管理を行いましょう。
- 鶏の卵を使用して調理する場合は、70℃で 1 分間以上の加熱が必要です(ただし、賞味期限を経過していない生食用の正常卵を使用して、速やかに調理する場合などは除く)。
- 魚介類を生食用に調理する場合は、真水(水道水など飲用に適する水)で十分に洗浄し、製品を汚染するおそれのあるものを除去しましょう。
- 牛の肝臓または豚肉・豚内臓は、生食用として提供してはならない。調理する場合は、中心部の温度を 75度で1分間以上加熱しなければなりません。
- 【異物】金属などの硬質異物は健康被害を及ぼすこととなり、また、その他の異物もクレームの原因となります。原料に含まれる異物の確認も含めて、調理作業中での異物混入を防止しましょう。
- 【アレルゲン】消費者庁が設置した検討会の報告書では、外食などにおける消費者の商品選択に資する重要な情報源として、特定原材料などをメニュー表へ記載するなど、アレルゲン情報を提供するように推奨されています。また、お客様から質問された時に正しく答えられるよう、提供しているメニューの情報をもっておくことも必要です。
- 【アニサキス】アニサキス幼虫がサバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなどの魚介類に寄生していることがあります。また、魚介類の内臓に寄生している幼虫は魚介類の鮮度が落ちると、内臓から筋肉に移動することが知られています。これらの寄生した食品を生で食べた後、激しい腹部等の痛みを伴う食中毒が発生することがあります。提供する際には注意しましょう。
【厚労省】アニサキスによる食中毒を予防しましょう
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html
(出典)厚生労働省による手引書「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」平成31年2月改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000479903.pdf
(出典)【厚労省】HACCP(ハサップ)の考え方を取り入れた食品衛生管理の手引き[飲食店編]
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000158724.pdf