ハラスメント行為者への個別指導・再発防止研修|企業担当者のためのQ&A

ハラスメントが発生した後、行為者への個別指導や再発防止研修は必要なのか。処分だけでは不十分なのか。本人が反省していない場合はどうするのか。経営者・役員・管理職・教授などへの指導は誰が行うべきか――。ハラスメントの再発防止では、行為者本人の判断基準・認識・行動への働きかけと、問題を生み出した組織構造の改善を分けて考える必要があります。本稿では、行為者への個別指導、第三者による指導、ロジカルアプローチ、心理的アプローチとの違いなど、企業の人事・コンプライアンス担当者から寄せられる実務上の疑問をQ&A形式で整理します。

結論を先に知りたい方へ

ハラスメント行為者への対応では、処分や注意だけで終わらせず、「次に同じ状況が起きたとき、異なる判断・行動を選択できる状態」をつくることが再発防止のポイントです。

1.処分と再発防止は別に考える
処分は発生した行為に対する措置です。再発防止では、本人が問題となった理由を理解し、次回の判断と行動を変えられるかが重要になります。

2.個別指導では「反省」だけを目的にしない
本人に反省を求めるだけではなく、問題となった行動の背景にある認識や判断基準を確認し、現在の法令、社会規範、企業ルール、役職責任に合わせて更新することが重要です。

3.経営者・役員・管理職などには、ロジカルなアプローチが有効な場合がある
人格や感情の問題として扱うのではなく、「目的・事実・権限・責任・判断・結果」に分解して検討します。特に経験や専門性、裁量の大きい人には、意思決定のレビューとして扱うことで受け入れられやすくなる場合があります。

4.第三者・専門家による個別指導には、社内指導とは異なる利点がある
評価・処分を行う会社と、再発防止のための学習を支援する主体を一定程度分けることで、本人との対話を成立させやすくなります。第三者の役割は「会社の代わりに叱ること」ではなく、問題となった判断を客観的に整理し、次の行動へ変換することです。

5.行為者への個別指導と、組織構造の改善は両方必要
本人の判断基準を変えても、過大な業務負荷、曖昧な権限、成果偏重の評価などの背景要因が残れば、問題が再発する可能性があります。一方、組織だけを改善しても本人の判断基準が変わらなければ十分ではありません。再発防止は「個人」と「組織」の両面から設計することが重要です。


Q&A

Q. ハラスメント行為者への研修は必要ですか?

処分や注意だけでは、本人が「なぜ問題だったのか」「次にどう判断すべきか」を理解できない場合があります。再発防止のためには、必要に応じて行為者本人の判断基準・認識・行動を見直す機会を設けることが重要です。

特に、「指導のつもりだった」「悪気はなかった」「これまでは問題にならなかった」と本人が認識している場合には、現在の法令、社会規範、企業のルール、役職責任などと照らし合わせ、判断基準を更新する必要があります。

Q. ハラスメント行為者を処分すれば、再発防止として十分ですか?

処分と再発防止は目的が異なります。処分は発生した行為に対する組織上の措置ですが、再発防止では「次に同じ状況が起きたとき、本人が違う判断・行動を選択できるか」が重要になります。

処分を受けても本人の判断基準が変わっていなければ、別の状況で同様の問題が起きる可能性があります。そのため、必要に応じて処分と再発防止教育を組み合わせることが重要です。

Q. ハラスメント加害者研修と行為者研修は同じものですか?

一般には「加害者研修」「行為者研修」「再発防止研修」など、さまざまな名称が使われています。

企業実務では、事実認定や法的評価との関係にも配慮し、「行為者への個別指導」「行為者向け再発防止研修」などの表現を用いることがあります。名称以上に重要なのは、責任追及だけで終わらせず、再発防止につながる具体的な判断・行動の変化を設計することです。

Q. ハラスメント行為者への個別指導では何をするのですか?

一般的なハラスメント知識を教えるだけではなく、実際に問題となった場面について、本人がどのような認識と判断基準に基づいて行動したのかを整理します。

そのうえで、役職・権限・責任、業務上の必要性、現在の社会規範、企業として許容できる行動範囲などと照合し、「次に同じ状況が起きたとき、どう判断し、どう行動するか」まで具体化します。

Q. ハラスメント行為者が反省していなくても、個別指導には意味がありますか?

あります。再発防止の目的は、反省という感情を生じさせることだけではなく、次の行動を変えることだからです。

本人が「自分は間違っていない」と考えている場合でも、その判断が組織のルール、役職責任、現在の法令・社会規範とどこで食い違っているのかを論理的に検討することはできます。

「反省してください」ではなく、「この判断を組織として標準化できるか」「同じ目的をより適切な方法で達成できなかったか」と問い直すことで、再発防止の議論を成立させられる場合があります。

Q. 経営者・役員・管理職へのハラスメント再発防止研修では、何が重要ですか?

高い役職にある人ほど、一般論としてのハラスメント教育だけではなく、権限・責任・意思決定という観点から整理することが重要です。

長年成果を上げてきた経営者や管理職には、その人なりの成功体験と判断ロジックがあります。それ自体を否定するのではなく、「現在の組織規模や役職責任に照らして、その判断方法を今後も採用できるか」を検討する方が、建設的な再発防止につながる場合があります。

Q. 教授など高度専門職へのハラスメント個別指導も同じですか?

基本的な考え方は共通しますが、高度専門職では専門性や裁量との関係を丁寧に整理する必要があります。

たとえば大学教員の場合、教育・研究上の裁量と、組織に所属する者として求められる行動規範を切り分けます。専門性そのものを否定するのではなく、「専門的裁量がどこまで認められ、組織としてどこから許容できないのか」を明確にすることが重要です。

Q. ハラスメント行為者への心理的アプローチは必要ですか?

有効なケースはありますが、すべての行為者に同じアプローチが適するとは限りません。

問題の中心が性格や感情ではなく、古い判断基準、権限についての認識、指導方法、現在の社会規範とのずれなどにある場合には、それらを論理的に整理するアプローチが適することがあります。

心理的支援が必要な問題と、職務上の判断基準を更新すべき問題を混同しないことが重要です。

Q. ハラスメント行為者への「ロジカルアプローチ」とは何ですか?

人格や感情を評価するのではなく、問題となった行動を「目的・事実・権限・責任・判断・結果」に分解して検討する方法です。

たとえば、「なぜその指導が必要だったのか」「その目的に対して、その手段は相当だったか」「別の方法はなかったか」「同じ行動を他の管理職にも認められるか」などを検討します。

本人を否定するのではなく、意思決定プロセスをレビューし、次回の判断基準を再構築することを目的とします。

Q. なぜ社内ではなく、第三者・外部専門家による個別指導が有効なのですか?

人事評価や処分を行う会社と、再発防止のための学習を支援する主体を一定程度分けることで、本人が防御的になりにくくなる場合があります。

特に対象者が経営者、役員、上級管理職、教授などの場合、社内の役職関係や人間関係が指導を難しくすることがあります。

第三者が、会社の代わりに叱るのではなく、事実・役割・責任・リスクを中立的に整理することで、再発防止のための対話を成立させやすくなります。

Q. ハラスメントの再発防止は、行為者への研修だけで十分ですか?

十分とは限りません。ハラスメントの背景に、過大な業務負荷、曖昧な権限、成果偏重の評価、管理職への支援不足などの構造的要因が存在する場合があるからです。

行為者本人には判断基準と行動のアップデートを行い、組織には問題を生み出した構造の改善を行う。

「個人への介入」と「組織への介入」を組み合わせることが、実効的な再発防止につながります。

Q. ハラスメント行為者への個別指導は、何回程度必要ですか?

事案の内容、本人の認識、役職、再発リスクなどによって異なります。

重要なのは回数そのものではなく、①問題となった判断構造の整理、②現在求められる判断基準の理解、③具体的な代替行動の設計、④理解・定着の確認まで行えるかどうかです。

軽微な事案では短期間で整理できる場合もありますが、経営者・役員・上級管理職など裁量の大きい立場や、認識の乖離が大きいケースでは、複数回に分けて実施することが適する場合があります。

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株式会社 ケンズプロ
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