
ハラスメントは「構造」で起きる
ハラスメントはしばしば「問題のある個人」の行為として語られます。しかし実務の現場では、行為者が変わっても同じ部署で摩擦が続く、組織文化が変わらない、似た問題が繰り返されるといった現象が見られます。これは偶然ではありません。組織の意思決定環境そのものに、判断が歪みやすい構造条件が存在しているためです。本稿では、ハラスメントを個人の資質や感情の問題としてではなく、組織統治の設計問題として捉える視点を提示します。組織問題を構造として整理するフレームワーク 7×7 Governance Architecture を用い、ハラスメントがどのように組織構造から生まれるのかを整理します。
ハラスメントは「人の問題」として語られがちである
ハラスメント対策の多くは、次のような前提で設計されています。
問題のある行為者がいる
↓
教育する
↓
行動を改善させる
この考え方自体は間違いではありません。
しかし実務の現場では、次のような現象が少なくありません。
- 同じ部署でハラスメントが繰り返される
- 行為者が変わっても摩擦が続く
- 組織の空気が改善しない
このような場合、問題は個人ではなく組織構造に存在している可能性があります。
組織問題は構造条件のもとで発生する
組織では、特定の条件が重なると判断が歪みやすくなります。
例えば次のような状態です。
- 情報が上がらない
- 異論が出ない
- 役割が曖昧
- 評価が数字偏重
- 業務が過負荷
これらは単独でも問題を生みますが、複数が重なると組織の意思決定環境は急速に劣化します。
このような環境では、合理的な人でも判断を誤る可能性が高まります。
つまり、ハラスメントは必ずしも「悪意」から生まれるとは限らないのです。
構造歪みが判断歪みを生む
組織の構造が歪むと、次のような現象が起きます。
- 問題が共有されない
- 異論が消える
- 判断が修正されない
この状態では、組織の判断環境が歪みます。
判断歪みが続くと、現場では次のような摩擦が生まれます。
- 強い叱責
- 威圧的指導
- 排除
- 沈黙
これが外部から見ると、ハラスメントとして認識されます。
この流れを構造として整理すると、次のようになります。
構造歪み
↓
判断歪み
↓
組織摩擦
↓
ハラスメント
組織ガバナンス・アーキテクチャという視点
当社では、組織問題を次のフレームで分析しています。
7×7 Governance Architecture
このフレームでは、組織問題を
構造条件
×
統治レバー
の掛け合わせで整理します。
構造条件とは、組織の判断環境を歪める要因です。
例えば
- 情報歪み
- 異論消失
- 権限責任の曖昧
- 評価目標偏重
- 業務過負荷
- 組織摩擦
- 規範劣化
などが挙げられます。
一方、統治レバーは組織を設計する要素です。
- 役割設計
- 意思決定設計
- 情報設計
- 評価設計
- 人材設計
- 保証設計
- 学習設計
この二つの軸を掛け合わせることで、組織の判断構造を体系的に分析します。
ハラスメントは組織摩擦として現れる
ハラスメントは多くの場合、組織摩擦として現れます。
例えば
- 指導が威圧的になる
- 会話が減る
- 部門間の不信が強まる
- 心理的安全性が低下する
こうした状態は、突然発生するわけではありません。
多くの場合、その前段階には
- 関係性の歪み
- 役割の曖昧
- 情報の停滞
といった摩擦が存在しています。
この状態を放置すると、組織摩擦は事案化へと進みます。
ハラスメント対策の本質
多くの企業では、ハラスメント対策として次の施策が行われています。
研修
規程整備
相談窓口
処分
これらは重要な取り組みです。
しかし再発防止の観点では、これだけでは十分とは言えません。
なぜなら、構造が変わらなければ、問題は形を変えて繰り返されるからです。
組織設計としてのハラスメント対策
ハラスメントを本質的に減らすためには、次の視点が必要です。
行為を見る、のではなく、構造を見る
組織の意思決定環境を整え、摩擦を減らすこと。
それが結果として、ハラスメントを減らします。
つまりハラスメント対策とは、単なるコンプライアンス施策ではなく、組織ガバナンスの設計問題なのです。
投稿者
- ケンズプロは、ハラスメント等心理社会的リスクを管理し、健康的な心理社会的職場環境を実現するための組織ガバナンス設計・実装支援ファームです。
