CASE|創業社長の続投を予定している企業
例えば、以下のようなケース。
- ある企業で、大手企業の傘下に入ることが計画されていた。
- 大手企業の下に入った後も、事業を熟知する創業社長が代表者として続投することが想定されていた。
- 一方、社内では以前から、代表者による強い叱責や感情的な言動について複数の従業員から指摘があった。
これは、M&Aを考える企業にとっては、企業価値や取引そのものに影響し得るガバナンスリスクです。
M&Aの前・途中・後でリスクが変わる
① これから買い手を探す場合――売却の難航・企業価値への影響
問題が未整理のままであれば、買い手候補によるDDで、ハラスメント、離職、内部通報、労務紛争、キーパーソン依存などのリスクとして認識される可能性があります。
その結果、買い手候補が限定される、追加調査や是正を求められる、経営者の続投条件が厳しくなるなど、売却プロセスそのものが難航する要因となり得ます。
② 買収交渉中の場合――条件変更や白紙化のリスク
基本合意等に進んでいても、DDによって重大な人的・ガバナンス上の問題が判明すれば、買収条件や経営体制の見直しが必要になることがあります。
特に、「以前から複数の指摘があったにもかかわらず、会社として十分な確認・是正をしていない」という状態は、問題行動そのものに加えて、会社のリスク管理能力への懸念につながります。
状況によっては、価格・契約条件の変更、代表者続投の再検討、さらには取引自体が成立しないリスクも考える必要があります。
③ 買収後の場合――リスクは買い手側にも波及する
より注意が必要なのは買収後です。
問題が再発し、内部通報、従業員の離職、訴訟、SNS・報道等へ発展すれば、「買収前から兆候があったのではないか」「親会社は把握していたのか」「なぜ続投させたのか」「どのような是正・監督を行ったのか」が問われる可能性があります。
買い手が上場企業であれば、事案の規模や事業への影響によっては、レピュテーション、採用、顧客・取引先との関係、売上、さらには株式市場からの評価にも波及する可能性があります。
また、「ビジネスと人権」の考え方が広がる現在、問題は自社内だけで完結するとは限りません。
取引先が人権DDを強化している場合、是正状況の確認や改善要求を受け、重大な問題が改善されない場合には、取引関係の見直しにつながることも考えられます。
つまり、小さな会社の一人の経営者のマネジメント問題が、M&Aによって大手企業グループ全体のガバナンス・人権リスクへ接続する可能性があるということです。
対策|売却前に「問題をなくす」のではなく「管理できる状態」にする
このようなケースに当社が介入する場合は、事実関係と問題行動を整理したうえで、代表者に対する個別是正プログラムを実施します。
単なるハラスメント研修ではなく、経営者として求められる行動基準、権限行使、部下への指示・フィードバック、感情的反応が組織に与える影響を個別に検討します。
併せて、問題を代表者個人だけに帰属させず、管理職から経営への報告経路、相談・内部通報体制、再発時の対応など、組織側のガバナンスも整理します。
重要なのは、「問題がありません」と見せることではなく、「問題を把握し、是正し、今後も管理できる状態」に磨き上げることです。
誰がこの問題に気づき、是正を始めるのか
このような問題について、当社は、必ずしも対象会社自身から相談を受けるとは限りません。
売却を進める売り手側から、「この状態のまま買い手に説明できるのか」と相談を受けることもあれば、買い手側がDDや経営者面談を通じてリスクを認識し、買収・続投の条件として改善を求めることもあります。
また、案件に関与しているファンドマネジャー、M&Aアドバイザーその他の専門家から、「経営者を交代させるほどではないが、このまま承継することも難しい」と相談を受け、第三者として個別是正や組織改善に入るケースもあります。
重要なのは、単に「ハラスメントがあったか」を確認することではありません。
この経営者を続投させた場合、どのようなリスクが残るのか、
そのリスクをどこまで是正し、どのような統治構造を置けば、買収後も管理可能になるのか–
–M&Aにおける人的リスクの磨き上げでは、そこまでを設計する必要があります。
成果|経営者を残しながら、説明できる会社へ
あるケースでは、代表者本人が問題となった行動と経営上のリスクを具体的に認識し、今後の行動基準を明文化しました。
さらに、組織側の改善事項も整理することで、買い手側に対して、問題の認識、実施した是正措置、今後の管理方法を説明できる状態を整えました。
M&Aでは、「問題のある経営者を排除する」か、「事業上必要だから問題を抱えたまま残す」かの二択である必要はありません。
経営者の経験、顧客関係、技術、ノウハウなどの知的資産を残しながら、個別是正と組織ガバナンスによって人的リスクを低減する。
これも、M&A・事業承継における「磨き上げ」の一つです。
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- ケンズプロは、ハラスメント等心理社会的リスクを管理し、健康的な心理社会的職場環境を実現するための組織ガバナンス設計・実装支援ファームです。
