亡くなるまで27年間にわたり合衆国最高裁判所陪席判事を務め、性差別の撤廃実現を目指し闘い続けてきた女性、ルース・ベイダー・ギンズバーグの物語。
(以下、映画のあらすじです。)
女性が法科に入学を許されて6年目となる1956年、ハーバード大学ロースクールに進学したルースは、当時は極めて珍しい存在だった女子学生の歓迎会で、「男性の席を奪ってまで入学した理由を話してくれ」と命じられ、女子学生を笑い者にする学部長の姿勢に失望します。
その後、夫の就職の都合でコロンビア大学に編入、首席で卒業し両大学の法律誌に執筆するほどの優秀者だったにも関わらず、なかなか就職できません。
理由は、「女性だから」です。
秘書の面接と間違われたり、女性は学校のバザーで忙しいとか、社交クラブに入れないからダメとか、女は感情的すぎるとか、首席の女は男勝りで冷酷だから仲間になれないなどと言われ・・・。
結局、大学で教壇に立つことになります。
有形無形の性差別に涙したりモヤモヤしたりの日々・・・
そんな中、社会を変革するチャンスになるかもしれない裁判と出会い、弁護士として、勝訴に向けて奮闘します。
当時の米国では、180弱もの法律が男女を差別していました。
法による性差別が度々争われても、裁判所もまた、男女差別を合法としてきました。
ムラー判決は、「歴史的に女は男に依存してきた。女子共は配慮が必要で法律上の差別は正当」とし、ブラッドウェル判決は、「良き妻良き母になるのが女の使命」としたそうです。
アイダホ州では、離婚した夫妻が家の権利を争った裁判で、「男性の方が数字に強い」という理由で夫が勝利しました。
法律を作っているのは男性です。
法律を作る男性たちは忘れてしまっているのです、女性のこと、特に働く女性のことや、介護する男性の存在、看護師や教師になりたい男性のことなどを。
男性たちの頭の中はこうです。
「女性の権利を認めれば、子どもが帰っても家に誰もいない。母親が働いているから。
女に男と同じ仕事ができるものか。
男の稼ぎないと家族を養えない。
給料が下がり離婚が増え社会基盤が崩れるだろう。
それはアメリカの家族の危機だ。」
ルースは考えます。
すべての人は平等で、性別は生物学的な差であり、能力差はないし、男性も女性も同じ権利を有するべきだと。
ルースが扱ったのは、「税法214項が介護費用控除の申請を女性に限定している」という差別。
原告は男性。男性であることを理由に、介護費用の控除が認められないのは不当だとして訴えていました。
ルースは、これは性差別、しかも男性に対する差別であり、連邦裁判所にこの法律を憲法違反と認めさせれば、、法律上の性差別を認めた先例になると考えます。
絶対に勝てない、という周囲の反対を払い除け、良き理解者である夫と二人三脚で、裁判に挑みます。
その裁判での勝訴が、米社会に岸壁のごとくへばりつき、永遠とも思われるほど長くはびこっていた性差別を打ち破り、平等の扉を開きます。
法律が性差別を認めているから、男性も女性も、それにより機会が奪われている。
女性だけが労働時間を制限されているのには、女性が家庭にいるという前提がある。
それは、女性が家庭にとどまるよう仕向けることに影響している。
こんな法律が、女性を檻に閉じ込めるのだ。
映像の最後は、ルースがサラ・グリムケの言葉を引用する肉声で締めくくられています。
「I ask no favor for my sex.
All I ask of our brethren is that they take their feet off our necks.」
以上、すべて映画の字幕に基づき執筆しています。
感想
ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事は、最も尊敬する人物の一人。
彼女がいなければ、今私が当たり前に行使しているあらゆる権利も、得られていなかったかもしれません。
アメリカの過去として描かれていますが、これは日本の現在、と言っても過言ではありません。
女性を家庭に閉じ込め、社会での活躍を牽制する圧力は、今もなお春の花粉のごとくはびこっています。
女性の活躍を応援していると口では言いながらも、それは「男性を越えない限り」という制限付き。
「男性より前には出るな、上には立つな。」という制限が。
些細な女性蔑視は、無数に存在しています。
些細だから問題にしないのではない、あまりに多くありすぎて問題にしきれないから、聞き流しているだけです。
ギンズバーグ判事がサラ・グリムケから引用した言葉でいうところの、「私たち女性の首を押さえつけている足」の存在を、日々確かに感じるのです。
社会を変革しようとすれば、嘲笑と妨害を受けることになりますが、その勇気を出したいと、決意させてくれる映画です。
ところで、これほど理解のある夫は、地球上では絶滅したのでしょうか。
→視聴:映画『ビリーブ 未来への大逆転』
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