バーンアウト(Burnout)とは、職場における慢性的なストレスが適切に管理されない状態が続くことで生じる、心身の消耗状態を指します。
日本語では「燃え尽き症候群」とも呼ばれます。
かつては医療従事者や福祉職など対人援助職に多い現象と考えられていましたが、現在では管理職、専門職、営業職、IT人材など、あらゆる職種で発生しうる職業上のリスクとして認識されています。
WHOによる定義
2019年、世界保健機関は、国際疾病分類(ICD-11)の中でバーンアウトを次のように定義しました。
職場において適切に管理されなかった慢性的なストレスから生じる症候群
WHOはバーンアウトを疾病そのものではなく、職業上の現象(Occupational Phenomenon)として位置付けています。
バーンアウトの3つの特徴
WHOはバーンアウトの特徴として、以下の3つを挙げています。
1. 極度の疲労感・消耗感
十分に休んでも疲れが取れず、
- 常に疲れている
- 気力が湧かない
- 朝起きることが苦痛
といった状態が続きます。
2. 仕事への心理的距離の拡大
仕事に対する興味や熱意が失われ、
- 無気力になる
- 冷笑的になる
- 周囲に無関心になる
といった状態が見られます。
3. 職務遂行能力の低下
集中力や判断力が低下し、
- ミスの増加
- 生産性の低下
- 創造性の低下
などが生じます。
バーンアウトとうつ病の違い
バーンアウトとうつ病は混同されることがありますが、同じものではありません。
バーンアウト
- 主に仕事に関連して発生
- 職場環境との関連が強い
- 業務から離れると改善する場合がある
うつ病
- 生活全般に影響する
- 職場以外でも症状が現れる
- 医学的な診断対象
ただし、バーンアウトが長期化すると、うつ病などの精神疾患につながる可能性があります。
なぜバーンアウトが起こるのか
近年の研究では、バーンアウトは個人の弱さや気合不足ではなく、職場環境との不適合によって生じることが分かっています。
代表的な要因には以下があります。
過大な業務負荷
- 人手不足
- 長時間労働
- 過剰な責任
裁量権の不足
- 自分で決められない
- 指示だけが増える
- 責任と権限が釣り合わない
不公平感
- 評価への不満
- 処遇格差
- 不透明な人事
支援不足
- 上司のサポート不足
- 孤立
- 情報共有不足
価値観の不一致
- 仕事への誇りを持てない
- 組織の方針に納得できない
- 自分の信念との葛藤
日本におけるバーンアウトの特徴
責任感の強い人ほど陥りやすい
- 真面目
- 誠実
- 他者貢献意識が高い
人ほど、自らを追い込みやすい傾向があります。
管理職層で増加している
近年は、
- 人手不足
- ハラスメントリスク
- 評価業務の複雑化
- 働き方改革対応
などにより、管理職の負荷が増大しています。
その結果、管理職自身のバーンアウトが重要な経営課題となっています。
「我慢」が美徳になりやすい
日本では、
- 弱音を吐かない
- 迷惑をかけない
- 最後までやり抜く
といった価値観が根強く残っています。
そのため、不調が表面化した時には既に深刻な状態になっていることも少なくありません。
ISO45003との関係
ISO45003では、バーンアウトを引き起こす可能性のある心理社会的リスクとして、
- 過大な業務負荷
- 役割の曖昧さ
- 支援不足
- 不公平な評価
- ハラスメント
- 組織変化への不十分な対応
などを挙げています。
つまり、バーンアウトは個人の問題ではなく、職場環境の健全性を示すシグナルとして捉えられています。
バーンアウトを防ぐために
国際的には、次のような対策が有効とされています。
業務負荷の適正化
仕事量や責任を適切に調整する。
役割の明確化
期待される役割や責任を明確にする。
支援体制の整備
上司や同僚からの支援を受けられる環境を整える。
公平な評価
納得感のある評価制度を構築する。
ハラスメント防止
安心して働ける職場環境を維持する。
なぜ企業にとって重要なのか
バーンアウトは個人の健康問題に留まりません。
放置すると、
- 離職
- 休職
- ハラスメント
- 生産性低下
- 顧客満足度低下
- 不正や事故
などにつながる可能性があります。
そのため近年では、人的資本経営や健康経営の観点からも重要な経営課題として認識されています。
まとめ
バーンアウトとは、職場において適切に管理されなかった慢性的なストレスによって生じる心身の消耗状態です。
WHOはこれを職業上の現象として定義しており、近年は個人の問題ではなく、組織や職場環境の問題として捉える考え方が主流となっています。
企業にとってバーンアウトは、従業員の健康だけでなく、離職や生産性低下にも直結する重要な課題であり、心理社会的職場環境の整備や心理社会的リスクの管理が求められています。
