女性へのセクハラ、原因と対策

女性に対するセクハラ

女性から男性へのセクハラ、同性間のセクハラもありますが、ここでは最も発生事案の多い「男性から女性へのセクハラとジェンハラ」について取り上げます。

男女の感じ方の違い

「どのような行為がセクハラに該当するかわからない」「個人の感じ方次第だよね」と言う男性が多い一方で、「うちの男性上司の言動はほとんどがセクハラ」「個人的感情を除いて客観的に見ても明らかなセクハラ行為が横行している」と多くの女性が言う。
同じ行為についても、男性と女性では認識にギャップがあるものです。

対策

共通の認識を持つための周知を徹底しましょう。

  • 就業規則に禁止行為例を掲載する
  • 行為例を解説するルールブックを、絵や口語を用いたわかりやすい内容で作成し、配布する
  • 研修を実施する

女性を対等な働き手として見ない

女性労働者を男性労働者より能力的に劣ると決めつけ、一人前の働き手として認めない文化が日本には残っています。

  • 男性は営業職、管理職に配置し、女性は自動的に事務職、補助職に配置する
  • 重要業務や重要な意思決定が行われる会議には男性のみ参加、宴会や取引先の接待には女性が強制参加
  • 男性は年功序列で昇進するのに、女性は平均以上の能力や成果がなければ昇進できない(女性のみ能力主義)
  • 女性上司の下で働くことを屈辱的に捉える
  • 女性が成功したら「女のくせに」「女を使ったんだ」、女性が失敗したら「だから女はダメなんだ」と言う
  • 「女性にもわかる」「女性でもできる」という言葉が多用される
  • 男性は名字や役職で呼ぶのに、女性は「女の子」や「ちゃん付け」「下の名前」で呼ぶ

対策

評価や配置、研修訓練等あらゆる処遇について、男女差を設けず、客観的な能力主義を徹底しましょう。

  • 主観の反映を最小限にする、客観的指標に基づく評価制度を構築する
  • 評価者研修を実施する
  • 配置、昇進等の決定権を有する者へのジェンダーハラスメント研修を実施する
  • 職務の範囲を明確に定める(正式な職務分担ではなく「なし崩し的に」雑務が女性の担当になっている場合は改善する。雑務に費やした時間分、他業務に時間・能力・体力を費やせないことを考慮する)

女性を性的対象として見る見方が強い

女性を対等な働き手として見ないこととセットで、性的対象として見る、男性の鑑賞物として見る、そこから発展して結婚や出産を女性の役割と決めつけ、「親切のつもりで」「良かれと思って」不適切な助言をしたり評価したり讃えたりすることがあります。
仕事人としての誇りを踏みにじられ、女性にとっては屈辱以外のなにものでもありません。

  • 女性を「職場の華」と呼ぶ、「女性がいると華やかでいいね」「空気が和らぐね」「良い香りがするね」「男ばかりでむさ苦しい」と言う
  • 宴会や取引先の接待には女性を同席させる
  • 既婚女性や子持ちの女性に冷たく又はきつく接する、「女じゃない」と言う
  • 未婚女性に結婚を勧める、お見合いを勧める
  • 容姿や服装、髪型についてコメントしたり噂したりする

対策

  • 就業規則に禁止行為例を掲載する
  • 行為例を解説するルールブックを、絵や口語を用いたわかりやすい内容で作成し、配布する
  • 研修を実施する

職場での優越的地位の濫用

日本企業はいまだに男性が中心で、賃金格差も大きく、意思決定権を持つ地位に上れる女性は少数です。
この構造では、性について女性と異なる感覚を持つ男性が優位にある社会において、女性は不快感を抱いたとしても、拒絶したり注意したりすれば人事上不利益な取扱を受けると恐れ、愛想笑いで受け入れざるを得ません。
それどころか、気に入られようと積極的に性的サービスを提供することもあり得ます。
男性は「自分の性的行為を喜んでいる」「彼女に好かれている」「好意に応えよう」と、さらにエスカレートさせます。
そうして男女間に決定的な主従関係と男性側の支配的恋愛感情が完成し、ますます男性優位の構造が強固になる、という悪循環に陥ります。
事件後、「合意の上だった」「好意を持たれていた」と加害者側が言い訳し、被害者側が「上司から強要されたら拒めなかった」と主張するケースは少なくありません。

対策

  • 数的優位性を解消する(女性の正社員採用・管理職を増やす。少数派が3割を超えると解消されると言われている)
  • 「男性上司1人+女性部下1人」の構成は解消し、3人体制とする(3人目は兼務で良いが、男性上司より上位の者とし適時チェックする体制とする)
  • 利用しやすい相談・通報窓口を整備する

縄張り意識

セクハラが起こる背景ー男性の縄張り意識
男性ばかりで構成されていた社会、職場に女性が入ってくると、「男の世界が壊される」「既得権益を侵される」「面倒なことになる」などと脅威的に捉え、防衛行動を取るようになります。
セクハラやジェンハラをすることで、女性は居心地が悪くなり、参加や活躍を諦めるようになります。

  • あえて女性には事務的業務、補助的業務しかさせない
  • あえて性的冗談を言ったり卑猥な掲示物をしたりして、女性が居心地の悪さを感じ出て行くよう仕向ける
  • あえて男性が長時間残業したり、残業時間の長さを高評価するなどして、育児のため定時で帰る女性に肩身の狭い思いをさせたり、評価を下げたり、男性が時間で成果を稼げるようにする
  • 「強い女は可愛くないよ」「女の子は弱いくらいが丁度良い」と言って女性の台頭を牽制する
  • 男性ばかりで群れて女性を仲間外しにする

対策

  • 「男の職場」ではセクハラが起こりやすいことを念頭に、指針で求められている「職場のハラスメント防止対策」を1から10まで徹底的に講じる
  • 特に、利用しやすく、プライバシーが確実に保護される「相談・通報窓口」を社内にも社外にも整備する

性文化

先述の通り日本社会は長く男性多数・男性優位で成り立って来たため、男性にとって居心地の良い文化・都合の良い文化が、企業や団体単位ではいまだに残っています。
それは、「性におおらかな文化」、ひいては「性的言動に境界線を持たない文化」です。
文化は「当たり前の日常」として根付いてしまっているものであるため、不適切性を疑う余地もなく無秩序にセクハラ的言動が横行し、疑う者がいれば「心が狭い」「口うるさい」「変わっている」と非難し排除しようとするのです。
不快感を抱いても声を上げることはできず、我慢を強いられます。

  • 宴会の二次会にはスナックや接待を伴う飲食店が自動的に使われる
  • 宴会中は酔いの勢いで猥談が飛び交い、身体的なわいせつ行為が横行する
  • 性的冗談に笑顔で返す女性を「ノリが良いね」と褒め、そうではない女性を「心が狭い」「空気が読めない」と非難する
  • わいせつな写真や言葉が掲載された週刊誌が職場に持ち込まれる
  • 挨拶と称して身体に接触する、そして「みんなやっていることだから」と悪びれない
  • 面倒を見る、励ます、慰めるという名目で頭をなでたり背中をさすったりする

対策

  • 就業規則に禁止行為例を掲載する
  • 行為例を解説するルールブックを、絵や口語を用いたわかりやすい内容で作成し、配布する
  • 研修を実施する
  • 猥談や雑誌の持ち込みなどは「軽い気持ちで」なされやすいため、特に目を光らせ、見つけ次第即時に口頭注意する

(以上、参考)セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会編・2001年5月28日初版)から引用し当社にて編集

男性へのセクハラ

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