サクセッションプラン(後継者育成計画)

サクセッションプランとは、企業の組織上重要なポジションの後継者を選定し、育成する計画のことです。
経済産業省『コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン) 別冊』によると、「社長・CEOの後継者計画とは、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を確保することを目的として、そこで中心的な役割を果たす社長・CEOの交代が優れた後継者に対して最適なタイミングでなされることを確保するための取組」としています。

『日本企業のコーポレートガバナンスに関する実態調査報告書』(経済産業省とPwCあらた有限責任監査法人との間で2020年10月27日に締結した「令和2年度産業経済研究委託事業(経済産業政策・第四次産業革命関係調査事業費(日本企業のコーポレートガバナンスに関する実態調査))に関する委託契約書」に基づき作成されたもの)によりますと、
後継者候補の選出ができている企業は33%、
後継者候補の育成計画の策定・実施に取り組んでいる企業は26%と、
多くの企業では後継者計画への取組が進んでいません。

企業の存続と持続的成長に、豊かな人材プールは欠かせません。
ますます人材の流動化が進むであろう時代には、ヒーロー一人の能力に頼り切るのではなく、リーダー一人が去っても新たなリーダーが代わりを担えるよう、後継者育成をシステム化することが重要です。

コーポレートガバナンス・コードによる要請

東京証券取引所『コーポレートガバナンス・コード』補充原則4ー1③は、取締役会に対し、経営理ねね等や経営戦略を踏まえ、CEO等の後継者計画の策定・運用に主体的に関与し、十分な時間と資源をかけて計画的に後継者候補を育成し、適切に監督することを求めています。

東京証券取引所『コーポレートガバナンス・コード』補充原則4ー1③
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。

労働力計画(ワークフォースプラン)の一部として

経営戦略に基づき立てる人員の採用、配置、教育等の計画を、労働力計画(ワークフォースプラン)と言います。
サクセッションプランは、その一部と考えられます。
組織の主要ポジションの昇進・異動・退職等により生じる「空き」に焦点を当てて、人員の採用、配置、教育等の計画を立てることが、サクセッションプランです。

多くの企業では、ワークフォースプランも策定されないまま、場当たり的な人事になっているため、全体的なワークフォースプランを立てた上で、サクセッションプランの策定へと進めていくのが望ましいでしょう。

サクセッションプランニングの流れ

ワークフォースプランニング(労働力計画)から、サクセッションプランニング(後継者計画)へと進めていきます。

(1)ワークフォースプランニング

  1. 理念・ビジョン・パーパスを明確にし、経営戦略を立てる
  2. 経営戦略から人材戦略を立てる
  3. 現在のワークフォース(労働力)・知的資産を分析する
  4. 短・中・長期的なワークフォースの流れを予測し、ワークフォースプランを立てる

(2)サクセッションプランニング

  1. 主要ポジションを定める
  2. 各主要ポジションに求められる資質を定める(→ジョブ・ディスクリプション)
  3. 候補者を選定する
  4. 候補者を育成する計画を立てる
  5. 後継者を指定する

 ワークフォースプランニングの過程で現在の労働力を分析すると、人材戦略(理想)と現状のギャップや、いなくなったら影響が大きい人物・ポジションの存在に気づくでしょう。
それらのギャップや影響をどのように解消するか、対策を練っていきます。
なお、サクセッションプランは、ポジションの後継者計画がメインですが、実際には、属人的な知的資産(その人物の退職等とともに失われる技術や知識、ネットワーク等)の引継ぎも重要です。
そのポジションにそれまで就いていた人物によりもたらされた知的資産は、既にそのポジションの必要不可欠な資質として認知されていて、後任にも当然のように求められる傾向があるためです。
それも含めてのサクセッションプランとすることで、主要人物の退任に伴う企業価値の低下を抑制します。

求められる資質や育成の目標をどのように定めるか

企業の実態、文化、経営理念、経営戦略等により、どのポジションにどのような資質が求められるか、どのように育成すべきかは異なります。
サクセッションプランは多様ですので、教科書に答えが載っているわけではありません。
自社の組織及びポジション、人材を、以下のようなツール、手法で分析し、育成目標を定めます。

  • 現行の評価基準
  • 現職者の観察
  • 現職者へのインタビュー(面談)
  • 現職者の上司・部下へのインタビュー(面談・アンケート等)
  • 現職者の実績・表彰歴
  • 経営戦略に紐づけされた人材戦略
  • 自社が目標とする企業の類似ポジションの観察・分析
  • 一般的な資質基準、等

ジョブ・ディスクリプション―求められる資質を定め、周知する

ここまでで、サクセッションプランの方向性が概ね定まりましたので、文書化し、全社員に周知します。
周知することにより、各社員は自身のキャリアマップを描き、自己開発の目標を定めやすくなります。

  • ポジションの名称・部門名
  • ポジションの責務・役割・目的
  • ポジションに求められる経験、資格、教育
  • ポジションの責務・役割・目的を果たすために求められる資質
  • ポジションの組織図(上下指揮系統)、等

候補者の募集・選定

定めた「求められる資質」等に基づき、候補者を自薦・他薦によりピックアップし、それぞれの分析を行い、絞り込んでいきます。

サクセッションプランの策定と実行

5W1H形式で、短・中・長期的な育成計画を策定します。
実際の育成は、集合研修だけでなく、様々な機会を活用して行っていきます。

  • 実習・インターンシップ
  • バディーシステム
  • 公式・非公式なコーチング
  • クロストレーニング
  • 候補者による現職者へのインタビュー
  • ジョブローテーション、等々多種多様です。

ケンズプロのコンサルティング

企業精神や知的資産を受け継ぐために、理念やビジョン、ミッション、パーパス等を明確化することから、後継者に求める資質、後継者の選定、育成計画の策定と実行まで、ケンズプロが長期的に支援いたします。

  • サクセッションプランの重要性を役員等にご理解いただくためのプレゼンテーション
  • サクセッションプランに関する情報の収集と提供
  • 主要ポジションの特定と求められる資質の設定
  • 資質(コンピテンシー)開発のための育成計画策定
  • 評価基準の設定
  • 候補者の選定・評価
  • 候補者とのコミュニケーション、等