マタニティハラスメント(マタハラ)とは

マタニティハラスメント(マタハラ)とは

職場における妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱いや、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは「マタニティハラスメント(マタハラ)」と通称され、「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されることをいいます。

(出典)厚生労働省パンフレット『職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!』
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000137179.pdf

妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止

<男女雇用機会均等法第9条第3項(抄)>
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、その他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

厚生労働省令で定める「妊娠又は出産に関する事由」とは

  • 妊娠したこと
  • 出産したこと
  • 産前休業を請求し、若しくは産前休業をしたこと又は産後の就業制限の規定により就業できず、若しくは産後休業をしたこと
  • 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を求め、又は当該措置を受けたこと
  • 軽易な業務への転換を請求し、又は軽易な業務に転換したこと
  • 妊娠又は出産に起因する症状(※)により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと
  • 事業場において変形労働時間制がとられる場合において1週間又は1日について法定労働時間を超える時間について労働しないことを請求したこと、時間外若しくは休日について労働しないことを請求したこと、深夜業をしないことを請求したこと又はこれらの労働をしなかったこと
  • 育児時間の請求をし、又は育児時間を取得したこと
  • 坑内業務の就業制限若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、坑内業務に従事しない旨の申出若しくは就業制限の業務に従事しない旨の申出をしたこと又はこれらの業務に従事しなかったこと

※「妊娠又は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻(にんしんおそ)、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠又は出
産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいいます。

妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの例

  • 解雇すること
  • 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  • あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
  • 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
  • 降格させること
  • 就業環境を害すること
  • 不利益な自宅待機を命ずること
  • 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
  • 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
  • 不利益な配置の変更を行うこと
  • 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと

育児休業の申出・取得等を理由とする不利益取扱いの禁止

<育児・介護休業法第10条>
事業主は、労働者が育児休業の申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
※育児休業の他、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間
の短縮等の措置について申出をし、又は制度を利用したことを理由とする解雇その他不利益な取扱いについても禁止
(育児・介護休業法第16条、第16条の4、第16条の7、第16条の10、第18 条の2、第20条の2、第23条の2)

不利益取扱い禁止の対象となる制度

  • 育児休業(育児のために原則として子が1歳になるまで取得できる休業)
  • 介護休業(介護のために対象家族 1 人につき通算 93 日間取得できる休業)
  • 子の看護休暇(子の看護のために年間 5 日間(子が2人以上の場合 10 日間)取得できる休暇)
  • 介護休暇(介護のために年間 5 日間(対象家族が2人以上の場合 10 日間)取得できる休暇)
  • 所定外労働の制限(育児又は介護のための残業免除)
  • 時間外労働の制限(育児又は介護のため時間外労働を制限(1 か月 24 時間、1 年 150 時間以内))
  • 深夜業の制限(育児又は介護のため深夜業を制限)
  • 所定労働時間の短縮措置(育児又は介護のため所定労働時間を短縮する制度)
  • 始業時刻変更等の措置(育児又は介護のために始業時刻を変更する等の制度)

※下線の措置については、事前に就業規則にて措置が講じられていることが必要です。

育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益取扱いの例

  • 解雇すること
  • 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  • あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
  • 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
  • 就業環境を害すること
  • 自宅待機を命ずること
  • 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は所定労働時間の短縮措置等を適用すること
  • 降格させること
  • 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
  • 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
  • 不利益な配置の変更を行うこと
  • 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとは、「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されることです。
妊娠等の状態や育児休業制度等の利用等と嫌がらせ等となる行為の間に因果関係があるものがハラスメントに該当します。
なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメントには該当しません。

<男女雇用機会均等法第11条の2(抄)>
事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

<育児・介護休業法第25条>
事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

「業務上の必要性」の判断
部下が休業するとなると、上司としては業務の調整を行う必要があります。妊娠中に医師等から休業指示が出た場合のように、労働者の体調を考慮してすぐに対応しなければならない休業についてまで、「業務が回らないから」といった理由で上司が休業を妨げる場合はハラスメントに該当します。しかし、ある程度調整が可能な休業等(例えば、定期的な妊婦健診の日時)について、その時期をずらすことが可能か労働者の意向を確認するといった行為までがハラスメントとして禁止されるものではありません。
ただし、労働者の意をくまない一方的な通告はハラスメントとなる可能性があります。

「制度等の利用への嫌がらせ型」

解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの

労働者が、制度等の利用の請求等(措置の求め、請求又は申出をいう。以下同じ。)をしたい旨を上司に相談したことや制度等の利用の請求等をしたこと、制度等の利用をしたことにより、上司がその労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いを示唆することです。
例)

  • 産前休業の取得を上司に相談したところ、「休みをとるなら辞めてもらう」と言われた。
  • 時間外労働の免除について上司に相談したところ、「次の査定の際は昇進しないと思え」と言われた。

制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの

以下のような言動が該当します。

  • 労働者が制度の利用の請求をしたい旨を上司に相談したところ、上司がその労働者に対し、請求をしないように言うこと。
  • 労働者が制度の利用の請求をしたところ、上司がその労働者に対し、請求を取り下げるよう言うこと。
  • 労働者が制度の利用の請求をしたい旨を同僚に伝えたところ、同僚がその労働者に対し、繰り返し又は継続的に、請求をしないように言うこと。
  • 労働者が制度利用の請求をしたところ、同僚がその労働者に対し、繰り返し又は継続的に、その請求等を取り下げるよう言うこと。

例)

  • 育児休業の取得について上司に相談したところ、「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」と言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になっている。
  • 介護休業について請求する旨を周囲に伝えたところ、同僚から「自分なら請求しない。あなたもそうすべき。」と言われた。「でも自分は請求したい」と再度伝えたが、再度同様の発言をされ、取得をあきらめざるを得ない状況に追い込まれた。

制度等を利用したことにより嫌がらせ等をするもの

労働者が制度等の利用をしたところ、上司・同僚がその労働者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等をすることをいいます。
「嫌がらせ等」とは、嫌がらせ的な言動、業務に従事させないこと、又は専ら雑務に従事させることをいいます。
例)

  • 上司・同僚が「所定外労働の制限をしている人はたいした仕事はさせられない」と繰り返し又は継続的に言い、専ら雑務のみさせられる状況となっており、就業する上で看過できない程度の支障が生じている(意に反することを明示した場合に、さらに行われる言動も含む)。
  • 上司・同僚が「自分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ。」と繰り返し又は継続的に言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合に、さらに行われる言動も含む)。

「状態への嫌がらせ型」

女性労働者が妊娠したこと、出産したこと等に関する言動により就業環境が害されるものをいいます。

解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの

例)

  • 上司に妊娠を報告したところ「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言われた。

妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの

例)

  • 上司・同僚が「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」と繰り返し又は継続的に言い、仕事をさせない状況となっており、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合にさらに行われる言動も含む)。
  • 上司・同僚が「妊娠するなら忙しい時期を避けるべきだった」と繰り返し又は継続的に言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合にさらに行われる言動も含む)。

ハラスメントには該当しない業務上の必要性に基づく言動の具体例

「制度等の利用」に関する言動の例

  1. 業務体制を見直すため、上司が育児休業をいつからいつまで取得するのか確認すること。
  2. 業務状況を考えて、上司が「次の妊婦健診はこの日は避けてほしいが調整できるか」と確認すること。
  3. 同僚が自分の休暇との調整をする目的で休業の期間を尋ね、変更を相談すること。

※2や3のように、制度等の利用を希望する労働者に対する変更の依頼や相談は、強要しない場合に限られます。

「状態」に関する言動の例

  1. 上司が、長時間労働をしている妊婦に対して、「妊婦には長時間労働は負担が大きいだろうから、業務分担の見直しを行い、あなたの残業量を減らそうと思うがどうか」と配慮する。
  2. 上司・同僚が「妊婦には負担が大きいだろうから、もう少し楽な業務にかわってはどうか」と配慮する。
  3. 上司・同僚が「つわりで体調が悪そうだが、少し休んだ方が良いのではないか」と配慮する。

※1から3のような配慮については、妊婦本人にはこれまで通り勤務を続けたいという意欲がある場合であっても、客観的に
見て、妊婦の体調が悪い場合は業務上の必要性に基づく言動となります。

企業が講ずるべきマタハラ対策

人は誰しも母親の妊娠・出産により命を受け、両親又は親族等の育児により今日という日を生きています。
マタニティハラスメントは、それを行う者自身の存在をも否定し得る許されざる行為です。
妊娠、出産には「おめでとう」と、子育てをする仲間にはサポートや励ましの言葉を、贈るべきです。
育児等で仕事に支障が生じるとしても、介護や自分の病気など、仕事に専念できない状況は誰にでも訪れ得るものです。
「お互い様意識」で支え合う風土を職場に醸成する取り組みが大切です。

マタハラ防止のためにも、働き方改革=ワークライフバランス推進を

カバーする側の従業員に負担がかかると、妊娠・出産・育児従業員(以下、「妊産従業員」と言います。)への反発が生じます。
妊産従業員だけでなく、妊産従業員の穴を埋める従業員も含めた社内全体の負荷を常態として軽減する取り組みが必要です。
誰がいつ休んでも、余裕があれば寛大になれます。
業務の効率化と断捨離により、余裕のある働き方を定着させましょう。

カバー従業員をフォロー&評価

妊産従業員の穴を埋め業務が滞らないようカバーしている従業員に対し、言葉と待遇により評価と感謝を伝えましょう。
評価に反映されなければ、カバー損と感じられ、誰も育児・介護等に携わる従業員をフォローしないどころか、責める風土が築かれていきます。
また、どれほど働き方改革が進んでいても、カバー従業員は一時的に、通常よりは多くの業務を担っています。
一人または一部の従業員のみでカバーするのではなく、協力体制を広げ、職場全体で妊産従業員を支えましょう。
カバー従業員の過重労働による疲労とストレスをケアする体制も構築しましょう。

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