介護施設・老人ホーム等介護現場における利用者等からのハラスメント

被害事例

福祉サービスの利用者やその家族からのセクハラや暴言、暴力等の被害が絶えません。
日々献身的にケアし精神的・肉体的負担が重くストレスや疲労で困憊しているのに、輪をかけるようにハラスメントという心理的負荷が重くのしかかり、多くの現場スタッフさんたちは潰れる寸前にまで追い込まれています。

セクシュアルハラスメント

  • 不必要に身体を触られる・触らされる
  • 不必要に身体を見せられる・露出される
  • 食事やデートに誘われる
  • 卑猥な言葉を言われる・言わされる
  • 私的なことを質問される 等

暴言・暴力・態度

  • 人格や能力を否定する暴言を吐かれる
  • 怒鳴られる
  • 叩かれる・蹴られる
  • 物を投げつけられる
  • 唾を吐かれる
  • 刃物や棒などを振り回される
  • 暴れる
  • 物を壁などに投げつけられる
  • 事実に反する盗難・暴力・わいせつ被害の訴え
  • 介助しようとしても触らせてくれない・手を払いのけられる・セクハラだ等暴言を吐かれる
  • やることなすことに文句・否定・従わない・無視 等

理不尽な要求

  • 健康・安全面から禁止されていることの許可強要
  • サービス外の要求
  • 執拗な呼び出し
  • 長時間の拘束
  • 謝罪・土下座の強要
  • 損害賠償請求
  • 頻繁な担当者交代要求
  • 特定の担当者以外を拒絶
  • 何かにつけ「上司を出せ」「女じゃダメだ」と言う

特徴

一般的なカスタマーハラスメントの場合、その場を乗り切れば解決するケースが多いですが、介護の場合は異なります。
以下のような特徴がある分、対応は難しく、デリケートな問題です。

  • 毎日顔を合わせ続ける
  • 認知症などにより、行為者が感情的になったり何度も繰り返したりする
  • 対処法によっては虐待等と非難される、それを恐れて萎縮する
  • 被介護者だけでなく家族への配慮も必要 等

被害を受けたら・目撃したら

セクハラを受けたら・目撃したら

  • 感情的にならず冷静に。ヒステリックになると、逆効果です。
  • 笑顔を見せない。真顔で。笑顔でかわすと「喜んでいる」「嬉しそう」と勘違いされます。「嫌よ嫌よも好きのうち」世代には特に注意が必要です。
  • キッパリと対処する。曖昧な表現でかわしていると繰り返されます。
  • 違うことに注意を向けさせる。
  • 複数人で対応する。仲間が困っていたら助けてあげてください。
  • 被介護者の同性が対応する。
  • すぐに上司及び事業所に報告。時間を置くと対応が難しくなります。
  • 職員間で情報共有し、対応策を全体で考えます。決して一人で抱え込ませてはいけません。

暴言・暴力・脅迫等を受けたら・目撃したら

  • 原因を探し分析する。対処方法は原因により異なります。
  • 暴言・暴力に対して暴言・暴力で返さない。
  • 物理的な距離を取る。見えない場所に、入ってこられない場所に移動しましょう。
  • 感情を無にする。感情をオンにすると心が持ちません。
  • 複数人で対応する。仲間が困っていたら助けてあげてください。
  • すぐに上司及び事業所に報告。時間を置くと対応が難しくなります。
  • 職員間で情報共有し、対応策を全体で考えます。決して一人で抱え込ませてはいけません。
  • 必要に応じ警察に通報する。職員だけで対処できない場合は躊躇せず警察に通報してください。

対策

職員様が日頃から心がけるべきこと

  • サービスを提供するにあたり適した服装・身だしなみ・態度・言葉遣い等を心がけましょう。
  • サービスの基本的な知識・技術の研鑽に努め、患者・利用者から信頼されるプロフェッショナルでありましょう。
  • 患者・利用者一人ひとりとのコミュニケーションを大切にし、個性・嗜好・要注意事項を把握しましょう。
  • 患者・利用者の不安、自尊心、羞恥心に配慮し、侮辱的な態度を取らないよう注意しましょう。

事業所による防止対策

患者さんは神様ではありませんし、職員さんも尊い人間です。
介護も医療も仕事です。
働く方々の生活、健康、命を犠牲にするサービスは業務外です。
職員さんの安全を第一に考えてあげてください。
職員さんの安全を守るために、以下のような措置を予め講じておきましょう。

トップによる基本方針の明示

ハラスメントは決して許されないものであり、職員が我慢したり犠牲になったりするものではないことを、施設・事業所の基本方針として内部に周知しましょう。
また、利用者や家族にも、契約時等に、基本方針としてハラスメントをしてはいけないこと、どのような行為がハラスメントとなるか、万が一ハラスメントの事実が確認された場合には契約解除等があり得ることなどを説明し、理解を促進しましょう。

サービスの範囲及び契約書・重要事項説明書等の理解促進

医療・介護サービスの範囲及び契約書、重要事項説明書等を職員が正しく理解し守ることを啓発しましょう。
また、利用者及び利用者の家族にも丁寧に説明し、理解を促進しましょう。

管理職への教育

管理職には、部下がハラスメントの被害を受けた場合や加害行為をした場合に責任ある対応をすることが求められます。
利用者への対応、部下のメンタルケア、発生状況の調査・把握・対処等に関する研修を行いましょう。

スタッフへの教育

ハラスメントを受けないために、まずはサービスの基本的な知識と技術を習得していることが大切です。
知識や技術が未熟であるために患者や利用者の怒りを買ったりセクハラの標的となったりすることが多いためです。
ハラスメントを受けた際の基本的な対処法教育と合わせて、定期的に研修を実施しましょう。

報告・対応フローマニュアルの作成・周知

ハラスメントの被害を受けた場合の相談・報告体制を整備し、職員に利用方法を周知しましょう。
また、ハラスメントの被害を受けた場合や相談・報告を受けた場合、問題が発生した場合の対応マニュアルを予め策定し、適正に対応できる体制を整えておきましょう。

相談・通報窓口の設置

被害を受けたときに相談できる体制がなければ、職員は苦悩を抱えたまま潰れるか、提訴するかの選択しかなくなります。
相談しやすい窓口を設置し、また相談や通報を受けた際には迅速かつ適性に対応する体制を整えましょう。
事業所内の窓口には相談しづらいケースに備え、外部にも窓口を委託することが望ましいです。

勉強会の実施

ハラスメントに関する情報を共有する場を定期的に設けましょう。
これにより、「この患者さんにはこう対応すればいいよ」「じゃあ次は私も一緒にケアするね」という協力体制が強化され、問題が軽減されることがあります。

関係各所との連携

何かあったときのために、警察や自治体、他の医療機関や施設等ともコミュニケーションをとり連携体制をとっておきましょう。
また、ハラスメントの問題は同業者間で共有することで対処の糸口が見えることがあります。