仕事と介護の両立

働きながら介護をする方へ

例えばぎっくり腰で動けなくなった、という経験は多くの方にあるでしょう。
身動きが取れず、誰かに頼ったり、部屋を移動するだけでもいつもの3倍時間がかかったりして、通常通りの生活ができず苦労されたことと思います。
介護をするということは、逆の立場で、その一部又は全てに付き添うということです。
時間も集中力も介護に取られることとなりますが、大切な親や家族のため、放棄するわけにもいきません。
仕事を辞めて介護に専念するしかないかなと考えるものです。

「仕事と介護の両立」の現状

40〜50歳代正社員の8割近くが、仕事と介護を両立することに不安を持っています。

【統計情報】介護に関する具体的な不安

  1. 公的介護保険制度の仕組がわからないこと
  2. 介護がいつまで続くかわからず、将来の見通しが立てにくいこと
  3. 仕事を辞めずに介護と仕事を両立するための仕組がわからないこと
  4. 適切な介護サービスが受けられるかどうかわからないこと
  5. 勤務先の介護にかかわる支援制度がない、もしくはわからないこと
  6. 介護休業などを職場で取得して仕事をしている人がいないこと
  7. 自分が介護休業を取得すると収入が減ること
  8. 代替要員がおらず、介護の為に仕事を休めないこと
  9. そもそも労働時間が長いこと
  10. 地域での介護に関する相談先がわからないこと
  11. 勤務先の介護にかかわる制度はあっても、利用しにくい雰囲気があること

株式会社wiwiw「仕事と介護の両立支援事業社内アンケート(事前)」(平成26年度厚生労働省委託事業)より作成

こうした不安から、年間約10万人と多くの方が退職しますが、介護のために離職すると、精神的、肉体的、経済的な負担が増加しているのが現状です。
介護に専念するために離職しても、決して精神的、肉体的に楽になるわけではありません。
介護に直面しても簡単には退職しないこと、企業としては介護に直面した社員を簡単には辞めさせず両立を支援することが大切です。

様々な両立支援制度

介護をする方は、退職を決める前に、仕事と介護の両立を支援する様々な制度があることをご確認ください。

介護休業

要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して休業を取得することができます。
有期契約労働者も要件を満たせば取得できます。

介護休暇

通院の付き添い、介護サービスに必要な手続きなどを行うために、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで1日又は半日単位で介護休暇を取得することができます。

所定外労働の制限(残業免除)

介護が終了するまで、残業を免除することができます。

時間外労働の制限

介護が終了するまで、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限することができます。

深夜業の制限

介護が終了するまで、午後10時から午前5時までの労働を制限することができます。

所定労働時間短縮等の措置

事業主は、利用開始の日から3年以上の期間で、2回以上利用可能な次のいずれかの措置を講じなければなりません。

  • 短時間勤務制度
  • フレックスタイム制
  • 時差出勤の制度
  • 介護費用の助成措置

※労働者は、措置された制度を利用することができます。

不利益取扱いの禁止

介護休業等の制度の申出や取得を理由とした解雇など不利益な取扱いは禁止されています。

ハラスメント防止措置

上・同僚からの介護休業等を理由とする嫌がらせを防止する措置を講じることが事業主に義務付けられています。

ケアハラスメント(ケアハラ)とは?

介護に直面したときのポイント

  1. 職場に「家族等の介護を行っていること」を伝え、必要に応じて勤務先の「仕事と介護の両立支援制度」を利用する。
  2. 介護保険サービスを利用し、自分で「介護をしすぎない」
  3. 介護保険の申請は早めに行い、要介護認定前から調整を開始する。
  4. ケアマネジャーを信頼し、「何でも相談する」。(下段「ケアマネジャーに相談する際に確認しておくべきことチェックリスト」を参照)
  5. 日頃から「家族や要介護者宅の近所の方々等と良好な関係」を築く。
  6. 介護を深刻に捉えすぎずに、「自分の時間を確保」する。

まだ介護をしていない方

現在介護を行っていない方は「事前準備」が大切です。介護はいつ始まるか分からないからこそ、いざというときに慌てないよう、事前にしっかりと準備しておきましょう。

  1. 介護保険制度・介護サービス、両立支援制度の概要を把握しておくこと。
  2. 介護に直面した時にどこに相談すればよいか、その窓口を知っておくこと。(下段「親が元気なうちから把握しておくべきこと」参照)

「ケアマネジャーに相談する際に確認しておくべきこと」チェックリスト

ケアマネジャー 仕事と介護の両立

  • 介護に直面した際、最初に介護について相談する先は地域包括支援センターです。
  • 地域包括支援センターでは、介護が必要な高齢者やその家族のために、介護サービスや日常生活に関する相談を受け付けています。
  • 要介護者のケアプランを立てるケアマネジャーも、地域包括支援センターや市区町村の窓口で紹介してくれます。

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターは、中学校の通学区域におおよそ1施設ずつ設置されています。
介護サービスの申請などは、介護が必要な「高齢者の居住地」にある地域包括支援センターや市区町村の窓口で行います。事前に、地域包括支援センターや市区町村の窓口の所在地や連絡先を調べておきましょう。

ケアプランとは

要支援認定、要介護認定を受けた人が介護サービスを適切に利用できるよう、その人の心身や家族の状況などを考慮しながら作成する介護サービスの計画書のことです。具体的には、利用する介護サービスの種類や内容、介護サービス事業者などを定めます。

ケアマネジャーとは

ケアマネジャーとは、介護分野における専門職であり、正式名称を「介護支援専門員」といいます。ケアマネジャーの仕事は、介護を必要とする個々の利用者の状況に応じて最適なケアを受けられるようにコーディネートすることです。具体的には、介護を必要とする人や家族の状況を適切に把握することや、ケアプランの作成、介護サービスを提供する施設・事業者との調整、介護サービスが適切に提供されているかどうかの定期的な確認などを行います。

介護される人について

介護のこと

□食事のとり方や耳の聞こえ方、トイレ・排泄の変化
□動く様子(歩き方、歩く速さ、つまずく、転ぶなど)の変化
□物忘れの傾向(同じものを買い込んでいないかなど)・頻度
□既往歴や服用している薬(市販薬を含む)やサプリメント
□かかりつけ医
□子どもに介護してもらうことへの抵抗感の有無
□在宅介護サービスの利用意向
□介護施設への入居意向
□最期はどこで暮らしたいと思っているか

生活のこと

□1日、1週間の生活パターン
□近所の友人や地域の活動仲間の存在
□地域の民生委員や配達員など、家族や友人以外で親の安否を確認できる人の有無
□趣味や楽しみ
□好きな食べ物
□生活に関する不安や悩み

介護する人(あなた自身)について

介護のこと

□あなたの介護に対する考え方
□あなたの介護経験の有無
□あなたが介護を担える時間帯
□介護を分担できる兄弟姉妹・配偶者などの有無
□介護サービスや介護施設を利用すること(親の介護を他人に任せること)への抵抗感の有無

仕事や生活のこと

□あなたの1日や1週間の生活パターン
□あなたの健康状態・通院の有無
□あなたの家庭の状況(配偶者や子育ての状況など)
□あなたの仕事の状況(仕事内容、出社時間・帰宅時間、残業の有無、出張の頻度、転勤の可能性など)
□勤務先の両立支援制度の利用意向

このページは全て、厚生労働省のウェブサイト及び資料より抜粋し当社にて編集を行い掲載しています。


企業が取り組むべきこと

企業の「社員の介護に関する実態把握」の現状をみると、特に把握していない企業が半数近くに上ります。
「プライベートな話だから」「本人も触れてほしくないのでは」と考えてのことのようですが、実際には、介護について上司や同僚に知られることの抵抗感は「あまりない」「ない」と考える人が7割超で、抵抗感はそれほど強くないのが実のところです。
ゆえに企業は遠慮し過ぎず実態を把握すべきです(無理やり・むやみに把握しようとしてはいけません)。
社員が手助けや介護についての相談先として選ぶのは、家族・親族やケアマネジャーが主で、勤務先に相談する割合は極めて引くくなっています。
しかし仕事との両立については勤務先に相談するのが最善ですので、企業としては相談しやすい雰囲気や体制を作ることが大切です。
そのためにもまずは社員の実態把握を行い、「会社は社員の介護を尊重し理解し協力しますよ」というメッセージを伝えましょう。

勤務先の両立支援制度を利用しない理由

  • 介護に係る両立支援制度がないため
  • 自分の仕事を代わってくれる人がいないため
  • 家族・親族の理解・協力が十分に得られたため
  • 在宅勤務等の柔軟な働き方で対応しているため
  • 相談する部署等がないこと、もしくはわからないため
  • 介護事由で両立支援制度を使用している人がいないため
  • 介護に係る両立支援制度を利用すると収入が減るため
  • 介護に係る両立支援制度を利用しにくい雰囲気があるため
  • 上司・同僚が利用することを望まないため
  • 人事評価に悪影響が出る可能性があるため
  • どのように両立支援制度と介護サービスを組み合わせれば良いかわからないため

仕事と介護の両立支援対応モデル

1.社員の仕事と介護の両立に関する実態把握

(1)全社的なアンケートやヒアリングの実施
①属性(役職、雇用形態など)
②介護に関する状況(介護の有無、介護に関する不安など)
③仕事や職場の状況(労働時間、休暇など)
(2)人事面談などを通じた上司による把握
(3)制度利用者などの介護経験者を対象としたヒアリング

【実態把握調査票】「介護に関するアンケート」(PDF)
※厚生労働省資料「仕事と介護の両立支援実践マニュアル(企業向け)」を一部編集して作成

2.制度設計・見直し

実態把握や以下の確認事項を踏まえ、自社の両立支援制度を点検し、課題があれば見直しを行いましょう。
見直しにあたっては、労働組合や社員と意見交換を行い、導入や変更をする上での課題と対策を検討し、よく準備した上で実施します。
【制度設計・見直しを行う際に確認すべき点】

  1. 法定の基準を満たしているか(育児・介護休業法に定められている介護休業制度、介護休暇制度等)
  2. 自社の制度の趣旨や内容が、社員に周知されているか(介護休業の趣旨:「仕事と介護の両立に向けた準備期間」や「看取り」などでの利用)
  3. 自社の制度の利用要件がわかりやすいか、利用手続きは煩雑でないか
  4. 自社の制度が、社員の支援ニーズに対応しているか(長期的な休業・短期の休暇取得/半日や時間単位での就労時間の調整/遅刻、早退、中抜けなどの柔軟な対応等)

【厚労省】「『仕事と介護の両立支援制度』を周知しよう」チェックリスト

3.介護に直面する前の社員への支援

ハンドブックの作成、イントラネットへの情報掲載、セミナー開催などを通じ、介護に関する基本的な知識や情報、実際に介護に直面した際の仕事と介護の両立のイメージを提供し、従業員自身が介護について事前準備を行えるよう支援しましょう。
【具体的に取り組むべきこと】

  1. 仕事と介護の両立を企業が支援するという方針の周知
  2. 「介護に直面しても仕事を続ける」という意識の醸成
  3. 企業の仕事と介護の両立支援制度の周知(ハンドブックの作成・配布、イントラネットへの情報の掲載、研修・セミナー等の開催)
  4. 介護について話しやすい職場風土の醸成(定期的な面談、相談窓口等)
  5. 介護が必要になった場合に相談すべき「地域の窓口」の周知
  6. 親や親族とコミュニケーションを図っておく必要性のアピール

【厚労省】社内研修用:「仕事と介護の両立セミナー」テキスト

【厚労省】研修実施後のフォローアップ調査票

【厚労省】「仕事と介護の両立準備ガイド」リーフレット

【厚労省】「親が元気なうちから把握しておくべきこと」チェックリスト

4.介護に直面した社員への支援

自社の両立支援制度や公的な介護保険制度の内容や活用方法についての相談窓口の情報提供が基本。
上司・管理職が社員の支援ニーズにいち早く気づくことができるよう、社員が相談しやすい体制を整備することが重要です。
【具体的に取り組むべきこと】

  1. 相談窓口での両立課題の共有
  2. 企業の仕事と介護の両立支援制度の手続き等の周知
  3. 働き方の調整(休業・休暇取得、残業削減、フレックスタイム制度、在宅勤務制度の活用、早出・遅刻や早退など就労時間帯の調整等)
  4. 職場内の理解の醸成(周囲の社員への説明、上司によるフォロー等)
  5. 上司や人事による継続的な心身の状態の確認
  6. 社内外のネットワークづくり

【厚労省】「従業員から介護に関する相談を受けた際に対応すべきこと」チェックリスト

【厚労省】「ケアマネジャーに相談する際に確認しておくべきこと」チェックリスト

5.働き方改革

長時間労働の見直しや年次有給休暇の取得促進といった「働き方の見直し」はもちろん、仕事上の情報共有などの「仕事の見える化」や、個人の事情をお互いさまと理解し合える職場風土づくり」が大切。
【具体的に取り組むべきこと】

  1. 通常の働き方の見直し(恒常的な長時間労働の見直し、「仕事の見える化」等)
  2. 多様なニーズに即した柔軟な働き方の提供(勤務時間、始業・終業時刻、働く場所などについての多様な選択肢)

ケアハラスメント(ケアハラ)について

社員が介護をすること又は介護休業等の申出・取得等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをしたり、嫌がらせをしたりすることをケアハラスメント(ケアハラ)といいます。

ケアハラスメント(ケアハラ)について詳しく知る

「トモニン」マークの活用

仕事と介護の両立 ワークライフバランス トモニン
トモニンとは、「仕事と介護の両立ができる職場環境」整備のための厚生労働省公式シンボルマークの愛称です。
仕事と介護を両立できる職場環境の整備に取り組んでいる企業が使用できます。
「両立支援のひろば」(https://ryouritsu.mhlw.go.jp/)に仕事と介護の両立に関する取組を登録し、使用規程に沿って活用しましょう。

【厚労省】「働き方の工夫を考えよう」チェックリスト

このページは全て、厚生労働省のウェブサイト及び資料より抜粋し当社にて編集を行い掲載しています。