グローバル化が進む現代において、職場や日常生活で異なる文化や背景を持つ人々との交流はますます増えています。
しかしその一方で、残念ながら「レイシャルハラスメント」と呼ばれる人種差別的な言動や嫌がらせが後を絶ちません。
レイシャルハラスメントとは何か、その具体的な事例、企業に求められる予防策、そして私たち一人一人ができることについて考えます。
※この記事は、当社ニュースレター5月号で配信したものと同内容です。
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レイシャルハラスメントとは
レイシャルハラスメントとは、人種や民族、国籍、出身地などに基づく差別や嫌がらせのことです。
直接的な侮辱や差別的な発言だけでなく、根拠のないステレオタイプに基づいた嫌がらせ、無視、排除なども含まれます。
身近に潜むレイシャルハラスメントの例>
以下のようなことはありませんか?
- 特定の国籍の人に対して、「母国に帰れ」といった差別的な発言をする。
- 外国出身であることを理由に、重要な仕事から意図的に外す。
- 特定の人種に対するネガティブなジョークやからかいを繰り返す。
- 文化や習慣の違いを一方的に否定したり、嘲笑したりする。
- 肌の色や髪の色など、外見的な特徴を揶揄する。
- 出身国や民族に関する偏見に基づいた質問や詮索をする。
- 言葉が不慣れな人に対して、意図的に難しい言葉を使ったり、ゆっくり話すことを拒否したりする。
- 集団の中で、特定の人種や国籍の人だけを無視したり、仲間外れにしたりする。
これらの行為は、被害者に精神的な苦痛を与えるだけでなく、働く意欲の低下、孤立感、キャリア形成の阻害など、深刻な影響を及ぼします。また、組織全体の生産性低下や信頼関係の崩壊にも繋がりかねません。
企業に求められるレイハラ予防策
企業にとって、多様な人材はイノベーションの源泉であり、競争力強化の鍵となります。
しかしその一方で、異なる文化や背景を持つ従業員間で、意図せずともレイシャルハラスメントが発生するリスクも存在します。
レイシャルハラスメントは、被害を受けた従業員の尊厳を傷つけ、働く意欲を著しく低下させるだけでなく、企業全体のイメージダウンや訴訟リスクにも繋がりかねません。
企業がレイシャルハラスメントを予防し、すべての従業員が安心して活躍できる職場環境を整備するために取るべき具体的な対策を見てみましょう。
1. 明確な方針とルール策定、周知徹底
就業規則への明記
レイシャルハラスメントを含むあらゆるハラスメントを禁止する明確な規定を就業規則に盛り込み、その定義、具体的な事例、禁止事項、違反した場合の処分などを明示します。
経営層のコミットメント表明
経営層がレイシャルハラスメント根絶に向けた強いメッセージを発信し、企業全体としての取り組み姿勢を明確に示します。
全従業員への周知徹底
新入社員研修や定期的な研修などを通じて、レイシャルハラスメントに関する方針やルールを全従業員に周知徹底します。多言語対応や分かりやすい資料作成も重要です。
相談窓口の設置と周知
従業員が安心して相談できる内部窓口(人事部、相談担当者など)や外部窓口を設置し、その連絡先や利用方法を周知します。相談者のプライバシー保護を徹底することも重要です。
2. 研修・啓発活動の実施
全従業員向け研修
レイシャルハラスメントの定義、具体例、影響、関連法規などを学ぶ研修を実施します。異文化理解や多様性尊重の重要性を理解する機会を提供することも有効です。
管理職向け研修
管理職は、ハラスメントの兆候に早期に気づき、適切に対応する責任があります。管理職向けには、ハラスメント発生時の対応方法、相談窓口への連携、再発防止策などを学ぶ研修を実施します。
継続的な啓発活動
ポスター掲示、社内イントラネットでの情報発信、eラーニングなどを活用し、継続的にレイシャルハラスメント防止に関する意識啓発を行います。
3. ハラスメントが発生した場合の適切な対応
迅速かつ公正な調査
相談があった場合は、事実関係を迅速かつ公正に調査します。被害者と加害者双方から丁寧にヒアリングを行い、客観的な証拠に基づいた調査を徹底します。
適切な措置の実施
調査結果に基づき、加害者に対しては就業規則に則った適切な処分(指導、注意、減給、懲戒処分など)を行います。被害者に対しては、 精神的なケアや職場環境の調整など、必要なサポートを提供します。
再発防止策の徹底
ハラスメント発生の原因を分析し、組織全体としての再発防止策を講じます。研修内容の見直し、コミュニケーション改善、職場環境の改善などが考えられます。
4. 多様性を尊重する企業文化の醸成
オープンなコミュニケーションの促進
従業員が自由に意見交換できる風通しの良い職場環境づくりを推進します。
異文化理解を深める機会の提供
異文化交流イベントの開催、多言語対応の推進など、従業員が互いの文化を理解し尊重する機会を提供します。
アンコンシャス・バイアスへの意識向上
無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)がハラスメントに繋がる可能性を理解し、自身のバイアスに気づき、それを克服するための研修やワークショップを実施します。
公平な評価制度の導入
国籍や人種に関わらず、能力や成果に基づいた公平な評価制度を導入し、従業員のモチベーション向上を図ります。
5. 定期的な見直しと改善
アンケート調査の実施
定期的に従業員へのアンケート調査を実施し、ハラスメントの実態や職場の課題を把握します。
専門家への相談
必要に応じて、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談し、対策の有効性や改善点についてアドバイスを受けます。
取り組み状況のモニタリングと改善
実施した対策の効果を定期的に検証し、必要に応じて改善策を講じます。
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レイシャルハラスメントのない、多様な人材が安心して活躍できる職場づくりは、企業の持続的な成長に不可欠です。
上記の対策を参考に、自社の状況に合わせて積極的に取り組んでいくことが求められます。
私たち一人一人にできること
レイシャルハラスメントをなくすためには、社会全体の意識改革が必要です。その第一歩は、私たち一人ひとりが問題意識を持ち、行動することです。
レイシャルハラスメントについて学ぶ
まずは、何がレイシャルハラスメントにあたるのか、その影響について正しい知識を持つことが大切です。
不快な言動には毅然とした態度を
もしあなたがレイシャルハラスメントを受けたり、見かけたりした場合は、勇気を持ってNOと伝えましょう。
偏見やステレオタイプに気づく
私たちは無意識のうちに偏見を持っている可能性があります。自分の考え方を客観的に見つめ直し、意識的に修正していく努力が必要です。
多様性を尊重する姿勢を持つ
文化や価値観の違いを理解し、尊重することが、ハラスメントのない社会を作る上で不可欠です。
相談できる窓口を知っておく
もし被害に遭ってしまった場合や、周りで困っている人がいる場合は、一人で悩まずに相談できる窓口を探しましょう。職場の人事部や相談窓口、外部の専門機関など、様々なサポートがあります。
声を上げる人を支持する
レイシャルハラスメントの被害者が声を上げた際には、その勇気を称え、周りの人がしっかりとサポートすることが重要です。
最後に
誰もが安心して働き、生活できる社会の実現のために、私たち一人ひとりが意識を変え、行動していくことが求められています。
この記事がレイシャルハラスメントについて考えるきっかけとなり、より良い社会を築くための一助となれば幸いです。
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