2026年10月、TOPIXが変わる―企業価値を上げる会社、毀損する会社の違い

2026年10月、TOPIXは次世代型への移行を本格化します。新しいTOPIXでは流動性を重視した定期入替が導入され、市場から「選ばれ続ける企業」であることの重要性はさらに高まります。一方、企業価値を左右するのは、現在の利益だけではありません。人材、技術、知的資産、ガバナンス、組織の健全性など、将来にわたって利益を生み出す力も問われます。不正、ハラスメント、人材流出、技術承継の失敗は、その力を毀損する要因です。企業価値向上を「株価対策」ではなく、リスクを成長力へ転換する経営として考えます。

TOPIX改革が問いかけているもの

2026年10月、TOPIXの初回定期入替が行われ、次世代TOPIXへの段階的な移行が始まります。
次期TOPIXでは、プライム・スタンダード・グロースの全市場を対象とする一方、流動性基準による定期的な銘柄入替が行われます。
初回の定期入替で継続採用されない銘柄については、2026年10月から段階的にウエイトが低減され、2027年10月には再評価も行われます。

これは単なる「指数のルール変更」ではありません。
企業にとって改めて問われるのは、市場から継続的に評価され、資金を呼び込み、成長し続けられる企業であるか。ということです。

企業価値を高めるのは、現在の利益だけではない

企業価値を考えるとき、売上や利益はもちろん重要です。

ただし、市場が見ているのは「今いくら稼いでいるか」だけではありません。
重要なのは、この企業が、5年後、10年後にも価値を生み出し続けられるか。という将来への期待です。

そのためには、収益力だけではなく、

  • 人材が育ち、定着している
  • 技術・ノウハウが蓄積、承継されている
  • 新しい事業や技術への投資が行われている
  • 経営資源が成長領域へ適切に配分されている
  • 経営と現場の情報が適切につながっている
  • 問題を早期に把握し、是正できる
  • 経営の意思決定を監督する仕組みが機能している

といった「将来の利益を生み出す基盤」が必要です。

東証も2026年4月、「資本コストや株価を意識した経営」に関する要請をアップデートし、研究開発、人的資本、知財・無形資産、設備投資、事業ポートフォリオの見直しなどを通じた経営資源の適切な配分を重視しています。
自社株買いや増配だけではなく、継続的に資本コストを上回る収益性と持続的成長を実現することが重要であるという考え方です。

企業価値を毀損するものは、現場で起きている

反対に、企業価値を低下させるものを考えてみます。

  • 不正
  • ハラスメント
  • 長時間労働
  • 事故
  • 組織不和
  • 離職
  • 休職

これらは、「人事問題」「コンプライアンス問題」「現場の問題」にとどまりません。

ハラスメント・不正・組織不和
↓
離職・休職・生産性低下・信用低下
↓
人材・技術・ノウハウ・取引関係の毀損
↓
競争力・収益力の低下
↓
将来キャッシュフローへの不確実性増大
↓
企業価値の毀損

つまり、現場で発生している小さな異変と、企業価値は別々の問題ではありません。

問題なのは、不祥事そのものだけではなく、問題が起きても情報が上がらない、異論が言えない、責任の所在が曖昧、経営が是正しない、といった構造が残ることです。
同じ問題が繰り返される企業では、市場から見た将来リスクも高まります。

コンプライアンスは「守り」だけではない

ここで、コンプライアンスの位置づけも変わります。

ハラスメントを防止する。
不正を防止する。
事故を防止する。
—これらももちろん重要です。

しかし、その目的を「問題を起こさないこと」だけに置けば、コンプライアンスはコストに見えてしまいます。

その先には、

  • 安心して異論を言える
  • 優秀な人材が残る
  • 技術やノウハウが承継される
  • 管理職が適切に判断できる
  • 経営に正しい情報が届く
  • 問題が起きても早期に修正できる

という組織があります。
これは、企業が本来持っている人・知識・技術・経験を、十分に価値へ転換できる状態でもあります。

RiskからGrowthへ

企業価値向上は、株価だけを追いかけることではありません。

まず、自社の中にあるリスクを把握することから始まります。

リスク:ハラスメント・不正・事故・離職・組織不和
↓
そして、問題を生み出している組織の構造を見直す。
↓
ガバナンス:役割・意思決定・情報・評価・人材・監督・是正
↓
その結果として、人や組織が本来持つ力を発揮できる状態をつくる。
↓
知的資産:人材・技術・知識・ノウハウ・信頼・ブランド
↓
それらを競争力と成長へつなげる。
↓
成長:生産性・イノベーション・収益力・持続的成長
↓
そして最終的に、
企業価値向上へ

企業価値向上は、経営と現場の間にある

2026年10月から始まるTOPIX改革は、企業価値を考え直す一つの契機になります。
ただし、企業価値向上はIR部門だけの仕事でも、財務部門だけの仕事でもありません。

  • 現場で人材が辞めている
  • 技術が特定の人に属人化している
  • 管理職が疲弊している
  • 異論を言えない
  • 問題が経営まで上がらない
  • 不適切な行為を把握しても是正できない

このような状態を放置したまま、企業価値だけを高めることは困難です。
リスクを早期に捉え、組織の構造を整え、人材・技術・知識・信頼という知的資産を蓄積していくことは、将来の競争力につながります。

リスクを減らすことと、企業価値を高めることは、一本の線上にあります。

企業が持つ実力・真価を十分に発揮できる組織をつくる。
それが、これからの企業価値向上の一つの重要な基盤になるのではないでしょうか。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ケンズプロは、ハラスメント等心理社会的リスクを管理し、健康的な心理社会的職場環境を実現するための組織ガバナンス設計・実装支援ファームです。