なぜ組織問題は同じ場所で繰り返されるのか―7×7アーキテクチャで見る「歪みやすい10のセル」

ハラスメント、不正、組織不和などの問題は、多くの場合、特定の個人の行動として語られます。しかし実務の現場を観察すると、問題は組織内の特定の条件のもとで繰り返し発生する傾向があります。同じ部署でトラブルが続く、行為者が変わっても摩擦が残る、違和感が長く放置される──こうした現象は偶然ではありません。組織の意思決定環境そのものに、歪みやすい構造条件が存在しているためです。本稿では、組織問題を構造として整理するフレームワーク 7×7 Governance Architecture を用い、日本企業で特に歪みやすい「10のセル」を整理します。ハラスメントや不正を個別事象ではなく、組織ガバナンスの設計問題として捉える視点を提示します。

組織問題はランダムには起きない

組織問題は、しばしば偶発的な出来事として扱われます。

しかし実務の現場では、次のような現象が繰り返し観察されます。

  • 同じ部署で問題が繰り返される
  • 行為者が変わっても摩擦が続く
  • 違和感が長く放置される

このような状態は偶然ではありません。
組織の意思決定環境そのものに歪みがあるため、問題が再生産されるのです。

つまり、多くの組織問題は「事件」ではなく、構造の結果として生じています。

7×7アーキテクチャという視点

この構造を整理するためのフレームが、7×7 Governance Architectureです。

このフレームでは、組織問題を次の二つの軸で整理します。

構造条件

組織の判断を歪める環境条件

統治レバー

組織統治を動かす設計要素

この二つを掛け合わせることで、組織の統治設計を体系的に分析します。

構造条件 × 統治レバー = 組織ガバナンス設計

この視点で企業を分析すると、組織問題はランダムに発生するのではなく、特定のセルに集中していることが見えてきます。

日本企業で歪みやすい10のセル

実務の観察では、日本企業では次の領域に歪みが集中する傾向があります。

情報歪み × 情報設計

悪いニュースが上がらない構造です。

  • 上司への遠慮
  • 組織内忖度
  • 問題を弱めて報告

その結果、トップの判断環境が歪みます。

情報歪み × 評価設計

問題報告が不利益になる環境です。

  • 問題を報告すると評価が下がる
  • 責任を問われる

このような評価設計では、問題は報告されなくなります。

異論消失 × 意思決定設計

会議で反対意見が出ない構造です。

  • 上位者への遠慮
  • 会議文化

この結果、意思決定の修正機能が失われます。

権限責任の曖昧 × 役割設計

誰が決めるのか分からない状態です。

  • 判断の先送り
  • 責任の回避
  • 問題の拡大

といった現象が起きます。

評価目標偏重 × 評価設計

数字が目的化する構造です。

  • 不正
  • 隠蔽
  • 威圧的マネジメント

が発生しやすくなります。

評価目標偏重 × 人材設計

数字だけで昇進が決まる構造です。

この環境では

  • 組織破壊型管理職
  • 威圧型リーダー

が生まれやすくなります。

業務過負荷 × 業務設計

慢性的な過負荷の状態です。

忙しすぎる組織では

  • 判断の粗さ
  • 感情的言動
  • ハラスメント

が発生しやすくなります。

組織摩擦 × 調整設計

関係不和が放置される構造です。

組織摩擦は自然に解消するものではありません。
放置されると、未事案化ゾーンが拡大します。

規範劣化 × 例外運用

例外が常態化する状態です。

ルール例外が増えると、組織の境界線が崩れます。

規範劣化 × 監督保証

ルール違反が検知されない状態です。

監査や内部通報が機能しない組織では、問題が長期潜伏します。

ハラスメントはこの構造から生まれる

これらの条件が重なると、組織では次のような現象が発生します。

  • 強い叱責
  • 威圧
  • 排除
  • 沈黙

構造的に見ると、問題は次の流れで発生しています。

構造歪み

判断歪み

組織摩擦

ハラスメント

つまりハラスメントは、単なる行為の問題ではなく、組織の統治構造の結果なのです。

行為ではなく構造を見る

多くのハラスメント対策は、次の施策に集中しています。

  • 研修
  • 規程整備
  • 処分

これらは必要です。
しかし、それだけでは再発防止にはつながりません。

再発を止めるためには、行為ではなく構造を見る必要があります。

組織ガバナンス・アーキテクチャという視点

7×7 Governance Architectureは、

  • ハラスメント
  • 不正
  • 組織不和
  • 判断ミス

といった問題を、組織ガバナンスの設計問題として整理するフレームです。

組織問題を個人の資質として扱うのではなく、統治構造の問題として捉えること

それが、問題の再発を止めるための出発点になります。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ケンズプロは、ハラスメント等心理社会的リスクを管理し、健康的な心理社会的職場環境を実現するための組織ガバナンス設計・実装支援ファームです。