なぜ本人は「悪いことをした」と思っていないのか ―ハラスメント行為者の認知構造と、是正が難しい理由

ハラスメントが発覚した際、多くの組織で、行為者はこう語ります。

「そんなつもりはなかった」
「悪意はなかった」
「良かれと思ってやった」

この言葉を、「言い訳」「責任逃れ」と切り捨てることは簡単です。
しかし、実務の現場で数多くの事案を見ていくと、この言葉は、必ずしも虚偽ではないことが分かります。

ハラスメントの多くは、明確な悪意ではなく、知識不足、認識のずれ、思い込み、そして善意から生じています。

そして、このタイプのハラスメントこそが、最も是正が難しいのです。

ハラスメントは「人格」ではなく「認知の問題」で起きる

多くの組織が見誤るのは、ハラスメントを「倫理観の欠如」「人格の問題」として捉えてしまう点です。

しかし実際には、行為者の多くは、

  • 自分なりに配慮しているつもり
  • 相手との関係性は良好だと思っている
  • 組織や相手のために行動しているという自負がある

という認識を持っています。

つまり、問題は、行為そのものよりも、行為に至る判断の前提にあります。

「知っているつもり」が、最も危険な状態をつくる

ハラスメント行為者の認知構造には、共通する特徴があります。

  • 研修を受けたことがある
  • 過去に注意された経験がない
  • 自分は常識的な人間だと思っている

この状態では、新しい情報や指摘は「自分には当てはまらないもの」として処理されやすくなります。
結果として、知識不足そのものよりも、知識が更新されないことが問題になります。

認識のずれは、自覚できない

ハラスメントが是正されにくい最大の理由は、認識のずれは、本人から見えないという点です。

  • 相手は嫌がっていないと思っている
  • 冗談として成立していると信じている
  • 指導・指摘の一環だと正当化している

ここでは、行為者は「自分が間違っている」という認識を持ちません。

むしろ、正しいことをしている、必要なことをしているという感覚を持つ場合すらあります。

善意と正義感が、行動を加速させる

特に是正が難しいのが、善意や正義感に基づくハラスメントです。

  • 部下のためを思って厳しく言っている
  • 成長させるために踏み込んでいる
  • 組織の秩序を守るために注意している

こうした行為は、行為者自身の中で「やめる理由」が見つかりません。

なぜなら、行動の根拠が「自分の感情」ではなく「正しさ」になっているからです。

このタイプのハラスメントは、注意されても形を変えて繰り返されます。

なぜ注意・研修・誓約書では止まらないのか

多くの組織では、問題が起きると次の対応を取ります。

  • 口頭注意
  • 一般的なハラスメント研修
  • 誓約書の提出

しかし、これらは行為者の認知構造にはほとんど作用しません。

なぜなら、

  • 何がズレているのか
  • どの判断が問題だったのか
  • 次にどう判断すべきなのか

が、本人の言葉で整理されていないからです。

反省はしても、判断基準は更新されていないのです。

是正に必要なのは「反省」ではなく「再設計」

ハラスメントの再発防止に必要なのは、人格改善でも、価値観の矯正でもありません。

必要なのは、

  • 自分の判断がどこでズレたのか
  • どの前提を修正すべきか
  • 次に同じ状況で、どう判断するのか

を、個別に言語化し、整理することです。

これは、集団研修では不可能です。
なぜなら、ズレ方は一人ひとり異なるからです。

組織に問われているのは「切るか守るか」ではない

行為者対応において、組織はしばしば二択に陥ります。

  • 厳しく処分するか
  • 見守るか

しかし、本来問われているのは、行為者をどう扱うかではなく、行為をどう是正するかです。

善意のハラスメントほど、放置すれば深刻化し、感情的な対立を生みます。

だからこそ、専門的な個別指導による是正プロセスが必要になります。

当社では、ハラスメント行為者を「問題のある人」として扱うのではなく、判断構造を再設計すべき対象として捉え、個別指導研修を通じて、再発防止と組織の信頼回復を支援しています。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。