2026年、研修をやり尽くした企業が陥る「ガバナンスの罠」

ハラスメント研修やコンプライアンス研修を一通り実施し、「やるべきことはやっている」と感じている企業ほど、2026年以降、思わぬ形でガバナンスの脆弱性を突かれるリスクがあります。人的資本開示の高度化や投資家の評価軸の変化により、企業には「研修を実施したか」ではなく、「不祥事・ハラスメントをどのような構造で抑制し、再発防止の実効性をどう担保しているか」が問われる局面に入っています。本記事では、研修をやり尽くした企業が陥りやすい“ガバナンスの罠”を整理し、なぜ制度や研修が整っていても問題が繰り返されるのか、その構造的な背景を解説します。

1. 「研修は十分にやっている」という自己評価の落とし穴

多くの企業では、

  • ハラスメント研修
  • コンプライアンス研修
  • 管理職向け研修
    を定期的に実施しています。これ自体は重要な取り組みです。

しかし、研修の実施が常態化するにつれ、
「やるべきことは一通りやっている」
「これ以上、何をすればよいのか分からない」

という状態に陥る企業が増えています。

この自己評価は、往々にして“実施したかどうか”を基準にした評価であり、“実際に行動や判断が変わったか”という観点が抜け落ちがちです。

2. 研修はあるのに、なぜ問題は繰り返されるのか

研修を重ねているにもかかわらず、ハラスメントや不正、不祥事が繰り返される企業には、共通する特徴があります。

  • 不適切な言動が起きても、現場で止める仕組みがない
  • 管理職の役割や責任が曖昧で、介入が属人的になっている
  • 相談窓口や調査体制はあるが、意思決定の責任所在が不明確
  • 事案ごとに対応方針がぶれ、組織としての一貫性がない

これらは、知識や意識の問題ではなく、「判断が歪む構造」が温存されていることを示しています。
研修は“正解”を教えることはできますが、組織の判断構造そのものを変える機能までは担えません。

3. 2026年以降に顕在化する「ガバナンスの罠」

2026年以降、人的資本開示の高度化や、ガバナンスに対する投資家の評価軸の変化により、次のような「罠」が顕在化します。

① 研修実績はあるが、「実効性」が説明できない

研修回数や受講者数は示せるものの、それによって何が変わったのか、再発防止にどう効いているのかを説明できない。

② 仕組みはあるが、「判断が再現性をもって機能していない」

相談窓口・調査フロー・規程は整っているが、事案が起きるたびに対応が属人的になり、判断の一貫性が保てない。

③ ガバナンスが「形式対応」と評価される

制度・研修・委員会は揃っているが、ガバナンスが“運用されている構造”として評価されず、対外的には形式対応と見なされる。

これが、本稿でいう「ガバナンスの罠」です。

4. 「研修の限界」を越えるために必要な視点

研修は、ガバナンスの基盤を支える重要な要素です。
しかし、ガバナンスの実効性を決めるのは、次の要素です。

  • 誰が、どの権限で、どこまで判断するのか
  • 不適切な行為に対して、組織としてどのように“線を引く”のか
  • 再発防止策が、現場の役割定義や評価制度にどう組み込まれているか

つまり、ガバナンスとは「研修を実施すること」ではなく、「正しい判断が“必然”として選ばれる構造を設計・実装すること」です。

ガバナンスとは「判断の構造」を実装すること

当社が現場で見てきたのは、研修や制度は整っているにもかかわらず、“最も難しい局面”で判断が歪む組織の姿です。

5. 問題は「意識」ではなく「判断構造」にある

ハラスメントや不正の再発は、個人のモラルや意識の問題として語られがちです。
しかし実務の現場では、次のような構造が温存されています。

  • 上位者の判断に異議を唱えにくい
  • 業績や人材不足を理由に、不適切な行為が黙認される
  • 事案対応の判断基準が明文化されていない

これらは、個々人の善意では乗り越えられない“構造的な歪み”です。
研修をいくら重ねても、判断構造が変わらなければ、再発防止は機能しません。

6. 再発防止は「プログラム」ではなく「実装の問題」

再発防止策は、しばしば

  • 研修の追加
  • 注意喚起の徹底
    といった“プログラム”として設計されます。

しかし、実効性を左右するのは、それが日常の意思決定プロセスに組み込まれているかどうかです。

  • 役職定義に、職場環境の整備や不適切行為への介入が明示されているか
  • 事案対応のプロセスが、経営判断と接続されているか
  • 行為者への個別対応が、再発防止の設計に組み込まれているか

ここまで踏み込んで初めて、再発防止は「実装された」と言えます。

7. 2026年に問われるのは「説明可能なガバナンス」

人的資本開示の高度化により、企業には「やっていること」ではなく、「なぜそれで再発が防げるのか」を説明できるガバナンスが求められます。

これは、単なる情報開示の問題ではなく、組織の判断構造そのものが説明可能な状態になっているかという問いです。

8. まとめ|「研修をやり尽くした先」にある次の一手

2026年以降、研修をやり尽くした企業ほど、次の問いに直面します。

制度も研修も整っているのに、なぜ“最も重要な局面”で判断が歪むのか。

この問いに向き合わない限り、ガバナンスは“形”だけ整ったまま、実効性を伴いません。

当社が提供しているのは、研修の追加ではなく、事案対応・再発防止・組織ガバナンスを一体として再設計し、正しい判断が必然となる構造を実装する支援です。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。