ハラスメント再発防止策報告書の必要性―説明可能な報告書と“実装”まで落とし込めていますか

ハラスメント再発防止策は「調査の次」にこそ本質がある

ハラスメント再発防止策報告書は、調査の“後”に残る唯一の経営資産です。
厚生労働省の指針は、事案対応に加え、再発防止策の実施まで企業の責任として求めています。しかし多くの現場では、研修や注意喚起で対応を終え、なぜ同様の問題が起きたのか、判断構造や権限配置にどの歪みがあったのかが整理されないままになりがちです。再発防止策報告書は、個別対応に終始せず、原因を構造として言語化し、具体的な改善策と実装計画までを説明可能な形でまとめるものです。再発を止める鍵は、施策ではなく、判断のされ方を変える設計にあります。

1.制度はすでに「再発防止」まで求めている

パワーハラスメント防止法をはじめ、厚生労働省の指針では、事業主に対し、事案発生時の調査・被害者保護・行為者対応に加え、再発防止に向けた措置を講じることが求められています。

つまり法制度上は、

「調査して終わり」では足りず、
同種事案が繰り返されない状態を組織としてつくること

までが、企業の責任として位置づけられています。

しかし実務の現場を見ると、この「再発防止」が、本当に組織に組み込まれている企業は決して多くありません。

2.なぜ「再発防止」は形骸化しやすいのか

多くの企業で、再発防止策は次のような形で整理されます。

  • 研修を実施する
  • 規程を改訂する
  • 注意喚起文書を出す
  • 行為者に個別指導を行う

これらはいずれも必要な対応です。
しかし、それだけで再発は止まるでしょうか。

実際には、別の部署、別の人物、別の文脈で、同種の問題が繰り返されるケースは少なくありません。

理由は明確です。

多くのハラスメントは、
個人の資質の問題というより、
判断のされ方・権限の配置・役割設計・運用構造の歪みの中で生じます。

構造が変わらない限り、誰がそこに配置されても、同じ判断の歪みが再生産されます。

3.「再発防止策を立てた」と言える状態とは

本来、再発防止とは、次の問いに説明可能な形で答えられる状態を指します。

  • なぜ、この組織ではその判断が選ばれたのか
  • 同じ状況に置かれたとき、次はどの判断が“必然”になるのか
  • 誰が、どの権限と責任で判断する設計になっているのか
  • 現場任せ・属人判断に依存しない仕組みになっているか
  • 管理職の役割と責務は、構造上きちんと定義されているか

これらを整理し、

  • 事案の構造分析
  • 判断構造・役割設計・運用ルールの見直し
  • 再発防止策の設計
  • 実装ロードマップ
  • モニタリング方法

までを含めて文書化したものが、本来あるべき「再発防止策報告書」です。

単なる箇条書きの対策案では、再発防止は“設計された”とは言えません。

4.再発防止は「作る」より「実装する」ほうが難しい

再発防止の本当の難しさは、ここからです。

再発防止を本気で進めると、

  • 役職定義・権限配分の見直し
  • 意思決定プロセスの再設計
  • 相談・通報導線の再構築
  • 管理職の役割再定義
  • 評価・統制の仕組みへの反映

といった、経営の設計そのものに踏み込みます。

これは、通常業務の延長で片手間に進められるものではありません。

再発防止とは、
ルールを一つ足すことではなく、
「判断のされ方」を組織として作り替えることだからです。

5.再発防止を“説明可能な経営プロジェクト”にする

再発防止を機能させるためには、発想の転換が必要です。

  • 再発防止は、コンプライアンス対応ではなく経営課題である
  • 再発防止は、施策の集合ではなく構造の再設計である
  • 再発防止は、宣言ではなく実装と検証のプロセスである

この前提に立つことで初めて、

  • 指針を起点に
  • 組織の判断構造を可視化し
  • 再発防止策を具体化し
  • 説明可能な報告書にまとめ
  • 実装ロードマップとして落とし込む

という一連の流れが、現実的な経営プロジェクトとして立ち上がります。

6.「重要だが、社内だけでは難しい」領域である理由

ここまで整理すると、再発防止がなぜ難しいかは明確です。

再発防止は、

  • 組織構造
  • 権限と責任
  • 判断プロセス
  • ガバナンス
  • 人材マネジメント

が絡み合う、高度に専門的な設計領域だからです。

多くの企業で、

調査は外部に依頼したのに、
再発防止だけは社内で何とかしようとして、結局進まない

という状況が生まれるのも、無理はありません。

7.再発防止の本質――「正しい判断が必然になる組織」へ

ハラスメント再発防止の本質は、誰かを反省させることではありません。

同じ状況に置かれたとき、組織として“正しい判断が必然的に選ばれる構造”をつくること。

もし現在、

  • 再発防止策が研修と注意喚起に留まっている
  • 組織構造や役割設計には手を付けられていない
  • 再発防止が経営課題として位置づけられていない

と感じる点があれば、それはまさに、専門的な設計と実装の支援が必要な局面です。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。