心理的安全性は、ハラスメント再発防止の“実装装置”である―行為者個別指導から始まる、組織の判断構造の転換

心理的安全性は、ハラスメント再発防止を現場で機能させるための「実装装置」です。
心理的安全性が低い組織では、不適切な言動や判断の歪みがあっても、違和感や異論が表明されず、問題が温存されやすくなります。一方、挨拶、傾聴、質問、声かけといった日常的な行動が実践される職場では、発言や是正が自然に行われ、ハラスメントの芽が初期段階で可視化されます。心理的安全性は「優しい雰囲気」の問題ではなく、管理職の行動様式や役割設計によってつくられる組織機能です。再発防止を実効性あるものにするためには、制度や研修に加え、現場の行動と判断のされ方そのものを設計し直す必要があります。

1.心理的安全性は「優しい職場」づくりの話ではない

近年、「心理的安全性」という言葉が広く使われるようになりました。
しかし、実務の現場では、これがしばしば「雰囲気の良い職場」「言いたいことが言える空気」といった情緒的な概念として受け取られがちです。

本来、心理的安全性とは、職務上必要な発言・質問・異論・違和感の表明が、報復や不利益を恐れずに行える状態を指します。
つまりそれは、個人の心の問題ではなく、組織の運用設計の問題です。

心理的安全性が低い組織では、不適切な言動や判断の歪みがあっても、現場からの是正がかからず、結果としてハラスメントが温存・再生産されやすくなります。

2.心理的安全性が低い組織で、ハラスメントが起きやすい理由

心理的安全性が低い職場には、共通する構造があります。

  • 上司の顔色をうかがわなければ発言できない
  • 違和感や疑問を口にすると「面倒な人」と見られる
  • 失敗や相談が評価に不利に働く
  • 部下が沈黙することが“空気を読んでいる”と評価される

このような環境では、

不適切な指導や言動があっても、それがその場で是正されず、組織の中で「普通のこと」として定着していきます。

つまり、心理的安全性の低さは、ハラスメントを“起こしやすくする”だけでなく、“止められない構造”を生み出すのです。

3.心理的安全性を高める行動は、ハラスメント防止の具体策である

当社の行為者個別指導研修で扱われているような、

  • 挨拶
  • 傾聴
  • 質問
  • 声かけ

といった行動は、一見すると基本的なマネジメントスキルに見えます。
しかし、これらは心理的安全性を構造的に高めるための、極めて実践的な行動装置です。

たとえば、

  • 日常的な挨拶がある職場では、声をかける心理的ハードルが下がる
  • 傾聴が実践される上司のもとでは、部下は「言ってもよい」という学習をする
  • 質問を歓迎する態度は、「無知をさらしても不利益にならない」という認知を生む
  • 日常的な声かけは、沈黙の固定化を防ぐ

これらはすべて、ハラスメントの芽が初期段階で可視化される構造をつくる行為です。

4.心理的安全性 → ハラスメント防止 → さらに心理的安全性が高まる

心理的安全性とハラスメント防止は、一方向の因果関係ではありません。
両者は相互に強化し合う関係にあります。

  • 心理的安全性が高まる
    → 不適切な言動が指摘・是正されやすくなる
    → ハラスメントが起きにくくなる
  • ハラスメントが抑制される
    → 安心して発言できる体験が増える
    → さらに心理的安全性が高まる

この循環が回り始めた組織では、ハラスメント対策は「外から押し付けられた規範」ではなく、組織内部の運用として自走し始めます。

逆に、心理的安全性に手を付けずに、規程や研修だけでハラスメント防止を図ろうとしても、現場の行動様式が変わらない限り、実効性は限定的です。

5.心理的安全性は「文化」ではなく「設計対象」である

心理的安全性は、自然に醸成される“文化”ではありません。
設計し、実装し、運用されるべき組織の機能です。

そのためには、

  • 管理職の役割定義の中に「心理的安全性の担保」を明示する
  • 日常的な行動指針として、挨拶・傾聴・質問・声かけを具体行動として落とし込む
  • 評価制度や1on1の設計に、発言・相談・是正を促す要素を組み込む
  • 行為者個別指導の中で、加害的行動の修正だけでなく、“安全な関係性をつくる側の責任”を明確にする

といった、構造への組み込みが不可欠です。

6.行為者個別指導は、心理的安全性を実装する“起点”になる

ハラスメント事案の後、行為者個別指導研修はしばしば「問題行動を改めさせるための是正措置」として位置づけられます。

しかし実務上は、それ以上の意味を持ちます。

行為者は多くの場合、その組織のマネジメント構造の中核に位置する管理職です。
その行動様式が変わることは、当該組織の心理的安全性の設計が変わることを意味します。

行為者個別指導を、

  • 個人の反省に閉じるのか
  • 組織の心理的安全性を再設計する起点にするのか

で、再発防止の実効性は大きく変わります。

7.心理的安全性は、再発防止を“現場で機能させる装置”である

ハラスメント再発防止が形骸化する理由の多くは、それが制度や研修のレベルに留まり、現場の行動様式にまで落とし込まれていない点にあります。

心理的安全性は、再発防止策を“現場で実際に機能させるための装置”です。

  • 発言される
  • 是正される
  • 相談される
  • 立ち止まれる

この日常の運用が回り始めて初めて、ハラスメント防止は「実装された」と言えます。

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投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。