なぜ経営者は、ハラスメント対応で「判断を先送り」してしまうのか―リスクが分かっていても動けない、意思決定構造の正体

ハラスメント事案が発生したとき、多くの経営者は次のことを理解しています。

  • 放置すべきではない
  • 初動が重要である
  • 判断を誤れば、組織に深刻な影響が出る

それでもなお、判断は先送りされます。

これは、経営者の無責任さや覚悟不足によるものではありません。
判断が止まるように設計された構造の中に、経営者自身が置かれているからです。

経営者は「判断しない」のではなく、「判断できない」

現場でよく見られるのは、次のような状態です。

  • 事実関係が完全に出揃っていない
  • 当事者の感情が不安定である
  • 社内の意見が割れている
  • 法的リスクの評価が揺れている

この状況で下した判断は、必ず誰かを傷つけ、誰かに批判されるということを、経営者は熟知しています。
結果として、「もう少し情報を集めてから」「今は動くタイミングではない」という言葉が選ばれます。
判断停止は、回避ではなく、損失を最小化しようとする合理的反応でもあるのです。

ハラスメント対応は「感情」と「統治」が衝突する領域

ハラスメント事案が難しい理由は、それが単なる法務・人事の問題ではなく、感情と統治が正面衝突する領域だからです。

  • 被害者への配慮
  • 行為者の処遇
  • 現場の混乱
  • 組織文化への影響

これらを同時に考慮しなければならない。

経営者が迷うのは当然です。
問題は、この迷いを整理する装置が組織内に存在しないことです。

「人事・法務に任せる」が、判断停止を固定化する

多くの企業で、経営者はこう言います。

「まずは人事に任せている」
「法務の見解を待っている」

これは合理的に見えますが、実際には判断を先送りする構造を強化します。

  • 人事は評価・処遇の当事者である
  • 法務はリスクを最小化する立場にある
  • 現場は感情的な解決を求める

これらの意見は、必然的に割れます。

経営者が「調整役」に回った瞬間、判断主体は不在になります。

先送りが生む、見えないコスト

判断を先送りした結果、すぐに問題が顕在化しない場合もあります。

しかし、水面下では確実にコストが発生しています。

  • 被害者のエンゲージメント低下
  • 周囲の不信感
  • 内部通報・外部相談の準備
  • 離職・休職リスク

これらは、後から数値として現れたときには、すでに手遅れになっているコストです。

判断できる経営者が持っている、唯一の視点

判断を先送りしない経営者は、特別に冷酷でも、勇敢でもありません。
彼らが持っているのは、次の一点です。

「この判断は、感情調整ではなく、組織統治の問題である」

被害者への配慮と、
行為者への是正、
そして組織の秩序維持を、
同一平面で処理しようとしない

順序を分け、役割を分け、判断を構造化しています。

外部の視点が、判断を動かす理由

多くのケースで、判断が動き出すのは外部の第三者が関与した瞬間です。
それは、外部が正しいからではありません。

  • 感情の渦中にいない
  • 社内政治に巻き込まれない
  • 判断を言語化する役割に徹している

この位置取りが、経営者に「判断できる状態」を取り戻させます。

問われているのは、勇気ではなく設計である

ハラスメント対応において、経営者に求められているのは決断力や胆力ではありません。

  • 判断が止まりにくい構造を持っているか
  • 迷いを整理する装置を備えているか
  • 初動を設計として組み込んでいるか

それだけです。

当社では、ハラスメント対応を「問題が起きた後の処理」ではなく、経営判断が滞らないためのガバナンス設計として捉え、外部から経営判断を支える役割を担っています。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。