近年、知事や市町村長など、自治体のトップによるセクハラ・パワハラ事案が相次いで報道されています。
これらの事案については、行為の是非や当該人物の資質をめぐる強い批判がなされることも少なくありません。
しかし、本記事の目的は、特定の首長や自治体を評価・批判することではありません。
当社はこれらの事案を、「問題のある個人がいた」という整理ではなく、権力が集中する組織においてどのような判断構造が成立していたのかという観点から整理します。
同様の構造は、民間企業を含むあらゆる組織に存在し得るためです。
「誰も逆らえない」状態は、なぜ生まれるのか
首長によるハラスメント事案に共通して指摘されるのが、
- 逆らえなかった
- 進言できなかった
- 声を上げると不利益を受けると感じていた
という周囲の状況です。
ここで重要なのは、それが特定の人物の威圧的性格によってのみ生じたわけではない、という点です。
多くの場合、
- 人事権が一極に集中している
- 評価・配置・昇進への影響が不透明
- 首長の判断に異を唱える正式ルートが存在しない
といった構造的条件が重なっています。
この状態では、沈黙や迎合が「合理的な選択」になります。
権力構造に起因する、その他の発生要因
首長によるハラスメント事案を構造の問題として整理すると、権力集中以外にも、いくつかの典型的要因が見えてきます。
① 判断と感情が分離されていない
トップの発言や振る舞いが、
- 方針表明なのか
- 感情的な反応なのか
区別されないまま受け取られる環境では、部下は常に「忖度」を迫られます。
結果として、ハラスメントに該当しうる行為であっても、組織として判断の対象になりにくくなります。
② トップ自身が「判断される側」に回らない
首長という立場上、
- 自分の言動が誰によって評価されるのか
- 問題があった場合、どこで是正されるのか
が不明確になりがちです。
この状態では、トップ自身の行為が判断の枠外に置かれる構造が生まれます。
③ 内部通報・相談制度が機能しにくい
形式上は制度が存在していても、
- 通報内容が最終的に誰に伝わるのか分からない
- 結果的にトップの耳に入るのではないか
- 不利益取扱いを防げる確信が持てない
と感じられている場合、制度は実質的に機能しません。
特にトップ自身が当事者となり得る事案では、この問題は顕著になります。
④ 「選挙で選ばれた存在」という特殊性
首長は、選挙という正当性を持つ存在です。
このこと自体は民主主義の根幹ですが、組織運営の文脈では、
- 誰が統治上の判断をチェックするのか
- 行政組織としてのガバナンスはどう担保されるのか
という論点が、十分に整理されないまま残されがちです。
個人を入れ替えても、問題が解決しない理由
こうした構造のもとでは、
- 人が変わっても
- 世代が変わっても
- 善意のトップであっても
同様の問題が再び生じる可能性があります。
それは、
問題が、行為者ではなく、
判断と権力の構造にあるからです。
この問題は、民間企業にとって他人事ではない
首長による事案を見て、
「行政だから起きた」
「選挙がある特殊な立場だからだ」
と考えるのは容易です。
しかし、次のような組織では、同質の構造が存在します。
- 創業者・オーナー企業
- 強い権限を持つCEO
- トップの意向が人事・評価に直結する組織
権力の集中度が高いほど、ハラスメントは個人の問題として表出せず、構造の問題として潜在化します。
組織トップに求められる視点
この種の問題において、トップに求められるのは、
- 自分がハラスメントをしていないかという自己評価ではありません。
問うべきは、
自分の言動が、誰にもチェックされずに通過してしまう構造を作っていないか
という点です。
次に考えるべきこと
この記事を読んで、
「自分は大丈夫だろうか」
「うちの組織は、進言できる構造だろうか」
と感じたとしたら、それは重要な出発点です。
次に必要なのは、トップ自身が権力をどのように行使し、どこで制御されているかを具体的に点検することです。
当社では、こうした問題を個人の資質ではなく、組織構造と判断設計の問題として扱います。
投稿者
- ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。
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