近年、「女性活躍推進」「女性が輝く社会」といった言葉は、企業・行政の場で広く使われるようになりました。
一方で、こうした言葉に違和感を覚えている女性が少なくないことも、現場では静かに共有されています。
本稿では、その違和感を個人の感想や価値観としてではなく、組織ガバナンスの専門的視点から整理し、日本の企業・組織に期待される方向性について考えます。
女性活躍という言葉が抱える構造的な問題
「女性活躍」という言葉は、一見すると前向きで善意に満ちた表現に見えます。
しかしガバナンスの観点から見ると、この言葉は重要な前提を含んでいます。
それは、「女性であること」が、評価や期待の単位として前提化されているという点です。
この前提がある限り、女性は無意識のうちに、
- 女性としてどう振る舞うか
- 女性として期待に応えるか
- 女性として場を和らげるか
といった、職務や役割とは別の次元での要請を受けやすくなります。
これは、女性の能力や意欲の問題ではなく、評価と判断の軸が、役割ではなく属性に置かれている構造の問題です。
問題は「女性が活躍していない」ことではありません
私たちは、「女性が十分に活躍できていない」こと自体を、問題の本質だとは考えていません。
本質的な問題は、
- 判断権限が職務として定義されていない
- 意思決定プロセスが制度化されていない
- 役割と責任の範囲が曖昧なまま運用されている
といった、組織の統治構造そのものにあります。
このような構造の中では、誰であっても「個人としてどう見られるか」「どう感じよく振る舞うか」に依存せざるを得ません。
女性が女性性を前面に出さざるを得ない場面が多いのも、個人の選択というより、現行の構造への適応の結果と見る方が適切です。
当社が目指しているのは、
- 女性が評価される組織
- 女性が活躍しやすい職場
ではありません。
私たちが目指しているのは、
性別や属性を持ち出さなくても、役職・立場・専門性によって判断されることが当たり前である組織
です。
そこでは、
- 判断は人格ではなく、役割として行われ
- 責任は感情ではなく、制度として引き受けられ
- 異議や指摘は、個人攻撃ではなく、プロセス改善として扱われます
その結果として、性別に関係なく、多様な人が機能します。
日本の組織に期待したいこと
日本の企業・組織に対して、私たちが期待しているのは、大きな理念転換ではありません。
必要なのは、次のような地味で、しかし決定的な変化です。
- 権限と責任を、職務として明確にすること
- 判断基準を、個人の裁量ではなく、共有された前提として言語化すること
- 問題が起きたとき、誰が悪いかではなく、どの構造が機能しなかったかを問うこと
これらが積み重なった先に、「女性活躍」という言葉を使わなくても成り立つ組織が生まれます。
属性ではなく、役割で語れる社会へ
女性であることを強調しなくても、
男性であることを前提にしなくても、
プロとして、役割として、判断と責任を引き受けられる。
それが特別ではなく、普通である社会。
私たちは、その実現を、スローガンではなく、組織統治と構造の設計によって支えることを使命としています。
女性が輝く社会ではなく、誰もが属性を背負わずに機能できる社会へ。
そのために、私たちはこれからも、感情や物語ではなく、原則と構造を提示し続けます。
投稿者
- ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。
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