フジテレビ問題に見る―「うちの会社は大丈夫だろうか?」と感じた企業のための判断構造セルフチェックリスト

近時報道されているフジテレビをめぐる問題を受け、自社の体制や対応について「うちは大丈夫だろうか」と感じた企業も多いでしょう。

この感覚は、不安でも過剰反応でもありません。
健全な組織ほど、他社事案を“自分事”として捉えます。

本チェックリストは、ハラスメントの有無や規程整備の状況を確認するものではありません。

当社の立場から、判断が歪む構造が組織内に存在していないかを点検するためのものです。

チェックの前提

  • 本チェックに「正解」はありません
  • Yesが多ければ安全、Noが多ければ危険、というものでもありません
  • 重要なのは、答えに詰まる項目がどこかです

詰まる箇所こそが、判断構造上の検討ポイントです。

Ⅰ.インシデント発生時の「入口」は定義されていますか

次の問いに、即答できるでしょうか。

  • ハラスメントが疑われる事案が起きたとき、誰が「インシデントとして扱う」と判断しますか
  • 「これは様子見でよい」「個別注意で足りる」という判断は、誰の権限で行われますか
  • 現場や人事が「判断に迷う」状態になったとき、どこに上げることになっていますか

入口が曖昧な組織では、そもそも判断が始まりません。

Ⅱ.エスカレーションは「重大性」ではなく「判断困難性」で起きますか

  • 行為の悪質性が明確でなくても、判断に迷えば上申される仕組みがありますか
  • 「証拠が弱い」「被害者が声を上げていない」という理由で、エスカレーションが止まることはありませんか
  • 組織としての説明責任が想定される場合、自動的に判断レベルが引き上がる設計になっていますか

判断困難な事案ほど、上に上げる構造が必要です。

Ⅲ.判断主体は、あらかじめ構造として定義されていますか

  • インシデント発生後に「誰が判断するか」を都度決めていませんか
  • 判断を行う主体は、平時から役割・権限が定義されていますか
  • 判断の結果について、誰が組織として説明責任を負うか明確ですか

人を集めてから考える組織は、判断が後追いになります。

Ⅳ.判断主体の構成は、同質に偏っていませんか

  • 判断を行うメンバーは、同世代・同性別・同一キャリアに偏っていませんか
  • ハラスメントや人権侵害について、異なる立場・経験からの視点が制度上組み込まれていますか
  • 外部性(社外取締役・外部有識者等)が形式ではなく実質的に機能していますか

誠実な判断であっても、構成が同質であれば歪みます。

Ⅴ.「判断しない」という選択は可視化されていますか

  • 対応を見送る、静観する、当面動かない――これらは記録・検証されていますか
  • なぜ判断しなかったのかを、後から説明できますか
  • 結果的に問題が拡大した場合、「判断しなかった判断」を振り返る仕組みがありますか

無判断は、もっとも検証されにくい判断です。

Ⅵ.再発防止策は「行為」ではなく「判断」を変えていますか

  • 再発防止策として、研修・規程改定・注意喚起だけで終わっていませんか
  • 次に同様の事案が起きたとき、どの判断が、どう変わるのかを説明できますか
  • 再発防止策が、判断構造のどの部分を修正したのか明確ですか

判断が変わらなければ、行為も変わりません。

チェックを終えて感じたことが、最も重要です

このチェックを通じて、

  • 答えに詰まった
  • 人によって認識が違った
  • 「それは誰が決めるのか」で議論が止まった

としたら、それは危険信号ではありません。

検討すべき構造が、まだ言語化されていないというサインです。

当社の立場

当社は、ハラスメント対応や不祥事対応を個人の問題としてではなく、組織の判断構造の問題として扱います。

その前提として、当社では「ハラスメント対応における判断原則」を定めています。

このチェックリストは、その原則に照らし、自社の判断構造を見直すための入口にすぎません。

最後に

「うちは大丈夫だろうか?」
という問いに、一人で、あるいは一部署で答えを出そうとする必要はありません。

重要なのは、

判断を、
個人の善意や経験に委ねていないか

を確認することです。

判断構造の点検は、問題が起きてからでは遅く、しかし、問題が起きる前でなければ意味がありません。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。