― なぜ再発防止が機能しない組織が生まれるのか
近時報道されているフジテレビをめぐる一連の問題について、世の中では「ハラスメントの有無」「企業体質」「個人の資質」といった観点から、さまざまな議論が行われています。
しかし、本件を組織統治の観点から見ると、より重要な論点は別の場所にあります。
それは、
この組織では、誰が・いつ・何を判断する構造になっていたのか
という点です。
個別行為の問題に還元してしまう危うさ
多くの企業不祥事やハラスメント事案では、議論が次のいずれかに収束しがちです。
- 行為者個人の問題
- 組織風土・文化の問題
- コンプライアンス意識の欠如
これらはいずれも要素としては重要ですが、それだけでは再発防止の設計にはつながりません。
なぜなら、
「同様の判断が、なぜ別の場面でも繰り返されるのか」
を説明できないからです。
本件で注目すべきは「判断の委任構造」
本件をハラスメント事案としてではなく、判断構造の問題として捉え直すと、次の問いが浮かび上がります。
- 問題が認識された時点で、誰に判断権限が委ねられていたのか
- その判断は、どの情報を前提に行われていたのか
- 判断結果に対して、どのような検証・修正ルートが用意されていたのか
- 「判断しない」「先送りする」という選択は、どのように扱われていたのか
重要なのは、誤った判断があったかどうかではありません。
誤りうる判断を前提に、組織がどのような構造を持っていたか
この点こそが、再発防止の核心です。
「再発防止策」が機能しなくなる典型的な構図
多くの組織で見られるのは、次のような構図です。
- 事案発生後、研修や規程改定を行う
- 形式上は「再発防止策」を整備する
- しかし数年後、類似の問題が再び起きる
これは対策が不十分だからではなく、
再発防止策が「判断構造」に接続されていない
ことによって起こります。
行為の是正と、判断の設計は、別の問題だからです。
当社の視点:再発防止を名乗るために必要なもの
当社では、ハラスメント対応や不祥事対応を行う際、常に次の前提から検討を行います。
再発防止とは、
行為を止めることではなく、判断が歪まない状態を組織として実装することである。
この前提に立つと、
- どの対策が意味を持ち
- どの対策が「やったつもり」に終わるのか
は、かなり明確に分かれます。
本件も例外ではありません。
「うちは大丈夫か」と感じた企業の方へ
この問題を見て、
「うちの会社は大丈夫だろうか」
と感じたとしたら、それは健全な反応です。
ただし、その問いはYes / Noで答えられるものではありません。
問うべきは、
- 自社では、誰がどの判断を担っているのか
- その判断が歪むとしたら、どこで歪むのか
- 歪みを修正する仕組みが、本当に機能しているのか
という構造の自己点検です。
最後に
ハラスメントや不祥事が起きたとき、組織が本当に問われているのは、
「正しい行動を取れたか」ではなく
「正しい判断ができる構造を持っていたか」
という点です。
本記事は、特定の企業や個人を評価・批判するものではありません。
同様の問題がどの組織でも起こりうること、そしてその原因が判断構造にあることを、あらためて確認するための視点整理です。
当社では、ハラスメント対応・再発防止・組織ガバナンスを個別事象ではなく、判断と統治の問題として扱う支援を行っています。
投稿者
- ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。
最新の投稿
- 2026年2月1日知見教授一人に依存しない研究室運営とは―研究の自由を守るための〈分散設計〉
- 2026年1月31日その他の記事大学ガバナンスは機能しているか―不正を生まないための〈構造チェックリスト〉
- 2026年1月30日知見なぜ大学の不正は繰り返されるのか―「個人の問題」に見せかけた、組織構造の盲点
- 2026年1月29日知見ハラスメントの構造的要因―ハラスメントを構造で捉える
