対話でも研修でも解けない「組織内不和」を、どう初動でほどくか─FRICTION-RESET™ Framework の思想

職場の対立や部署内の関係悪化が生じた際、多くの組織は「対話の場づくり」や「コミュニケーション研修」で対応します。しかし実務の現場では、それらを実施しても摩擦が再燃し、時間の経過とともに不信が深まるケースが少なくありません。本稿では、組織内不和が“感情の問題”として処理され続けることで構造是正が先送りされる実態を整理します。そして、ハラスメントや不正として事案化する前段階、すなわちガバナンスの空白地帯(未事案化ゾーン)において、摩擦を統治設計へ接続する初動介入の考え方として、当社の FRICTION-RESET™ Framework の思想を提示します。

なぜ対話や研修は「その場しのぎ」に終わるのか

対話の場を設けること自体は有効です。
誤解を言語化し、感情を整理する機会は、短期的な緊張緩和に寄与します。

しかし、再発する組織には共通点があります。

  • 役割期待が曖昧なまま
  • 責任と裁量の不一致が放置されたまま
  • 評価軸が対立を誘発する設計のまま
  • 意思決定ラインが不透明なまま

構造条件が変わらなければ、摩擦は合理的に再生産されます。

研修は個人のスキルを高めますが、衝突を生み出す設計を変えるものではありません。

対話や研修は、構造是正の“後”に初めて持続的効果を持ちます。

組織内不和が「感情の問題」にすり替えられる瞬間

現場では次の語りが生まれがちです。

  • あの人の言い方がきつい
  • 性格が合わない
  • コミュニケーションが下手だ

これらは現象の一側面です。しかし本質ではありません。

同じ人物でも、設計条件が変われば摩擦の頻度と深刻度は変わります。
にもかかわらず、感情や相性の問題として処理されることで、

  • 役割設計の曖昧さ
  • 権限配分の歪み
  • 評価構造の対立誘発性

が不可視化されます。

この瞬間、問題は慢性化します。

初動介入の要諦──対話をゴールにしない

未事案化ゾーンで最も重要なのは、ゴール設定です。

多くの組織は「分かり合うこと」をゴールに置きます。
しかし初動介入の本来のゴールは、

摩擦を生み出している構造条件を、統治設計の論点へ翻訳すること

です。

感情の緩和は副次的効果にすぎません。
主目的は、組織として手を入れられる設計課題へ昇華させることです。

FRICTION-RESET™ Framework の思想

FRICTION-RESET™ Framework は、未事案化ゾーンの摩擦を統治設計へ接続するための初動介入の骨格です。
重要なのは手法ではなく、思考の順序です。

聞く

  • 当事者の語りを感情・事実・認知に分解
  • 正誤の裁定ではなく構造素材の収集
  • 摩擦の再現条件を特定

ほどく

  • 対立構造の可視化
  • 誤解構造の分解
  • 役割期待のズレの整理

個人問題として語られていた論点を、設計問題へ再定義します。

つなぐ

  • 役割定義の再確認
  • 権限と責任の再接続
  • 評価軸と行動期待の整合
  • 意思決定ラインの明確化

ここで初めて、摩擦は再発防止設計の入口に立ちます。

対話を終点にせず、必ず設計に接続する。
これが本フレームの核心です。

事案化の手前で介入する経営的意味

ハラスメントや不正として顕在化した後の対応は、

  • 調査コスト
  • 処分・報告書作成
  • ブランド毀損
  • 人的資本の流出

といった重い負担を伴います。

一方、未事案化ゾーンでの初動介入は、

  • 事案化確率の低減
  • 再発防止策の軽量化
  • 経営の説明可能性の確保

につながります。

これは感情対応ではなく、合理的な経営判断です。

管理職設計・再発防止策・人的資本へ

組織内不和は、次の領域と直結します。

  • 管理職の役割設計
  • ハラスメント再発防止設計
  • 内部通報制度の実効性
  • 人的資本開示における風土評価

摩擦は孤立した問題ではありません。
統治の設計品質を映す鏡です。

まとめ

組織内不和は、対話や研修だけでは持続的に解消されません。
分岐点は、関係性の背後にある構造条件を設計論として扱えるかどうかです。

FRICTION-RESET™ Framework は、摩擦を設計課題へ翻訳するための思考枠組みです。

分かり合うことを終点にしない。
再び同じ摩擦が生まれない設計へ接続する。

それが初動介入の本質です。


Q&A

Q1 どの段階で初動介入を行うべきですか?

通報や紛争に発展する前段階が最適です。沈黙と防衛的行動が増え始めた時点が目安になります。

Q2 管理職だけの問題ですか?

いいえ。多くは役割設計・評価設計・意思決定構造の問題であり、統治設計全体の課題です。

Q3 研修は不要ですか?

不要ではありません。ただし、構造是正と接続しない限り、持続性は限定的です。


関連サービス

摩擦は偶発ではありません。
設計に接続したとき、初めて解けます。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントと不正を構造から正し、判断の質を企業価値へと転換する―ケンズプロは、組織ガバナンスを実装する戦略パートナーです。