ハラスメントの構造的対策―「構造でハラスメントを防ぐ」とは何か

ハラスメント対策というと、「してはいけない行為を明確にし、違反したら処分する」というアプローチが一般的です。

しかし、現場で実際に起きている多くの問題は、明確なルール違反ではない領域で発生しています。

  • 悪意はなかった
  • 指導や善意のつもりだった
  • これまで問題にならなかった
  • 関係性は良好だと思っていた

こうした言葉が並ぶ事案ほど、組織は対応に苦慮します。

では、なぜ「問題にならないはずの行為」が、ある日突然、ハラスメントとして表面化するのでしょうか。

ハラスメントは「自由」が多すぎるときに起きる

ハラスメントは、単なる個人の資質や性格の問題ではありません。
多くの場合、次の要素が無秩序に混ざったときに起きます。

  • 権限差・評価権限
  • 立場の非対称性
  • 感情・善意・親しさ
  • 暗黙の期待や空気

つまり、
何が業務で、どこからが私的か
どこまでが裁量で、どこからが越境か
この境界線が、構造として用意されていない状態です。

「構造で防ぐ」という発想

私たちが考える「構造でハラスメントを防ぐ」とは、行為を細かく禁止することではありません。
それは、関係性の前提を、あらかじめ設計することです。

この考え方を説明する際、当社がよく使うのが「学生服」の比喩です。

学生服モデルが示すもの

学生服は、

  • 個性を奪うためのもの
  • 行動を監視するためのもの
    ではありません。

むしろ、こう言い換えることができます。

この場では、一定の前提を共有します。
その前提の内側で、思考・努力・能力・個性を発揮してください。

服装という「線」を先に引くことで、

  • 私的な競争や評価軸を持ち込まない
  • 立場や役割を可視化する
  • 本来集中すべき活動にエネルギーを使える

結果として、自由が守られるのです。

ルール統制型と構造設計型の違い

観点 ルールで縛る 構造で線を引く
発想 違反を防ぐ 越境を起こしにくくする
方法 行為の列挙 関係性の前提設計
現場の反応 萎縮・確認依存 自律・判断の安定
トラブル時 グレー論争 越えた線が明確

構造設計型では、「これはOKか、NGか」という議論が減り、「この関係性で、その振る舞いは適切か」という判断が可能になります。

善意が問題化しないために必要なこと

ハラスメント事案の多くは、「最初から悪意があった」わけではありません。

  • 親切
  • 指導
  • 配慮
  • 期待

こうした善意が、立場差と感情の混在によって、受け手にとっては逃げ場のない圧力になる。

だからこそ必要なのは、「善意を信じて放置する」ことでも、「善意を疑って縛る」ことでもありません。

善意が越境しないための構造です。

一定の線を引くということ

構造で防ぐとは、次のようなメッセージを組織として示すことです。

  • この関係性では、ここまでを業務とする
  • 判断を個人に委ねない領域がある
  • その内側での工夫・裁量・個性は尊重する

線を引くことで、

  • 判断の迷いが減り
  • 現場の安心感が高まり
  • 組織としての説明責任が果たせる

結果として、能力が正当に発揮される環境が整います。

ハラスメント対策は、自由を守る設計である

ハラスメント対策は、人を縛るためのものではありません。

本来は、

  • 安心して働く
  • 安心して学ぶ
  • 安心して挑戦する
    ための基盤です。

構造で線を引くことは、自由を制限することではなく、自由を成立させる条件を整えること

それが、再発防止としても、組織ガバナンスとしても、最も持続性のあるアプローチです。

構造でハラスメントを防ぐとは

行為を管理することではなく、人が安心して能力を発揮できる関係性の枠を、先に設計することである。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。