ハラスメントは、特定の「問題社員」や「意識の低さ」だけで起きるものではありません。
実際には、組織の意思決定構造・評価制度・情報の流れといった、日常の仕組みの中で発生・増幅するケースが少なくありません。
多くの企業で見られるのは、「研修は実施している」「相談窓口もある」「規程も整備している」、それでもなお、ハラスメントが繰り返されるという状況です。
その背景には、制度と運用、理念と現場の間に生じた“構造的な歪み”があります。
個別事案への対応だけでは、この歪みは是正されません。
以下のチェックリストは、「誰が悪いか」ではなく、「どの構造が、ハラスメントを起こしやすくしているか」を点検するためのものです。
当てはまる項目がある場合、それは「危険な会社」という意味ではありません。
改善の起点が、すでに可視化できている状態だと捉えてください。
ハラスメントが発生しやすい組織構造チェックリスト(非丁寧語)
権限・意思決定構造
- 決定権が特定の個人や少数に過度に集中している
- 業務上の指示と個人的要求の境界が曖昧
- 上司の判断に異議を唱える正式ルートが機能していない
- 「あの人のやり方だから」で説明が終わる場面が多い
評価・成果プレッシャー
- 成果が出ていれば、言動の問題が黙認されやすい
- 数値目標の達成が、プロセスより優先されている
- マネジメント能力と専門能力が区別されていない
- プレッシャーのかかる役割に、支援や調整役がいない
人事制度・配置
- 異動や配置転換の理由が本人に説明されない
- 特定の部署・上司の下で離職や不調が繰り返されている
- 管理職登用の基準が不明確、または属人的
- 「育成」「鍛える」という言葉で過剰な負荷が正当化される
相談・通報の実効性
- 相談すると不利益が生じるという認識が社内にある
- 相談窓口が形式的に存在しているだけ
- 相談後のプロセスや判断基準が見えない
- 「大ごとにしたくない」という空気が強い
組織文化・暗黙ルール
- 冗談・ノリ・内輪感覚が優先され、違和感を言いにくい
- 上司やベテランの発言が「悪意がない」で済まされる
- 問題提起をする人が「面倒な人」と見なされやすい
- ハラスメントを指摘すること自体がリスクになる
まとめ
チェックが複数ついたとしても、それは「誰かを処分すべきサイン」ではありません。
それは、組織の設計が、無意識のうちに人を追い込む形になっていないかを見直すための重要なヒントです。
ハラスメント対策とは、研修や規程を「追加すること」ではなく、意思決定・評価・支援の構造を点検し直すことから始まります。
「問題が起きた後」ではなく、「起きやすくなる前」に構造を整えられるか。
そこに、経営と人事の本当の役割があります。
投稿者
- ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。
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