つながらない権利とは、勤務時間外に業務連絡への対応を強いられない権利を指します。
デジタル環境の普及により、時間と場所の境界が曖昧になる中で、労働時間管理・従業員の健康確保・私生活の尊重という観点から世界的に議論が進んでいます。日本では現時点で包括的な法制化はされていませんが、安全配慮義務や適正な労働時間管理の延長線上で、企業には実務対応が求められる局面に入っています。これは単なる働き方の問題ではなく、組織の判断基準と統治設計の問題です。
勤務時間外の連絡や業務対応が常態化している職場では、「つながらない権利」は個人の自己防衛の問題として扱われがちです。
しかし実務の本質は、業務設計・管理職の責務・評価制度・運用構造といった、組織の判断構造が適切に設計されているかにあります。
本チェックリストは、2026年に向けた制度見直しの方向性を踏まえ、企業が「つながらない権利」への対応を、場当たり対応ではなくガバナンスとして実装できているかを点検するためのものです。
チェックリスト(15項目)
Ⅰ.方針・ルール設計
- 勤務時間外の連絡・対応に関する基本方針が文書化されている
- 「原則として勤務時間外の即時対応を求めない」旨が明示されている
- 緊急連絡の定義(人命・重大事故・重大インシデント等)が明確
- 緊急時の連絡経路・責任者が定義されている
- オンコール対応が必要な職種・部門の範囲が整理されている
Ⅱ.運用・仕組み
- チャット・メール等の通知設定について、時間外の配慮ルールが整備されている
- 緊急連絡用の連絡手段が通常業務の連絡手段と分離されている
- 勤務時間外に送信された業務連絡は、翌営業日の対応で差し支えない運用が共有されている
- 業務依頼時に「対応期限」を明示する運用が定着している
- 勤務時間外対応の実態(頻度・内容)が把握・可視化されている
Ⅲ.管理職の責務・マネジメント
- 管理職の役割定義に、部下の労務管理・業務設計の責務が明記されている
- 業務量・納期設定が、時間内完結を前提に設計されている
- 管理職に対し、時間外連絡が部下に与える影響についての教育が行われている
Ⅳ.評価制度・組織文化
- 勤務時間外の即時対応や長時間対応が、評価上の“暗黙の加点”になっていない
- 経営層・上位管理職が、時間外連絡を控える行動を率先して示している
判定の目安
- 12〜15項目にチェック
つながらない権利への対応は、構造として概ね実装されている状態です。 - 7〜11項目にチェック
ルールや意識はあるものの、運用・マネジメントの構造に改善余地があります。 - 6項目以下
個人の自己防衛に依存した状態です。制度・構造レベルでの見直しが必要です。
チェック後に優先すべき3つの着眼点
チェックの結果にかかわらず、次の3点は、つながらない権利を“実装”するうえでの中核論点です。
- 方針が「原則と例外」を明確に分けて設計されているか
- 管理職の責務が、行動レベルで定義されているか
- 評価制度が、時間外対応を前提とする構造になっていないか
これらが曖昧なままでは、どれだけルールを整えても、実務は元に戻ります。
まとめ:チェックリストは入口にすぎない
「つながらない権利」への対応は、チェックリストで点検して終わるものではありません。
本質は、業務設計・マネジメント・評価制度を含めた組織ガバナンスの更新にあります。
2026年に向けた制度見直しの流れを、単なる“対応負担”として受け止めるのではなく、正しい判断が必然となる組織構造を実装する契機として活かせるかどうか。
それが、これからの企業の持続性を左右します。
「つながらない権利」に関するQ&A-よくある質問
Q1. つながらない権利とは何ですか?
つながらない権利とは、勤務時間外に業務連絡への対応を強いられない権利を指します。
デジタル環境の普及により労働時間と私生活の境界が曖昧になる中、従業員の健康確保や適正な労働時間管理の観点から議論が進んでいます。
Q2. 日本では法制化されていますか?
現時点で包括的な独立法としては制定されていません。ただし、労働基準法上の労働時間管理、安全配慮義務、ハラスメント防止義務との関係で、企業には実質的な対応が求められる場面が増えています。
Q3. 企業には法的義務がありますか?
直接的な「つながらない権利」義務規定はありませんが、勤務時間外対応が実質的な労働時間と評価される場合や、過度な連絡が精神的負荷を生む場合には、労務管理・安全配慮義務違反が問われる可能性があります。
Q4. 管理職はどのように対応すべきですか?
管理職には、業務指示の範囲・緊急性の判断・連絡手段の設計について明確な基準を持つことが求められます。問題は「連絡の有無」ではなく、「組織としての判断基準が設計されているか」です。
Q5. 中小企業でも対応は必要ですか?
企業規模に関わらず、デジタル連絡が常態化している場合は対応が必要です。むしろルールが明文化されていない組織ほど、リスクが顕在化しやすい傾向があります。
Q6. どのような対応から始めるべきですか?
まずは、勤務時間外連絡の実態把握と、緊急時対応基準の明文化から着手します。その上で、管理職教育と統治設計に落とし込むことが重要です。
投稿者
- ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。
最新の投稿
- 2026年2月13日知見法改正に備える。「つながらない権利」対応チェックリスト(企業向け)
- 2026年2月12日知見つながらない権利とパワハラ―「個の侵害」という共通構造をどう設計するか
- 2026年2月12日知見つながらない権利、企業は何をすればいい?法改正対応の実務ポイント
- 2026年2月10日知見つながらない権利とは?2026年の法改正で企業に何が求められるのか
