「ケア構造の未整備」で捉える
看護現場のペイシェントハラスメントとは、患者や家族による暴言・威圧・過剰要求・性的言動などを指します。
しかし現場で起きている問題は、単なる迷惑行為やクレーム対応の範囲ではありません。
- なぜ看護師が「我慢すべき」と感じてしまうのか
- なぜ被害を訴えにくいのか
- なぜ管理職が介入の判断に迷うのか
これらは、看護という行為が持つ構造そのものから生じています。
当社は、ペイシェントハラスメントを行為だけではなく「ケア関係の構造」で定義します。
当社の定義
ペイシェントハラスメントとは何か(構造定義)
看護現場のペイシェントハラスメントとは、患者・家族と看護職との間にある「治療・ケアを提供する側/受ける側」という非対称な関係性の中で、
拒否や線引きが成立しなくなった状態です。
多くの事案には、次の構造が重なっています。
- 患者は弱い立場にあるという前提
- 看護職は支援者であるべきという倫理
- 病院は断ってはいけないという誤解
- 個別事情を優先しがちな現場文化
その結果、
「患者さんだから仕方ない」
「看護師なら我慢すべき」
「大事にしたくない」
という空気が生まれ、不当な要求や言動が是正されないまま常態化します。
ペイシェントハラスメントは「善意」と「使命感」から拡大する
看護現場で多いのは、次のようなプロセスです。
- 痛みや不安への配慮として要求を受け入れる
- 特定の看護師だけが対応を続ける
- 要求がエスカレートする
- 断ると感情的反発が強まる
- 現場が疲弊する
この時点でも、
- 患者側に悪意がないことも多く
- 看護師側も「仕事の一部」と捉えがち
です。
しかし構造的には、
- 境界線が曖昧
- 判断を引き取る主体がいない
- 個人対応に依存している
状態が進行しています。
なぜ看護現場では対応が遅れやすいのか
ペイシェントハラスメントが深刻化する理由は、個々の看護師の対応力不足ではありません。
- 「医療機関は我慢すべき」という社会的期待
- 患者満足度への過度な配慮
- クレームとの線引きの不明確さ
- 管理職が介入する基準の曖昧さ
これらにより、
- どこからが不当要求なのか分からない
- 誰が止めるのか決まっていない
- 結果として、現場に負荷が集中する
という構造が生まれます。
ペイシェントハラスメント対策の本質は「判断構造」にある
当社が重視するのは、次の問いに答えられる状態をつくることです。
- 医療・看護として受け入れるべき要求はどこまでか
- ケアと過剰要求の境界線はどこか
- 個人対応から組織対応へ切り替える基準は何か
- 管理職・事務部門が介入するタイミングはいつか
つまり、現場の善意に委ねない判断構造を先に設計することが対策です。
当社が考える看護現場の対策(構造設計)
1. ケアと不当要求の境界線を言語化する
- 医療・看護行為として許容される範囲を整理
- 個別配慮と過剰要求を切り分ける
2. 個人対応から組織対応への切替基準を設ける
- 一定ラインを超えたら管理職・事務部門が引き取る
- 「一人で抱え込まない」構造を作る
3. 判断と責任の所在を明確にする
- 看護師長・管理職・病院としての役割整理
- 現場判断と組織判断を切り分ける
ペイシェントハラスメント対策は、医療の質を守る施策である
ペイシェントハラスメントは、
- 看護師の尊厳と安全を損ない
- 離職・疲弊を招き
- 結果として医療の質を下げます
対策は、患者を排除するためのものではありません。
持続可能な医療を守るための統治設計です。
当社の支援について
当社は、
- 看護現場での相談対応
- 管理職向け判断整理
- 再発防止を目的とした構造設計
- 研修・運用支援
に、実務として関わっています。
現場の感情論ではなく、判断と構造の問題として整理し、医療機関の実情に即した支援を行います。
まとめ
看護現場のペイシェントハラスメントとは、患者対応の問題ではなく、ケア関係の非対称性が是正されない「構造の問題」です。
連載『ナースマネジャー』

株式会社日総研出版様『月刊ナースマネジャー』「ペイハラへの対応方法と予防策」連載(2025年10月号〜2026年3月号)
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