プレイヤー上がり管理職の機能不全は「能力」ではなく「設計」の問題

プレイヤー上がり管理職の機能不全は、個人の資質や意欲の問題ではありません。優秀なプレイヤーを、役割転換の設計なく昇進させている「構造」の問題です。管理職研修は重要ですが、それだけでは現場は変わりません。本質は、役割・権限・評価・意思決定の枠組みという“中身”にあります。優秀な個人を、機能する管理職へ転換するには、研修と構造設計を同時に実装する必要があります。これは人材育成の話ではなく、統治設計の話です。

優秀な個人が、優秀な管理職になるとは限らない

世の中では、「プレイヤー上がり管理職 研修」「管理職育成 方法」「管理職 機能不全 改善」などの検索が多く見られます。
一般的な処方箋は、リーダーシップ研修や1on1研修、フィードバック研修の導入です。

しかし、多くの企業で起きているのは次の現象です。

  • 研修直後は変化が見られる
  • 数か月後には元に戻る
  • 現場は「結局、忙しくて無理」と言い出す

問題はスキル不足ではありません。
「昇進=役割転換」になっていないことが本質です。

機能不全を生む三つの構造的ギャップ

プレイヤー上がり管理職が陥る機能不全には、明確な構造があります。

成功体験の固定化と過干渉

成果を出してきた人ほど、自分のやり方が“正解”になります。

  • 部下の試行錯誤を待てない
  • 手を出した方が早いと感じる
  • 細部まで介入する

結果として、育成と自律性が奪われます。
これは性格の問題ではなく、評価構造が「自分でやった成果」を称揚し続けていることが原因です。

役割転換の未定義

多くの企業では、管理職の仕事が明文化されていません。

  • 管理職なのにプレイヤー業務から抜けられない
  • 判断の仕事が後回しになる
  • 育成が“余力があればやること”になる

ここで歪みが生じます。
役割の定義が曖昧なままでは、行動は変わりません。

権限・責任・評価の接続不全という構造

管理職の現場では、次の問いが曖昧なまま放置されています。

  • どこまでが指導で、どこからがハラスメントか
  • どの判断が現場裁量か
  • どの案件が上申事項か
  • トラブル時の最終責任者は誰か

この構造が曖昧なままでは、管理職は板挟みに陥ります。

厳しくすればリスク。
緩くすれば成果が出ない。

これは個人の迷いではなく、統治設計の問題です。

研修の役割と限界

研修は必要です。しかし、それは補助線にすぎません。

研修で補えること

  • フィードバック技法
  • 傾聴・質問スキル
  • 1on1の型
  • ハラスメントの基本理解

行動の引き出しは増えます。

研修では補えないこと

  • 管理職の責任範囲の定義
  • 判断の委任ライン
  • 評価制度との整合
  • 経営との接続構造

ここが曖昧なままでは、研修で学んだことは現場で使えません。

解消の実装は「研修 × 中身」の同時設計

管理職の役割再定義

  • 成果を出す人 → 成果が出る構造を整える人
  • 指示を出す人 → 判断の枠組みを示す人
  • 問題対応者 → 問題が起きにくい構造の設計者

役割の再定義なくして、行動変容は起きません。

権限と越権ラインの明確化

  • 管理職裁量の範囲
  • 経営・人事へのエスカレーション基準
  • ハラスメント該当可能性の具体例

両極端を防ぐ設計が必要です。

評価軸の転換

評価すべきは、

  • 部下の成長
  • 未然防止の成果
  • チームの心理的安全性

“やった人”ではなく、“整えた人”が評価される構造へ。

研修を「意識転換装置」として設計する

研修はスキル付与の場ではなく、役割転換の自覚を促す場にします。

  • プレイヤー思考 → 管理職思考
  • 個人の成果 → 組織の再現性
  • 自分の正解 → 組織の判断軸

ここで初めて、研修と構造が接続します。

実務で頻出する現場パターン

多くの企業では、次のような報告が繰り返されます。

  • 「部長が全部やってしまう」
  • 「怖くて何も言えない」
  • 「結局、現場判断が属人化している」
  • 「ハラスメントが起きるまで問題が顕在化しない」

再発防止策の議論で最も多いのは、「研修を増やす」という結論です。
しかし、報告書を精査すると、役割と評価の設計不全が必ず存在します。

これは偶然ではありません。構造です。

何から始めるか:三つのステップ

  • 現行の管理職定義と評価項目を棚卸しする
  • 権限・責任・エスカレーションラインを図式化する
  • 役割転換型の研修に再設計する

判断者は経営です。
管理職の設計は、人事部単独では完結しません。

他領域との横接続

このテーマは、次の領域と直結します。

  • ハラスメント予防設計
  • 内部通報制度の実効性
  • 再発防止策の構造化
  • 人的資本開示における管理職評価

管理職の機能不全は、ガバナンス全体の機能不全に連鎖します。

まとめ

プレイヤー上がり管理職の機能不全は、能力の問題ではありません。
「役割転換が設計されないまま昇進させる構造」に起因します。

研修は必要です。
しかし十分ではありません。

変えるべきは、管理職の“仕事の中身”です。

優秀な個人を、機能する管理職へ。
その転換は、研修と構造設計を同時に実装して初めて実現します。


Q&A

Q1. 管理職研修だけでは不十分なのですか?
はい。不十分です。研修はスキル補助線に過ぎず、役割・権限・評価構造が曖昧なままでは定着しません。

Q2. 小規模企業でも必要ですか?
必要です。むしろ役割未定義が起きやすく、属人化リスクが高まります。

Q3. ハラスメント対策と関係しますか?
密接に関係します。指導と介入の線引きが曖昧な構造は、ハラスメントリスクを高めます。

Q4. どのタイミングで見直すべきですか?
昇進制度改訂時、再発防止策策定時、人的資本開示の整備時が好機です。


管理職研修だけでは、現場は変わらない。
変えるべきは、管理職の「仕事の中身」である。


管理職役割・役職定義・再設計支援

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントと不正を構造から正し、判断の質を企業価値へと転換する―ケンズプロは、組織ガバナンスを実装する戦略パートナーです。