なぜ、我が組織ではセクハラが起きやすいのか-組織構造から読み解くリスクの正体

セクハラは、個人の倫理観や性格の問題として語られがちです。
しかし、同じ人物が、ある組織では問題を起こさず、別の組織では繰り返し問題を起こす――
この事実は、セクハラが「個人」よりも「構造」によって誘発される現象であることを示しています。

本稿では、フェミニズム的な価値判断や道徳論から距離を取り、セクハラが発生しやすい組織に共通する構造的特徴を整理します。

1. 「権限」と「評価」が同一線上に置かれている組織

セクハラが起きやすい組織の第一の特徴は、業務上の権限と、人事評価・キャリア形成への影響力が過度に集中していることです。

  • 昇進・配置・契約更新を一人の上位者が事実上左右する
  • 評価基準が曖昧で、裁量がブラックボックス化している
  • 「あの人に嫌われたら終わり」という空気が共有されている

この構造下では、被害者側は「断ること」「違和感を示すこと」自体がリスクになります。

セクハラは、拒否ができない環境で最も起こりやすいのです。

2. 「業務」と「私的領域」の境界が曖昧な組織

次に挙げられるのが、仕事と私生活、公式と非公式の境界が曖昧な組織文化です。

  • 飲み会・出張・深夜対応が「仕事の延長」とされる
  • 私的な話題や身体的な話が「場の潤滑油」として容認される
  • 「冗談」「悪気はない」という免罪符が機能している

境界が曖昧な組織では、どこからが業務で、どこからが越境なのかが不明瞭になります。

結果として、加害行為は本人の中では「距離感を間違えただけ」組織の中では「よくあること」として処理され、是正されません。

3. 成果至上主義が、行動の検証を免除している組織

「数字を上げているから」「優秀だから」という理由で、問題行動が見過ごされている組織も高リスクです。

  • 業績が良ければ、行動は問われない
  • 問題を指摘する側が「足を引っ張る存在」になる
  • ハラスメント対応が“現場の空気”に左右される

この構造では、成果が免罪符となり、行動規範が形骸化します。

セクハラは、「注意すれば是正される軽微な問題」ではなく、放置されることで組織文化に組み込まれていく問題です。

4. 相談・申告制度が「形式的」に存在している組織

制度はあるが、使われない。
これも典型的な特徴です。

  • 相談すると不利益が生じると皆が知っている
  • 誰が、どう判断するのかが見えない
  • 「大ごとにしたくない」という空気が強い

この場合、制度の存在自体が「対策はしている」という自己満足に変わります。

セクハラが発生しやすいのは、制度がない組織よりも、制度が「信用されていない」組織です。

5. 「問題が起きないこと」を良しとする組織

最後に、最も本質的な特徴があります。
それは、問題が起きない=健全であると無意識に信じている組織です。

  • 声が上がらないことを「平穏」と捉える
  • 違和感よりも調和を優先する
  • 指摘する人が「扱いづらい人」になる

しかし、セクハラは声が上がらない環境でこそ、長期化・深刻化します。

問題が起きない組織ではなく、問題が顕在化できる組織かどうか。
それこそが、ガバナンスの成熟度です。

組織に問われているのは「個人を罰する力」ではない

セクハラ対策とは、誰かを断罪することでも、理想的な価値観を掲げることでもありません。

問われているのは、誤った行動が生じにくく、修正可能な構造を持っているかです。

当社では、セクハラを「感情の問題」でも「個人の資質」でもなく、組織設計とガバナンスの問題として捉え、調査・個別指導・経営助言という形で関与しています。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。