「指導」と「処罰」を混同する企業は、再発を止められない―行為者対応における、経営判断の質

ハラスメントが発生したとき、多くの企業は「行為者にどう対応するか」という判断を迫られます。

厳しく処分するべきか。
それとも、指導に留めるべきか。

このとき、多くの組織で起きているのが、「指導」と「処罰」を同じものとして扱ってしまうことです。

そしてこの混同こそが、再発防止を困難にし、組織を消耗させる原因となっています。

行為者対応は「感情処理」ではない

ハラスメント事案が発生すると、組織の内部には強い感情が生じます。

  • 被害者を守らなければならない
  • 世間から批判されてはならない
  • 甘い対応だと思われたくない

こうした空気の中で、行為者対応が感情的なバランス調整として行われがちになります。

しかし、行為者対応は「誰を納得させるか」の問題ではありません。

それは、組織として、再発を防ぐ判断を下せているかという、純粋な経営判断の問題です。

処罰は「線を引く」行為であり、是正ではない

処分や懲戒は、組織として「許容しない行為の線」を示す行為です。

  • 規律を示す
  • 社内外にメッセージを出す
  • 組織の価値観を明確にする

これらは重要です。

しかし、処罰は行為がなぜ起きたのかを修正するものではありません。

処罰を受けた行為者は、

  • 何が問題だったのか
  • どの判断が誤っていたのか
  • 次にどう行動すべきなのか

を、必ずしも理解していません。

処罰は、再発防止の「前提条件」にはなっても、それ自体が解決策ではないのです。

指導とは「行動を変えさせる技術」である

一方、指導とは何でしょうか。

それは、人格を否定することでも、反省を促すことでもありません。

指導とは、

  • 行為に至った判断の前提を言語化し
  • 認識のずれを明確にし
  • 次に同じ状況で、どう判断するかを設計する

という、行動修正のプロセスです。

本来、処罰と指導は目的が異なります。

  • 処罰:組織の線を引く
  • 指導:行動を変える

この違いを理解しないまま、「厳しく注意した」「反省させた」ことで指導をしたつもりになると、再発は止まりません。

なぜ「厳しく言ったのに」再発するのか

多くの企業が、こう語ります。

「かなり厳しく注意した」
「本人も反省していた」
「二度としないと言っていた」

それでも再発する理由は明確です。

行為者の中で、

  • 判断基準が更新されていない
  • 境界線が具体化されていない
  • 行為を止めるトリガーが設定されていない

からです。

反省は感情です。
再発防止は、設計です。

行為者を「切るか、守るか」という誤った二択

行為者対応をめぐり、組織はしばしば誤った二択に陥ります。

  • 厳しく処分して切るか
  • 将来性を考えて守るか

しかし、本質的な問いはそこではありません。

問うべきなのは、

  • この行為は、是正可能か
  • 是正すると判断したなら、どの手段が最適か
  • 組織として、そのプロセスを管理できているか

です。

これは、人情論でも情緒論でもなく、経営の意思決定の質の問題です。

指導を「内製」で済ませようとするリスク

多くの企業が、行為者指導を上司や人事部で内製しようとします。

しかし、ここには構造的な限界があります。

  • 感情が入りやすい
  • 評価・人事と切り離せない
  • 専門的な介入技術を持たない

結果として、

  • 叱責で終わる
  • 抽象的な注意になる
  • 行為者が防御的になる

という状態に陥りがちです。

これは、「指導をしたつもり」になっているだけで、行動修正には至っていません。

組織が持つべきは「是正のための装置」

再発を止められる組織は、行為者対応を属人的に扱いません。

  • 誰が指導するかではなく
  • どのプロセスで是正するか

を設計しています。

そのためには、

  • 利害関係から切り離された第三者
  • 行為者の認知構造を扱える専門性
  • 再発防止までを含めたフォロー設計

が不可欠です。

行為者対応は、組織の成熟度を映す

行為者をどう扱うかは、その組織が問題にどう向き合うかを如実に示します。

  • 感情で裁くのか
  • 構造として是正するのか

「指導」と「処罰」を混同する限り、再発は止まりません。

当社では、行為者を断罪することでも、形式的に守ることでもなく、再発を止めるための個別指導研修を組織の責任として設計・実施しています。

投稿者

株式会社 ケンズプロ
株式会社 ケンズプロ
ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。