ハラスメントや不正などの事案が発生した後、多くの組織は「再発防止策」を策定します。
研修の実施。
ルールの見直し。
相談窓口の周知。
それでも、同じ種類の問題は、形を変えて繰り返されます。
再発防止策が足りないからではありません。
多くの場合、策定された再発防止策は、十分に“正しい”です。
それにもかかわらず機能しない。
その背景には、いくつかの共通点があります。
共通点① 再発防止策が「過去の説明」で終わっている
多くの再発防止策は、「なぜ起きたか」を丁寧に整理しています。
重要なプロセスです。
しかし、そこで止まってしまう組織は少なくありません。
再発防止とは、過去を説明することではなく、次に迷ったとき、何を基準に判断するかを決めることです。
判断基準が明示されない限り、現場は次も同じように迷います。
結果として、「前回と同じ判断」が、無意識のうちに選ばれます。
共通点② 再発防止策が「制度の話」にすり替わっている
再発防止策という言葉は、しばしば制度の話に置き換えられます。
*研修の頻度
*規程の文言
*報告ルート
これらは重要です。
しかし、制度はあくまで器にすぎません。
問題が起きたとき、人は制度ではなく、「この組織では、どう判断されるか」を見ています。
判断の方向性が共有されていなければ、制度はあっても、使われません。
共通点③ 行為者対応が「処理」として完結している
再発防止策の中で、行為者対応は最も扱いにくいテーマです。
処分をどうするか。
配置をどうするか。
注意で済ませるのか。
多くの組織では、ここを「処理すべき事項」としてできるだけ早く終わらせようとします。
蓋をしてしまう。
しかし実際には、行為者への対応こそが、組織の判断軸を最も強く可視化する場面です。
そこで何が語られ、何が語られなかったのか。
その空気は、必ず組織内外に伝わります。
共通点④ 「再発防止」が現場の言葉になっていない
再発防止策が機能しない組織では、その内容が「資料の中」にしか存在していません。
経営層や人事は理解している。
しかし現場では、どこか他人事のままです。
それは、再発防止策が判断の言葉ではなく、説明の言葉で書かれているからです。
現場が必要としているのは、「こういうとき、どう考えればいいのか」という判断の手がかりです。
共通点⑤ 再発防止策が「組織の姿勢」と結びついていない
最後の共通点は、再発防止策が組織として、何を大切にするのかという姿勢と結びついていないことです。
どこまでを許容しないのか。
何を優先するのか。
迷ったとき、どちらを選ぶのか。
これが語られない限り、再発防止策は単なる対応集になります。
再発防止とは、未来の行動を縛ることではありません。
未来の判断を、支えることです。
おわりに
再発防止策が機能しない組織には、特別な問題があるわけではありません。
多くの場合、判断を言語化する機会を持たなかっただけです。
問題は、誰かの意識や態度ではなく、判断が構造として共有されていないことにあります。
再発防止策を作る前に、一度立ち止まり、次を自問することが有効です。
- 次に同じような場面が来たとき、私たちは、何を基準に判断するのか。
この問いに答えられない限り、どれほど立派な再発防止策も、やがて形骸化していきます。
判断が必要な状況にある方へ
再発防止策の策定や見直しは、単なる制度設計ではなく、判断の設計です。
現在、事案対応や再発防止をめぐって判断に迷いが生じている場合は、一度、全体像を整理することが有効な場合があります。
投稿者
- ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。
