ハラスメントは、被害者と行為者だけの問題ではありません。
それは、目撃者・同僚・管理職の判断を通じて、組織全体の秩序と信頼を静かに侵食していく現象です。
ある行為が是正されるのか、見過ごされ、常態化していくのか。
その分岐点に立つのが、目撃者です。
本稿では、ハラスメントを「感情の問題」ではなく、組織の健全性を左右する判断の問題として捉え、目撃者に求められる作法を整理します。
目撃者が沈黙すると、組織は孤立を生む
ハラスメントの被害者が最も深刻なダメージを受けるのは、行為そのものだけではありません。
- 誰も止めなかった
- 誰も声をかけなかった
- 誰も問題として扱わなかった
という事実が、
「この組織には味方がいない」という認識を生みます。
孤立は、メンタル不調・離職・通報・紛争といった二次的な組織リスクを連鎖的に引き起こす要因です。
目撃者が果たす役割とは、被害者を救うことではなく、孤立が構造化されるのを防ぐことにあります。
「沈黙」は中立ではなく、現状追認である
卑猥な冗談や人格を貶める発言が飛び交う場で、
- 一緒に笑う
- その場に居続ける
- 何も起きていないかのように振る舞う
これらは、中立ではありません。
目撃者が沈黙することで、その行為は「この組織では許容される」ものとして固定化されます。
理想は是正の一言ですが、立場や状況によって難しい場合もあるでしょう。
その場合でも、
- 明確に距離を取る
- 同調しない態度を示す
- 記録として残す
といった行動は可能です。
それだけでも、組織が「どこまでを許容しないか」という暗黙の境界線を守る効果があります。
被害者支援における「一線」を誤らない
目撃者が陥りやすいのが、「何とかしてあげなければ」という過剰介入です。
善意による行動であっても、
- 代わりに戦う
- 無断で周囲に広める
- 正義感で行為者を糾弾する
といった行為は、かえって被害者を追い詰め、二次被害を生む可能性があります。
目撃者に求められるのは、救済者になることではありません。
支援の基本は「判断を奪わない」こと
被害者への関わり方には、守るべき基本線があります。
「敵ではない」と示す
特別な言葉よりも、日常的な関わりの中で「排除されていない」という安心感を示す。
一人で抱え込まない構造をつくる
信頼できる第三者や、組織の正式な相談ルートにつなぐことで、関係性のねじれを防ぐ。
評価や助言を急がない
「あなたにも原因がある」「よくあること」といった言葉は、被害を矮小化し、判断を歪めます。
静かに話を聴き、判断は本人と組織に委ねる。
それが、目撃者としての最も誠実な態度です。
管理職にとって、目撃は「責任の始点」である
管理職がハラスメントを目撃しながら対応しない場合、それは個人の怠慢ではなく、ガバナンスの欠如として評価されます。
- その場で止める
- 行為の問題点を論理的に示す
- 組織として是正プロセスに乗せる
この初動の有無が、再発の有無を大きく左右します。
放置や先送りは、秩序の劣化を認める判断に等しいのです。
傍観者から、判断の担い手へ
ハラスメントを防ぐ力は、声の大きな正義感ではなく、日常の中で「見過ごさない」という判断を積み重ねることにあります。
目撃者は、被害者でも行為者でもない第三者ではありません。
組織の秩序が保たれるかどうかを左右する、重要な判断主体です。
当社では、ハラスメントを個人の問題として処理するのではなく、目撃・対応・是正の判断が組織として適切に機能しているかという観点から、ガバナンスの設計・助言を行っています。
投稿者
- ハラスメントを排し、個の真価を最大化する。ケンズプロは、日本の技術が世界を席巻する『正道』を論理で描く、組織ガバナンスの専門パートナーです。
