事業承継・M&A・組織再編時の人事労務

M&Aの労働法務
株式譲渡・吸収合併・事業譲渡・吸収分割

M&Aの手法

M&A取引には、(1)株式譲渡(2)吸収合併(3)事業譲渡(4)会社分割等の手法があります。
M&A取引の際には、労務上様々な調整・手続が必要となります。

(1)株式譲渡

B社(譲り受ける会社)が、A社(譲り渡す会社)の株主からA社の発行済み株式の全部又は一部を譲り受けることにより、B社の子会社とする手法です。
A社の株主が変更されるのみであり、A社の雇用制度・労働条件に変動が生じることはありませんが、B社の労働条件と統一させるための調整が行われることが多いです。

(2)吸収合併

B社(買収する会社)が、A社(売り渡す会社)をまるごと吸収し承継する手法です。
A社は合併について、個別に労働者の同意を得る必要はありません。
A社の権利義務を包括的に承継するため、雇用制度や労働条件についてもB社に承継されますが、A社とB社の雇用制度・労働条件を統一させるための調整が行われることが多いです。

(3)事業譲渡

B社(買収する会社)が、A社(譲り渡す会社)の事業に関連するに資産や負債の全部又は一部を個別に譲り受ける手法です。
合併と異なり、労働契約の承継には原則として労働者の個別の同意が必要とされます。

(4)吸収分割

B社(買収する会社)が、A社(譲り渡す会社)の事業に関し有する財産・権利義務のうち吸収分割契約で定めた部分を包括的に一括移転する手法です。
吸収分割を行う場合には、会社法、労働契約承継法等に基づく手続が必要となります。

  • 吸収分割契約の締結
  • 法定事項の本店における事前備置
  • 株主総会の特別決議による承認
  • 反対株主の株式買取請求手続
  • 会社債権者の異議手続
  • 法定事項の本店における事後備置
  • 労働者の理解と協力を得るための協議
  • 労働契約の承継に関する労働者との協議
  • 労働者への事前通知
  • 労働組合への事前通知
  • 労働契約の承継についての労働者からの異議申出

人事労務に関する法務デューディリジェンス(人事DD)

デューディリジェンスとは、投資やM&Aなどの取引に際して行われる、企業の価値、将来の収益性、リスク等の調査活動のことです。
人事労務に関しては、雇用条件や福利厚生、就業規則等の社内規程、労災加入状況等、個別案件の特性に応じて詳細調査が行われます。
▼例)

  • 雇用契約の手続及び内容の適法性
  • 就業規則等の制定・変更手続及び内容の適法性
  • 労働組合の状況
  • 労働協約・労使協定の制定・変更手続及び内容の適法性
  • 労働時間・賃金等の確認
  • 未払賃金の有無・規模
  • 職務発明報奨金の有無・規模
  • 退職金制度の内容及び未払退職金の有無・規模
  • 年金・健保・福利厚生の内容
  • 過去の解雇・リストラ等の適法性
  • 過去の懲戒処分の適法性
  • 労災保険の加入状況及び支払状況
  • 労使紛争の有無・内容・見込み
  • その他

法務DDの結果、買い手にとって不都合な点や法的問題点が発見された場合、その内容により、M&A取引を取り止めるか、取引内容の変更を打診したり、事後に生じる損害について特別補償条項を契約時に規定しておく場合があります。

売主は、違法・不適切事項ばかりでは取引が成立しませんので、予め是正し買主にとって魅力ある内情に整えておく準備が必要です。
買主は、M&Aの目的に従い必要な情報をリストアップし、十分な情報収集を実現できるよう計画的にDDを進めなければなりません。