人的資本経営とは
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です(経済産業省による定義)。
「人材」が企業の競争力の源泉となる中、経済産業省は、2020年1月から「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」を開催し、9月に「人材版伊藤レポート」と題した報告書を公表しました。
その後も、人材に関する注目度はますます高まり、企業における実際の経営でも、非財務情報の中核に位置する「人的資本」に関する下リストのような課題が認識されはじめ、重みを増してきています。
- AIやロボットと協調しイノベーションを起こすための人材スキル・能力の定義、育成
- 専門性と多様な視点を持ち新たな発想を生み出せる人材の必要性に応じた、動的な人材ポートフォリオの構築
- コロナパンデミックによるリモートワーク等新しい働き方、コミュニケーション手法に対応した、企業のビジョンや戦略の共有、日々の生産性の向上
人的資本経営をめぐる動き
海外では、以前から、人的資本情報の開示に向けた機運が高まっていますが、日本国内でも、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて、人的資本に関する記載が盛り込まれました。
しかし、実際には企業側の対応は追いついておらず、人的資本に関する日本企業の取組は道半ばであり、コーポレートガバナンス・コードへの対応を形式的なものとしないためにも、一歩踏み込んだ、具体的な行動が求められています。
基本編
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です(経済産業省による定義)。
人材を「資源=コスト」と捉えると、人材にかけるお金をできる限り抑えて、効率的に動かすことに重きが置かれます。
「資本」、すなわち企業価値を高め利益を生み出す源泉と捉えると、人材への投資を増やすこと、人材そのものの価値を高めることに注力するようになります。
人材は、消費するものではなく、投資するものです。
人的資本経営の全体像
企業の競争優位性を見据えた人材戦略を構築し、実践し、その過程と成果を可視化・開示する
そして、実践と開示を繰り返し継続しながら、企業価値を高めていきます。
企業の変革の方向性
「人材版伊藤レポート」では、Covid-19、産業構造の急激な変化、少子高齢化、人生100年時代の到来、個人のキャリア観の変化等、企業や個人を取り巻く環境の大きな変化を踏まえ、今後のアクションの羅針盤となる変革の方向性が示されています。
企業が直面している課題は、人材面での課題と表裏一体であり、スピーディーな対応が不可欠であるため、各社がそれぞれ企業理念や存在意義(パーパス)まで立ち戻り、持続的な企業価値の向上に向け、人材戦略を変革させること、またこれまでの成功体験に囚われることなく、企業も個人も、変化に柔軟に対応し、想定外のショックへの強靭性(レジリエンス)を高めていく変革力が求められる、としています。
(出典)『人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~』(令和4年5月 経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf<
つまり、
これまでの日本企業は、ヒト・モノ・カネの経営三要素のうち、
ヒトが最重要と認識していながらも、モノとカネを重視し、
ヒトへの投資は優先順位を低く設定していた。
人材は「資源(Resource」ではなく「資本(Capital)」であり、
人材こそが企業の継続的な価値創造の源泉となる。
ゆえに経営戦略と人材戦略は表裏一体のものであり、
人事は、経営陣や取締役会が主導すべき経営上の最重要領域である。
そしてその「人」は、企業の所有物ではなく、自律した「個人」であり、
企業と対等な立場で、選び選ばれ、共に成長し、イノベーションを起こしていく
多様でオープンなコミュニティ的関係性である。