スポーツ界におけるパワハラ
- 優越的な関係を背景とした言動であって、
- 必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
- 当事者及び関係者の活動環境が害されるものであり、
1から3までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
パワハラの行為類型
パワハラは、6つの行為類型に分類されています。
これらは、パワハラのすべてを網羅するものではありませんが、分類することで、考えやすくなります。
身体的な攻撃
暴行や傷害です。身体に直接触れるのはもちろん、たとえ身体への接触がなくても、被害者の身体に影響を及ぼす可能性がある行為は暴力に該当し得ます。
- 物を投げつける
- 蹴る、殴る
- 胸ぐらをつかんで、説教する、等
精神的な攻撃
脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言等により、精神的ダメージを与える行為です。
- 人格を否定する言葉を浴びせる
- 他のメンバーの前で、無能扱いする発言をする
- みんなの前で、些細なミスを大声で叱責する
- 必要以上に長時間にわたり、執拗に叱る、等
人間関係からの切り離し
隔離・仲間外し・無視などの、孤立感を与える嫌がらせです。
- 理由もなく他の選手や指導者との接触を禁じる
- 挨拶をされても無視する
- 特定の選手や指導者にのみ情報を与えない
- 特定の選手のみ練習に参加させない、等
過大な要求
明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制し、練習や、力を発揮することを妨害する行為です。
- 特定の人にだけ準備や後片付けなど大量の雑務を押し付ける
- 競技や目標とは明らかに無関係な練習を大量に課し、必要な練習を妨害する
- 本人のレベルでは到底できないような高度な練習を課す
- 達成不可能なノルマを常に与える、成果を要求し、達成できなかったときに厳しく叱責する、等
過小な要求
合理性なく、能力や経験とかけ離れた、程度の低い練習を命じたり、練習や試合に参加させないなどの嫌がらせです。
- 重要な試合前の選手に、今する必要性のない掃除を命じる
- 本人のレベルとはかけ離れた「簡単すぎる」練習メニューを課す
- 合理的な必要性なく、プロスポーツ選手に、ジュニアとの練習を命じる、等
個の侵害
私的なことに過度に立ち入り、監視、干渉、質問を継続する行為です。
- 体作りに必要な食事面だけでなく、恋愛関係や交友関係、趣味の時間など私生活にまで過度に干渉する
- 個人所有のスマホを勝手に覗き見る
- 本人の生い立ちや宗教、政治思想等について根掘り葉掘り質問する、等
スポーツ界ならではの難しさ
一般企業よりも指導的厳しさの許容範囲が広く、指導とパワハラの境界線が著しく曖昧なのが、スポーツ界の特徴です。
しかし、スポーツであることがパワハラの免罪符になるわけではありません。
一般的には、指導かパワハラかを判断する基準は、以下の5点です。
- 圧力性の有無
- 関連性・必要性の有無
- 個人的感情の有無
- 違法性の有無
- 健康上の被害の有無
この基準は、スポーツ・パワハラについても、当てはめることができます。
- 威圧感や恐怖心で支配していないか
- 指導で得る効果と手段に関連性はあるか
- その手段や大きさによる指導が必要であるか
- 好き嫌いや機嫌の良し悪しで差を付けていないか
- 暴力や脅迫、名誉毀損に該当しないか
- 健康上の被害を生じさせてはいないか
以上に照らし合わせると、体罰や、人格を否定する発言などが許容される余地は、スポーツの世界においても一般社会と同様に、全くありません。
スポーツ・パワハラ被害者への影響
パワハラ被害者は、人権、人格、自尊心を侵害され強い精神的苦痛を感じることにより、以下のような様々な悪影響を受けます。
- 実力を発揮できなくなる
- 練習に集中できなくなったりする
- 競技に対する恐怖心や嫌悪感が生まれ、競技を続けられなくなる
- 病気になる
- 負傷しやすくなる
- 精神的苦痛が極限に達すると、自死を選択することがある
つまり、スポーツが好きでも楽しめなくなるし、実力があっても発揮できなくなるのです。
誰もが、安心安全にスポーツを楽しみ、力を発揮し、好きでい続けられるような世界を目指したいものです。
そのために、スポーツの世界においても、パワーハラスメントは根絶されなければなりません。
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