某芸能事務所の代表者(故人)による性加害行為が告発され、世界中に衝撃を与えています。
男性による男性に対する加害行為であることが、一層高い注目を集める要因となっています。
どの性別によろうと、どの性別に対するものであろうと、性犯罪は性犯罪であることに変わりはないのですが。
ここからは、本件からは離れ、一般論として、男性に対するセクハラの実態を取り上げます。
被害を受けている男性の割合
セクシュアルハラスメントやジェンダーハラスメントの被害に遭うのは女性だけではありません。
下グラフは、男性または女性がセクハラを受けた経験の有無の割合です。
女性の方が若干高割合ですが、男性に対するセクハラ被害も大差はなく、「意外と多い」と言えます。
就活セクハラは、男性の方が高い割合で被害を受けています。
男性に対するセクハラ・ジェンハラの内容
受けたセクハラの内容は、男女ともに「性的な冗談やからかい」が最も高割合で、次いで女性は「身体的接触」であるのに対し、男性は「性的な事実関係に関する質問」「性的な言動に対して拒否・抵抗したことによる不利益な取扱い」が高くなっています。
性的なことでからかわれたり質問されたり、そのような話題を拒否することで嫌がらせを受けたりすることが多いようです。
「男なら卑猥な冗談も好きだろう」「男なら性にオープンだろう」という固定観念が反映していると考えられます。
男性に対するセクシュアルハラスメントの事例
当社に寄せられた被害情報(公表許諾を得たもの)の一部をご紹介します。
冗談・悪ふざけ
- 挨拶としてお尻を触られる
- 恋愛経験や現在の交際について質問される
- 恋愛経験や現在の交際について言い触らされる
- 裸踊りをさせられる
- 行きたくないのにキャバクラや風俗店に連れて行かれる
- 飲み屋で女性客をナンパしてこいと強要される
- 猥談に付き合わされる(「男同士の与太話」という名目で)
- 王様ゲームに参加させられる
性的・恋愛的意図
- 恋愛経験や現在の交際について質問される
- 身体を触られる・手を握ったり腕を組んだりされる
- 身体を触らされる
- 露出の多い服で視界に入られる
- 酒席やタクシーの中でキスを迫られる
- 性的魅力について他の男性と比較される
- 回し飲みさせられたり、「味見させて」とコップを使われたりする
- (セクハラを拒絶したら)女性に失礼じゃない?と非難される
女性上司から好意を持たれていたようなんです。
きっかけは、今思えば、僕が上司のアクセサリーを「お似合いですね」と褒めたことだったような気がします。
当時は緊張していて何を話せば良いかわからず、勘違いさせるようなことを口走ってしまった僕が悪かったのですが・・・。
それから、書類を渡すときに手を触られたり、視線を感じたり、業務連絡でも顔を近づけてきたりするようになりました。
気にしないように振る舞っていたら、だんだんエスカレートしてきて、ハートマーク付きのLINEがプライベート時間に頻繁に送られるようになり、職場での飲み会の席で「酔っ払っちゃったー」と身体的なセクハラをしてくるようになりました。
ある日、(たぶん酔っていないのに)酔っ払った感じで「送って」と言われて、「方向が違うので」と断ったのですが、周りからも「冷たいなー」「男だろう」と押される感じで、結局タクシーに乗せられ、二人きりになると太ももを触ってきて、最終的にはキスまでしてきました。
なので僕は途中で降りて、別のタクシーで帰ったのですが・・・
今思い出しても気分が悪くなります。
結局、上司に話して、フロアの違う部署に異動させてもらいました。
とはいえ同じ社内で働いているので、今でも女性上司を避けるように動かなければならないのは大変です。
男性に対するジェンダーハラスメントの事例
発言
- 男のくせに
- 男らしく
- 男なんだから
- 男なら残業しろ
- イケメン
- 男ばかりでむさ苦しい
- (お茶を出したら)男が入れた茶なんてまずい、飲みたくない
甘い物が好きでチョコレートやクッキーなどを職場でつまんでいることや、お弁当を手作りしていることで、よく「男のくせに」とか「女子力高いね」とからかわれていました。
あるとき、同僚や上司とのカフェでの打ち合わせの席で苺パフェを頼んだら、「女かっ」とからかわれました。
からかわれるところまでは想定内だったのですが、それからことあるごとにピンク色の文房具や苺柄のマスクなどを同僚や上司からプレゼントされたり、「苺ちゃん」と呼ばれたりするようになりました。
些細なことも、毎日のように続くと気が滅入ってきて、転職しようと考えています。
行為・指導・評価
- 男性の方がノルマが厳しい
- 同じことをしても女性は許されるが男性は許されない
- 未婚男性は評価が低く転勤させられる(女性は異なる)
- 男性は休憩室を使えない
- 女性社員が集まっている休憩室で昼食をとろうとすると非難されたり睨まれたりする
- ノルマを達成できなかった罰として坊主にさせられる
うちの職場は、男性に厳しく、女性に優しく、という風潮があります。
レディーファーストが根付いているんです。
いただきもののお菓子は女性が優先的にもらい、男性は余り物が当たるか、数が少なければ当たりません。
食事をしたりテレビを観たりする休憩室は、女性がいるときは男性は使えません。
シフトを組むときも、女性に先に希望を聞きます、男性は女性の都合に合わせてシフトを調整します。
でも、文句を言えば「小さい男」とか「これだから日本の男は」と言われてしまうので、何も申せません。
僕もお菓子が食べたいです。
男性が被害の声を上げづらい背景
固定観念
セクハラは男性が女性に対してするもの、という固定観念により、少数派である男性被害者が声を上げても理解してもらえないため、多くが泣き寝入りに終わっています。
「男なら拒絶できるじゃん」
男性は女性よりも力が強いことを理由に、例えば身体的セクハラを受けたのであれば「嫌なら突き放せばいい」「嫌がらないのは好意があるということ」と決めつけられがちで、声を上げづらい空気があります。
筋力があるからこそ
しかし、筋力があるからこそ、力の弱い女性に対して強く拒絶したり、触ってきた手を払ったりすることで、加害者が被害者に翻る(男性が被害者のはずが加害者にされてしまう)ケースが多いため、男性が自衛のために受け流すしかないという事情が背景にあります。
男性に対するセクハラへの、社会の理解が必要
固定観念の排除
男性は性にオープンで性的話題を好み、常に女性を性的に見ていて、女性からの性的アプローチを歓迎する、という固定観念を排除し、性に対する価値観に性差はないことの共有が求められます。
男性もリスクに晒されている
男性も女性と同じく性被害のリスクに晒されているという認識を、組織のメンバー全員に浸透させことが大切です。
多様性の尊重と教育を
男性、女性だけでなく、性的マイノリティへの理解も必要であり、「男性」「女性」と性別で括ること自体が不適切です。
「性別」という概念をリセットし、全員が性的マイノリティという前提に立ち、全ての多様な人たちにとって、息苦しさや侵害のない生きやすい社会、働きやすい職場を作ることが重要です。
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