2022年にサッカーワールドカップが開催されるカタールでは、スタジアムやインフラの建設など開幕に向けた準備が急ピッチで進められていて、インドやネパールなどから多数の外国人労働者が出稼ぎに来ています。
カタールの人口のおよそ9割は、外国人労働者とその家族で、カタールの社会を支えています。
実は、その陰で外国人労働者が多数死亡していることが、問題視されています。
カタールが2010年12月にFIFA主催サッカーワールドカップの開催国に選出されて以降、南アジア5カ国から出稼ぎに来ていた外国人労働者のうち少なくとも6500人が死亡しているというのです。
これは氷山の一角で、実際の数はこれを大きく上回ると考えられます。
公的な記録で最も多い死因が、心臓まひや急性呼吸不全、自然死などの曖昧なもので、若い働き盛りの労働者にしては「不自然な自然死」。
カタールでは、かねてより、外国人労働者の重労働や無休の長時間労働、賃金未払い、暴力、性的暴行等が横行していると、過酷な労働環境が指摘されていました。
カタールは真夏になると40〜50℃の猛暑となるため、カタールの人々は冷房の効いた屋内で過ごし、屋外での作業は外国人頼みというのが実情だそうです。
ネパール労働省の記録によりますと、2021年7月までの10年間にカタールで死亡したネパール人は1,570人で、そのうち約半数にのぼる774人が、心停止、自然死、心臓麻痺のいずれかに分類されていて、適切な調査が行われていません(NHK調べ)。
亡くなるまでの経緯が全く示されていないことに、遺族は不信感を抱いています。
確かに心臓麻痺なのかもしれません、しかし若者の心臓麻痺が外国人労働者に限り数千人規模で起きているのであれば、心臓麻痺にも原因があるはずです。
カタールで働く外国人労働者の劣悪な労働環境が指摘される中、カタール政府は最低賃金を導入するなど労働環境の改善に努めていると説明していますが、NHKの取材には応じていません。
カタール政府が調査や海外メディアの取材を拒否する背景には、中東で初めてのワールドカップを成功させ世界に自らの国力を示すため、その過程で生じた負の側面を隠したい思惑があると見られます。
他の中東の湾岸諸国も外国人労働者に依存していて、カタールだけでなく、サウジアラビアでも多くのネパール人が亡くなっていて、2281人中半数の死因は、心停止、自然死、心臓麻痺が占め、カタールと酷似していました。
外国人労働者をどのように守っていくかは、少子高齢化に直面する中、労働力を外国人労働者に依存している日本にとっても考えるべき課題です。
出典
NHK BSプレミアム『国際報道2022』3月1日放送
https://www.nhk.jp/p/kokusaihoudou/ts/8M689W8RVX/episode/te/LGR82GK1VM/
Forbes「サッカーW杯が開催されるカタールで、外国人労働者が多数死亡」
https://forbesjapan.com/articles/detail/40086
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