ハラスメントは、被害者だけでなく加害者の人生をも破壊し、目撃者や同じ職場の仲間たちにも甚大なストレスをもたらし、会社全体を蝕む猛毒です。
個人間の問題ではなく、企業の問題、組織の問題、みんなの問題です。
もしも仕事の場でハラスメントに遭遇したら、仲間が被害を受けていることを知ったら、見て見ぬふりをせず、できる範囲内で誠実に対応することが大切です。
被害者の苦しみを知る
厚生労働省が公表した『令和2年度「職場のハラスメントに関する実態調査」』(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000165756.html)によると、被害者は、怒りや不満、不安などを感じ、職場でのコミュニケーションが減ったり、心身に不調が生じたりしています。
被害者の多くは、誰にも相談できず一人で苦しんでいます。
たった一人の加害者から嫌がらせを受けているだけでも、世界中から嫌われている、味方は誰もいない、という孤独感に苛まれるものです。
「孤独は死に至る病」といわれるように、孤独は自殺リスクを高めます。
見て見ぬ振りをしない
多忙だと、仲間の異変に気づく余裕を失います。
そして気づかぬうちに、仲間は追い詰められ、極端な選択をすることも、少なからずあります。
心を失っている人が、隣りにいるかもしれません。
多忙だからこそ、深呼吸をして、周囲に目を配り、コミュニケーションをとり、互いに気づき合える関係性を築きたいものです。
見て見ぬ振りをしない。
同じ職場で働く仲間を被害者にも加害者にもしない。
みんなで協力し合ってハラスメントを職場から一掃する、努力を続けることが大切です。
行為者への対応
可能なら、「それはハラスメントになるよ」と行為者に教えてあげましょう。
万が一加害者となれば、自身も多くを失うことになります。
そうなる前に、人生崩壊の悲劇から救ってあげるのです。
教えるのが難しければ、人事部や相談窓口等に知らせましょう。
一人で全てに対応しようとする必要はありません。
被害者への対応
被害者は、ハラスメントやいじめを受けているという事実を自分でも認めたくないため、同情されると余計に傷つくことがあります。
だからといって放置すれば、孤独感が被害者を追い詰めます。
被害者には、あからさまに同情を示すより、避けない、他の人に対するのと同じように話しかける、挨拶をする、困っているときに手伝うなど、適度な距離を保ちながらも、「私は敵ではない」「あなたは一人ではない」ことを示すと、安心感を与えられるでしょう。
加害者も、相手に味方が多いことを悟ると、いじめづらくなります。
加害者に故意や悪意がなくても、自然と効果として現れるものです。
看過できない被害のときは、「大丈夫?」「相談に乗るよ」「一緒に相談窓口に行く?」と一歩踏み込んで声をかけます。
傍観者にならず、「大丈夫、いつでも相談してね」という関係性を築いておくことが大切です。
本当に必要なときに、助けを求めやすくなります。
沈黙は加担に等しい
ハラスメントを目撃したり、卑猥な冗談や陰⼝を聞いたりして、同調したり、⼀緒に笑ったりした場合だけでなく、ただその場にいるだけで、加担しているとみなされます。被害者にとっては加害者の仲間です。
「その言い方では傷つくのでは?」「やめよう」「私の大切な仲間をそのように扱うのは止めて」と、注意しましょう。しかしそれはなかなか難しい…。
注意するのが難しければ、少なくとも、その会話やコミュニティには参加せず、立ち去り、距離を置きます。
仲間内のSNSで陰口やいじめが発生することが多いため、仕事関係者とは個⼈的なメッセージは控えることが望ましいです。
個人を侮辱・叱責するメールの一斉送信を受け取ったときは、そのメールを保存し、人事部等に報告してください。
被害者の知らないところで起きていることであれば、被害者には知らせず、人事部等の対応を待ちます。
踏み込みすぎないことも救済になる
気にかけること、声をかけること、相談にのること、相談窓口や然るべき上司につなぐこと。仲間としてできるのはそこまでで、そこまでは必ずしてあげるべきです。
しかし、それ以上に踏み込みすぎると、返って被害者を追い詰めたり、傷つけたり、不利な状況に追い込んだりと、二次被害を生むことがあります。
例えば、一緒になって加害者に復讐するとか、被害者の自由意思に基づく同意なく周囲の人たちから目撃情報や同情を集めるとか、被害者を抱きしめるとか、心配だからと帰り道をついていくなどは、「やり過ぎ」です。
ケアはする、でもキュアはしない。一線を越えず、権限や責任を有する上司や、専門家に任せましょう。
助言によるセカンドハラスメントに注意
「あの人は昔の人だから」
「男性ってそういうものでしょう」
「あなたの勘違いでしょう」
「よくあること。みんな経験している」
「あなたにも責任があるのでは」
「減るものじゃないじゃない」
「大丈夫、何とかなるよ」
「大げさに考えすぎよ」
などなど、無責任な助言や慰めが、さらに被害者を追い詰めることがあります。
否定・非難・遮断せず、最後まで話をゆっくり聴きます。
すぐに解決しよう、アドバイスしようと焦らず、質問+共感で寄り添います。
「大丈夫?」「体調はどう?」「どう感じたの?怒り?悲しい?悔しい?」→「それが悔しかったんだね」「辛いよね」と共感を示す。
それから、「一緒に人事部に行こうか?」「私が相手に話してみる?」「私にできることはある?」と問いかけ、「いや、大丈夫」と答えた場合は無理強いせず、「本当に大丈夫?無理しないでね」「いつでも話を聞くからね」「私にできることがあったら何でも言ってね」と伝えておきます。
距離感を間違えると「救済者のつもりが加害者になる」こともあるため、「あの人(被害者にとって信頼でき力になってもらえそうな人)にも話しておいた方が良いと思うよ」と促し、その人と一緒にサポートする三角形の構図を作っておくと、トラブルを防ぎやすいです。
管理職は・上司は
管理職または被害者や加害者の上司という立場の場合は、加害者に注意・指導を与える責務を負っています。
放置、隠蔽せず、迅速に以下の対処を講ずることが求められます。
①不適切な言動を指摘し
②なぜ不適切なのかを説明し
③繰り返さないよう諭す
④被害者をケアする
⑤職場に同様のハラスメントが蔓延し他にも加害・被害が発生する状況になっていないか確認し、
⑥必要に応じて予防または再発防止策を講じる
まとめ
傍観者にならないこと、気にかけ、話を聞いて、解決できる人や部署につなぐことが、第三者にできることです。
もしも自分が被害を受けたら、どのような存在がいたら助かるか、どのようなサポートがあればありがたいか、想像してみると、何をすべきかが見えてくるかもしれません。
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