企業が講ずるべきカスタマーハラスメント対策

事業主が雇用管理上の措置(防止措置)のすべての項目を講ずることはもちろん、労使協議や安全衛生委員会等の場を活用するとともに、アンケート調査やヒアリング等を行うことが有効です。

なお、すべてのハラスメントに共通して、そもそもの原因や背景となる要因を解消することが重要であり、コミュニケーションの活性化や円滑化(定期的な面談やミーティング、労働者のスキルアップや管理監督者のマネジメント研修など)、また、適正な業務目標の設定と業務体制の整備(長時間労働の是正、職場環境や組織風土の改善など)を図るよう併せて求める必要があります。

事前準備・予防策

企業トップのメッセージ

企業としてカスタマーハラスメントには毅然とした対応方針を明確に打ち出すことが重要です。
これにより、従業員を保護し、対応の長期間を防ぐとともに、従業員の意識が啓発され、対応方針が真に実効性のあるものになります。
企業トップのメッセージは、職員の後ろ盾となり、顧客と接する際の安心感を高めます。
さらに、行き過ぎたハラスメントに対しては毅然とした態度と法的措置を取る旨の警告文を店内に掲示することも、効果があると考えます。

事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発

悪質クレームは、いったん発生するとその解決に多大な時間と労力を要するため、未然に予防することが重要です。
効果的なのは定期的かつ継続的な研修の実施で、管理職向け研修と一般職員向け研修を実施するのが有効です。
職場におけるハラスメントの内容および職場におけるハラスメントをなくす旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発を行います。

  • 組織のトップが、カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」という。)対策への取組の基本方針・基本姿勢を明確に示す。
  • カスハラから、組織として従業員を守るという基本方針・基本姿勢、従業員の対応の在り方を、定期的に研修・講座等を開催したり、パンフレット等を作成・配布するなどして従業員に周知、啓発し、教育する。

ハラスメントの定義と判断基準の明確化について

現場レベルでクレーム対応の判断ができるようにハラスメントの定義を明確にするのと同時に企業内で対応の考え方を統一します。
その上で、ハラスメント事例からクレームを類型ごとにまとめ、該当クレームごとに対応内容の基準を作成し、適正に対応できるように整理を行う必要があります。

従業員(被害者)のための相談対応体制の整備

相談への対応のための窓口(相談窓口)をあらかじめ定め、労働者に周知します。

  • カスハラを受けた従業員が相談できるよう相談対応者をあらかじめ決めておく、または相談窓口を設置し、体制として整備する。
  • 管理監督者を含むすべての労働者を対象に、定期的に研修・講座等を開催したり、パンフレット等を作成・配布したりするなどの方法により相談窓口の周知を行う。
  • 相談窓口を設置し、ホームページやポスター等により社会的に発信する。
  • 相談対応者が相談の内容や状況に応じ適切に対応できるようにする。

管理職への指導・教育

  • カスハラやクレームに対する的確な初期対応とレベルの向上のために、指導・教育にかかるマニュアルを整備する。
  • クレーム事案の発生、被害拡大、再発などの防止に対しては「ミスは起こり得る」との認識に立ち、クレーム情報を一元的に管理するため、報告(連絡)の徹底を指導する。
  • クレーム情報を集約するため、従業員に対して報告(連絡)の徹底を指導する。

従業員への教育

  • カスハラやクレーム対応は、発生した内容と種々の分類により変化することを認識し、業務に必要な知識(刑事法令、民事法令、特別法令)等の研鑽に努めるとともに、顧客に応じた適切な措置がとれるような判断能力などの向上を図る。
  • 顧客の思い込みや誤った知識などにも自信を持って応えられるよう、商品知識などの習得に努める。
  • クレーム対応マニュアルを作成し、行き過ぎたハラスメントに対して、従業員がどのような対処をすべきかを明文化することにより、泣き寝入りや二次クレームを防ぐことに努める。

クレーム対策の勉強会の実施

日常的に起きているクレームの対応について、社内での情報交換や他企業の対応の研究といった勉強会の実施が対応レベルのスキル向上に大きく貢献します。

関係各所との連携

特に店舗においては、地域行政・警察・保健所など関係各所とのコミュニケーションを日常的に行い、クレーム発生時には相談ができる体制をつくり迅速な対応ができるようにしておく必要があります。

相談への適切な対応

相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにします。
クレーム対応業務には、様々な専門知識と豊富な知見を持ち、さらには対応感度の高い人材を配置することが望まれます。
消費者の厳しい目に継続的に接することによる精神的ストレスは、配置された人材のモチベーションを低下させ、果ては貴重な人材の流出を引き起こすことにもなりかねないため、窓口担当者は複数名配置し、連携を取りながらサポートできる環境にしておくことが重要です。
一人で対応しきれない悪質クレームに遭遇した場合など、精神が疲弊する前に担当者を交代することも時には必要であり、担当者を孤立させないことが企業として最重要です。

  • ハラスメントが実際に発生している場合だけでなく、発生のおそれがある場合やハラスメントに該当するか否か微妙な場合も含めて幅広く相談に応じて、迅速かつ適切に対応する。
  • 相談者の心身の状況や受け止めなど認識にも配慮しながら、また意向に沿いながら丁寧、かつ慎重に相談に応じる。
  • 相談窓口と人事部門が連携できる体制を構築するとともに、具体的な対応方法を記したマニュアルを整備する。
  • 相談担当者を対象に、定期的に研修・講座等を開催する。

カスタマーハラスメントが実際に起きた際の対応

事実関係の正確な確認と事案への対応

事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認します。

  • 相談窓口では、相談者の心身の状況や受け止めなど認識にも配慮しながら、また、意向に沿いながら丁寧かつ慎重に事実確認を行う。
  • カスハラに該当するか否かを判断するため、顧客、従業員等からの情報をもとに、その行為が事実であるかを確かな証拠・証言に基づいて確認する。
  • 確認した事実に基づき、商品に瑕疵がある、またはサービスに加湿がある場合は謝罪し、商品の交換・返品に応じる。瑕疵や過失がない場合は要求等に応じない。

従業員への配慮の措置

職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害を受けた労働者(被害者)に対する配慮のための措置を適正に行います。

  • 不利益取扱いを行わない旨をあらかじめ行動指針等に定める。
  • 被害を受けた従業員に対する配慮の措置を適正に行う。
    • 繰り返される不相当な行為には一人で対応させず、複数名で、あるいは組織的に対応する。
    • メンタルヘルス不調への対応等

再発防止のための取組

改めて職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講じます。

  • 行動指針や就業規則、関連規程等を総点検し必要に応じて見直した上で、取組の見直しや改善を行い、継続的に取組を行う。
  • 管理監督者を含むすべての労働者を対象に、改めて研修・講座等を開催したり、パンフレット等を配布したりするなどの方法によりそれらの再周知・啓発を行う。

上記の措置と併せて講ずべき措置

  • 相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、従業員に周知する。
  • 相談したこと等を理由として不利益な取扱を行ってはならない旨を定め、従業員に周知する。

厚生労働省資料「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議(2021年1月21日)UAゼンセン資料」
https://www.mhlw.go.jp/content/11921000/000732126.pdf

厚生労働省『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf

ケンズプロのサポート

「何か起きてから」の対応では、費用も労力もかかり、従業員の精神は蝕まれ、解決が困難になります。
何も起きていない今のうちに、予防策を講じることが大切です。
そして万が一起きたときには、一刻も早くご相談ください。

カスタマーハラスメント対応マニュアル作成

カスタマーハラスメント対応研修

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